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業界の動向

「プロパティマネジメントの実践」

取材協力:株式会社明和住販流通センター

話し手 : 株式会社明和住販流通センター 代表取締役 塩見紀昭 氏
聞き手/文 : リプロス編集長 松尾充泰

「プロパティマネジメントの実践」とはどのようなことなのかを、日本で始めてIREM(米国)よりCPM(Certified Property Manager =不動産経営管理士)を授与された塩見紀昭氏に伺いました。塩見氏が代表取締役を務める株式会社明和住販流通センターは、昭和62年に設立されて以来「資産運用型の賃貸住宅の管理」を行っており、近年、大手証券会社系の不動産会社からファンドで購入した物件の管理を受託し、プロパティマネジメントを実践する会社です。プロパティマネジメントとは何か、求められる能力、そして、プロパティマネジメントを業務で活かす方法などを、現場の視点で解説していただきます。

 

(株)明和住販流通センター
代表取締役 塩見紀昭氏
昭和62年株式会社明和住販流通センター設立以来、「プロパティマネジメント」の考え方に基づく「資産運用型の賃貸住宅の管理」を実践。
また、米国に何度か訪問し、本場の「プロパティマネジメント」を習得すると同時に、アメリカ最大の賃貸管理業団体IREM(Institute of Real Estate Management:全米不動産管理業教会)が教育・認定するCPM(Certified Property Manager:公認不動産管理士)を日本で初めて取得。分譲マンションオーナーの賃貸経営をサポートする全国組織IRN(Interactive Rental Network)にも加盟し、専門性の高い事業形態を構築する。


プロパティマネジメントとは

 従来の賃貸不動産の管理といえば、入居者募集と家賃集金、そして、クレームの処理が主な業務です。一部の事業系賃貸を除き大半の賃貸不動産管理業務の実態は今も昔も変わらないと思います。しかし、店舗・事務所などの事業用賃貸物件にファンドの資金が流入するようになってから、この賃貸不動産業界に「プロパティマネジメント」という言葉を良く耳にするようになりました。英語で書くと「Property Management 」となります。インターネットで翻訳(スペースアルク)してみると「財産管理」と表現されています。「Property 」には、「資産、所有地、不動産」といった意味があり、「Management」には、「経営、運営」といった意味があります。つまり、不動産物件の経営や運営を管理する業務の事と言えるのです。そして、それを実施する人をプロパティマネージャー(Property Manager)と呼びます。

 

塩見氏曰く『プロパティマネジメントという言葉は、その言葉を使う人の立場によって、少しずつ違う見方になります。例えば、金融から派生した不動産金融プレイヤーはアセットマネジメント的な視点からプロパティマネジメントという言葉を使い、従来から賃貸管理をしている不動産会社では、今までの業務の延長線上でプロパティマネジメントという言葉を使います。これらは、入り口が違っているものの、目指すところは同じ収益の最大化ということで、どちらのプロパティマネジメントも同じ意味合いなのです。そして、不動産を金融的な観点から分析する事が、プロパティマネジメントにとって重要なのです。』

このプロパティマネジメントが事業系だけではなく、今、住居系の賃貸管理業界にも広がりつつあります。そのひとつの原因はJ-REITなどのファンドが居住系にも投資をしていることがあげられますが、一部の管理会社とりわけ中堅の管理会社がプロパティマネジメントを意識した事業展開を見せ始めています。その1社が今回ご紹介している明和住販流通センターです。そして、今後は更に一般の大家さんと呼ばれていた人達までもが賃貸不動産業を事業として強く認識し、投資において金融商品と比較したリターンを求める事になると思います。もちろん、全ての大家さんがそうなるとは言いませんし、非常にゆっくりだとは思いますが、その方向に向かう事は間違いないと言えます。

 

プロパティマネジメントに求められる能力

 プロパティマネジメントを実践するに当たり、賃貸管理業者はいったい何をすべきか。賃貸管理の立場からプロパティマネジメント業務を実践する塩見氏に、どのような能力が必要なのかを伺いました。

 

≪マーケティングの能力≫
『物件の取得にあたっては、デューデリジェンスを行います。デューデリジェンスを簡単に説明すると、該当不動産において適正な市場価値やリスクを明らかにする事を目的として、多角的に行う調査のことです。取得時に限ったわけではなく、物件の再投資においても、投資家(大家さん)が考えている収益を本当に上げる事ができるかを事前に調査する必要があるわけです。ここで、市場調査能力が求められ、集めたデータを分析する必要があります。これを総合するマーケティング能力が重要視されます』

 

≪記録・報告の能力≫
『日常の管理業務である滞納処理、クレーム処理、募集業務、契約業務などは従来通りですが、プロパティマネジメントを行うにあたっては、これらを日常的に記録する仕組みを構築する必要があります。記録をしなければ、そもそも報告ができないからです。』塩見氏の言っていることは当たり前の事のように思えるかもしれませんが、多くの管理会社は、賃料などお金に関係する報告はしますが、クレームなどの報告はしていないのが現実です。実際に報告書の一部を拝見させて頂きましたが、些細なクレームもすべて記録しておられました。 投資家(大家さん)がこれらをすべて読むかどうかは別にしても、あるとないとでは信頼度が全く変わってくると思われます。

 

≪レポーティング・説明の能力≫
『マーケティングや日常業務の報告にしても、これらをレポートにまとめる能力が必要になります。そして、それらを論理的に説明する能力も必要とされます。例えば、リフォームで再投資を行うとします。この結果、いくらの賃料を得る事ができ、投資としての効果か数字を示し、論理的に説明する必要があります。ここに、CPMで学んだ事が活かされています。ちなみに、ファンドに提出しているレポーティングの7割が会計に関係するもので、3割がクレームなどの会計以外の報告です。ファンドでは、物件をひとつの会社と同じように見立てて貸借対照表、損益計算書を使って投資効果を計っています。また、年間の予算書を提出して、予算と実績が一致しない場合は、その説明を求められるのです』

 

プロパティマネジメントの実践は、どこの管理会社でもできる

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 求められる能力を考えると難しく思えるかもしれませんが、塩見氏は普通の管理会社でも、プロパティマネジメントの実践は充分可能であると明言されました。塩見氏自身、根っからの賃貸不動産業者でプロパティマネジメントを実践するとは思いもしなかったそうです。たまたま、時代の波に乗り、プロパティマネジメントを実践するようになっただけだとか。

 

 『自身にとって、プロパティマネジメントを実践する事は管理物件を獲得する事が目的であり、そして、それに必要なCPMの知識や金融計算は単なる物件取得の手段でしかなく、ファンドなどと対等なテーブルに付く為の道具です』ときっぱり言われました。

 

プロパティマネジメントと大家さん

 では、大家さんとプロパティマネジメントの関係を考えた時はどうでしょうか。
『年配の大家さんに小難しい事を言うと、疎まれるかもしれません。しかし、世代交代をして大家さんが若返れば、プロパティマネジメントを実践している事が他社との差別化に繋がります。また、時代は原状回復問題、消費者契約法をはじめ入居者有利に働き、かつ入居者の知識(情報収集力)も高くなっています。そんな問題を踏まえ、所有はするが、経営は管理会社に任せたいという大家さんにとって、プロパティマネジメントを実践している管理会社は、とても頼れる存在なのです』

『地主さんからの土地の売却相談に対しても、従来であれば、デベロッパーなどへの売却という、単純な業務しかしていませんでした。プロパティマネジメントを実践していれば、賃貸物件を建築しファンドに売却を持ち込む事を提案する事も可能となります。また、売却しない場合は自費による賃貸マンション建設の選択肢以外に、信託受益権を設定してファンドの資金で物件を建築する提案もできます。つまり、プロパティマネジメントの実践により、選択肢が増えるのです。そして、購入するお客様、管理をくださるお客様として、ファンドを取り込めるチャンスを得る為にもプロパティマネジメントの実践は重要なのです』実際にプロパティマネジメントを実践し、管理を獲得している塩見氏の言葉には、説得力と重みを感じました。

 

≪参考資料≫
以下はPDFで作成しておりダウンロードする事が可能です。

●市場特性 pdficon.gif[PDF 75KB]
●マーケットレポート pdficon.gif [PDF 127KB]
●想定賃料
 ・・・賃料のUP(上限)とDOWN(下限)を想定している
pdficon.gif [PDF 21KB]
●入居者属性
 ・・・入居者の属性を知る事で、今後の募集時におけるターゲットが明確になる
pdficon.gif [PDF 749KB]
●客付業者一覧
・・・今後、客付けを依頼する業者の選定に役立つ
pdficon.gif [PDF 570KB]
●競合一覧
・・・賃料を坪単価で算出し比較しやすくしている
pdficon.gif [PDF 440KB]
●入居者の通勤・勤務先
・・・ターゲットとなる市場のエリアが見てくる
pdficon.gif [PDF 733KB]

 

明和住販流通センターの取り組み

関連会社で投資用のワンルームマンションを開発している明和住販と共同し、売れるマンションではなく、貸せるマンションの商品企画に更に注力している。また、現在取引のある、大手証券会社系のファンド物件の管理をする事でPM事業部のスキルを更にアップさせ、他のファンドの管理獲得も積極的に目指している。

詳細・関連

明和住販流通センター
〒154-0023
東京都世田谷区若林3丁目4番11号第7明和ビル
TEL03-5430-5100 FAX03-5430-5101
URL: http://www.meiwa-g.co.jp/

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