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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

アスベストについて

(1)仲介会社の宅建業法上の責任

 アスベスト製品の製造・使用は、平成16年10月1日から、労働安全衛生法施行令の一部改正により、建材等のアスベストを含有する製品の製造が禁止されました。

  しかし、それまでに製造された建材等にはアスベストの含有されている製品が一般的であるため、賃貸に供している共同住宅においては、アスベストを含有している建材を使用して建築されている建物が一般的であるというのが現状だといえます。

  しかし、現在アスベストが身体に有害な物質であることは政府も認めており、マスコミも盛んに報道していることことから、アスベストの存する建物か どうかは、借主にとっては重大な関心事であると考えられるため、媒介業務においては、今後は、宅建業法第47条(重要な事項について故意に事実を告げず、 又は不実のことを告げる行為)との関係で、アスベストに関する説明が要求される可能性があると考えられます。

 この場合、どこまで、アスベ ストに関する説明が宅建業法47条との関係で要求されるかについては、国土交通省や各都道府県の宅建指導課に確認をした方が適切であると思いますが、少な くとも、物件の一部にアスベスト吹きつけ部分が露出されており、かつ、劣化しているためアスベストが飛散する可能性がある場合には重要事項として説明する 必要があると考えられます。

 しかし、それ以上に、どの程度アスベストの含有する製品が物件内に存するかどうかについては、説明が求められ た場合にはケースによっては調査・説明義務を負う必要があると考えられますが、現状のアスベスト規制の状況や、アスベストを含んだ建材の使用状況からすれ ば、基本的にはアスベストを含有する建材の使用ありと説明しておくしかないと考えられます。

 そして、アスベストを含有する製品の危険性について説明を求められた場合には、厚生労働省・環境省・国土交通省等の政府発表の資料を参照しながらその安全性について説明をすべきであると考えられます。

 

(2)家主・管理会社の責任

 物件については、露出して吹き付けてアスベストが使用されている場合、劣化等によりその繊維が飛散するおそれがありますが、板状に固めたスレートボードや天井裏・壁の内部にあるアスベストから、通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられております(厚生労働省)。

 したがって、現状では、直ちに家主・管理会社にアスベストに関する被害について損害賠償請求をなされる危険性は少ないのではないかと考えられますが、今後は環境省の基準の制定等により法的責任が認められる可能性もありますので、アスベストに関する法規制については今後も注意をする必要があると思います。

(3)仲介・管理担当者の必須事項

 環境省・厚生労働省・国土交通省等から出されている「アスベストについてのQ&A」をよく読み、借主(予定者)や入居者からのアスベストに関する質問に対応できるようになって下さい。

2005.10/11

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
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【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修