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特集記事

業界の動向

重説のIT活用に関して、社会実験が間もなくスタート

皆さん、こんにちは。リプロス代表の松尾です。
ITを活用した重要事項説明書に係るガイドラインが発表され、社会実験が間もなくスタートします。まずは、皆様から当サイトに対する賛同並びにご意見を頂き、遅くなりましたが、この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
私どもの意見は、国交省が開催した第4回の検討会で配布資料の中に確認をする事ができました。
【参考資料2】 「中間とりまとめ」についての意見募集結果


その中でも、もっとも私が重要だと考えている「現地確認を要件とする」については、第4回の議事録を読むと不動産業界の委員からは賛同を頂き、重説のIT活用における要件とするように要望されましたが、国交省の課長は、そこまで求める必要はないという考えを述べています。(P30-P35)また、座長も消費者と事業者が選択することを基本としたいと述べています。 そこには、借主、買主の視点だけで、売主や貸主側、また、賃貸管理を行う業者側の視点と考慮が無いと私は思うのです。
結果的に今回の社会実験には、現地確認については、重説のIT活用の要件になりませんでした。ここがもっとも大きな問題になると私は思っています。しかも、実験期間ではそれは発生せずにIT重説が解禁された時に発生するのだと想像しています。なぜなら、実験に参加する不動産業者は、業界の中でも一部で比較的まじめに事業を行っている企業が参加するため、要件になっていなくても、自らトラブルを回避する為に現地確認をしない契約で、一般の消費者を相手に契約をする事は少ないと思います。問題は不良な業者と不良な入居者が存在している事です。実験でなんでもわかるわけではないのです。

ところで、第5回、6回の議事録を読んでいても感じる事ですが、不動産業界が慎重なのに対して、新経済連盟の関委員やECネットワークの沢田委員は、いけいけどんどんの推進派です。医薬品のネット販売でも、新経済連盟と沢田委員は推進派でした。推進の理由は両者の利益として、理解しやすいのですが、今回の重説のIT化で新経済連盟のトップである三木谷氏が率いる楽天や楽天が株主のポータルサイトHOME'Sを運営するネクストにどのような形で利益をもたらそうと考えているのか大変興味があります。自ら、直接、物件情報を集めて、賃貸仲介業に乗り出すのでしょうか?それとも、地元不動産業者を下請またはFC化して、広告収入以外の収益拡大を狙っているのか?または、重説のIT化でシステムを提供し、成功報酬型の広告収入を狙っているのか?これからの、楽天グループの動向に注目しています。

このIT活用をめぐる議論のなかで、私や不動産業界の人が感じる違和感について、少し述べたいと思います。 不動産業界はこれまで、沢山のトラブルが発生してきました。また、これからも発生すると思います。しかし、これまで国交省を始め、都道府県や業界団体はトラブルを未然に防ぐために指導ならびにガイドラインを作成するなどの取組を行い、これらのトラブルに対する基本となる考えは「トラブルは未然に防ぐ」だったわけです。ところが、IT業界は180度違い「トラブルは発生してから対処する」のように私は感じます。
例えば、大手通販ポータルサイトで販売されているマイクロソフトのoffice製品が海賊版だったとテレビで大きく取り上げられた事がありました。こうした海賊版などを扱う問題は、これまでにもありました。しかし、問題が大きくなるまでは、たいした対策はなされませんでした。ネットの社会では、利用者の自己責任が問われるわけです。
しかし、不動産業界の場合は、物品購入と違い単価も違えば、影響を受ける人達も当人以外に広がります。例えば、対面で接客する場合、接客を通じて暴力団やアルコール中毒の人達をある程度見分ける事ができます。
これを読んでいる業界の人には釈迦に説法で恐縮ですが、家主や素人の検討会の委員の方が、もし、読まれてもわかるように敢えて説明しますが、例えば、暑い真夏に長袖を着ていて、歩き方に違和感を感じる人は刺青を隠したヤクザかも?なんて考える事ができます。接客中にお客様に掛かった電話のやり取りやタバコの吸い方、持ちモノや乗りつけた車の車種、車の止め方など接客を通じて得る情報は沢山あります。
しかし、会った事も無い相手にネットだけで気軽に契約する事が普及すれば、書類審査だけで判断することになります。要するに、トラブルを未然に防ぐ事のできる確率が下がるわけです。しかも、その影響は家主や管理会社、ご近所の方にもおよぶわけで借主や仲介業者だけの問題ではなくなるのです。

また、問題が発生すれば、長期化する事もあります。こうした違いを理解しないまま、なんでも利便性や事業者の利益だけを追求して、重説のIT活用を推し進めるのは反対です。
今後も、この問題は継続して情報発信をしていきます。

詳細・関連

社会実験に参加する為には事前に不動産業者は申請を行う登録された事業者のみが参加できます。社会実験の参加スケジュールは以下の通りです。

申請受付期間:平成27年6月17日(水)?平成27年7月3日(金)18時まで
ガイドラインや申請の方法については、以下から国交省のサイトでご確認下さい。
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html

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