大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ ≫ アスベストと耐震診断に関する宅建業法上の重説義務について

弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

アスベストと耐震診断に関する宅建業法上の重説義務について

第1 アスベスト調査、耐震診断に関する重要事項説明への追加
 平成18年4月24日より、アスベスト調査及び耐震診断に関する宅建業法上の重要事項説明義務の追加がなされました。

 まず、アスベスト問題については、政府全体で被害の実態把握、被害の拡大防止、国民の不安への対応等を一体的に検討しており、緊急に取り組むべき課題として、平成17年12月27日に「アスベスト総合対策」がとりまとめられ、その中で、「宅地建物取引業法上、アスベスト調査に関する事項を取引の際の重要事項説明の対象とすること」についての検討を行うことと定められたことから、それを受けて、今回、宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2を改正し、建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容を説明することを新たに規定し、重要事項説明として建物の購入者等に対して説明しなければならないこととしたものです。
 また、耐震診断に関しましては、平成17年10月に成立した建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律の国会での審議の中で、耐震改修の前提となる耐震診断については、参議院の附帯決議において、「住宅の売買及び賃貸借の契約に係る重要事項説明の中に、耐震診断の有無及び耐震診断に基づく耐震性の状況について記載するよう検討すること」と定められ、また、昨年発覚した構造計算書偽装問題を受け、関係省庁閣僚会合においてとりまとめられた、「構造計算書偽装問題への当面の対応(改訂版)」(平成17年12月22日)においても、「宅地建物取引業法に基づき宅地建物取引業者が交付する重要事項説明書に、耐震診断の有無及び耐震診断に基づく耐震性の状況について記載するよう検討し、速やかに結論を得る。」と定められたことから、宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2を改正し、昭和56年5月31日以前に新築された建物について、建築物の耐震改修の促進に関する法律第4条第2項第3号の技術上の指針となるべき事項に基づいて指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体が行った耐震診断がある場合は、その内容を説明することとすることを新たに規定し、重要事項説明として建物の購入者等に対して説明しなければならないこととしたものです。

第2 アスベストに関する重要事項説明について
 アスベストに関しては、宅地建物取引業法第35条第1項第12号の規定に基づく宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2について、 建物に係る石綿の使用の有無の調査の結果について、宅地建物取引業者が契約の成立前までに購入者等に対して行わなければならない重要事項説明事項として追加されました。
 アスベストの説明義務については、宅地建物取引業者は、売主及び所有者に当該調査の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合、管理業者及び施工会社にも問い合わせた上、アスベストの存在しないことが確認された場合又はその存在が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになります。したがって、宅地建物取引業者は、取引の対象となった建物について、アスベストの存在の有無について売主等に照会を行わなければなりません。
 そして、照会の結果、アスベストの使用の有無の調査記録が存在しないときは、調査記録が存在しないこと、調査記録の有無が不明であるときは調査記録の有無が不明であることを説明すれば足りるものとされております。
 また、照会の結果アスベストの使用の有無の調査結果の記録が保存されているときは、「その内容」として、1「調査の実施機関」、2「調査の範囲」、3「調査年月日」、4「石綿の使用の有無」、5「石綿の使用の箇所」を説明しなければなりません。ただし、調査結果の記録から、これらのうちいずれかが判明しない場合にあっては、宅地建物取引業者は売主等に補足情報の告知を求め、それでもなお判明しないときは、その旨を説明すれば足りるものとされております。
 なお、調査結果の記録から容易にアスベストの使用の有無が確認できる場合には、当該調査結果の記録を別添することは差し支えないとされております。
 以上のとおり、アスベストの説明義務については、アスベストの使用の有無の調査の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではなく、あくまで、売主又は所有者等にアスベストの存在について照会することが要求されているものであることに留意する必要があります。
 また、紛争の防止の観点から、売主から提出された調査結果の記録を説明する場合は、売主等の責任の下に行われた調査であることを、建物全体を調査したものではない場合は、調査した範囲に限定があることを、それぞれ明らかにすることが要求されておりますので、その点も調査結果の説明に当たっては注意する必要があります。

第3 耐震診断に係る重要事項説明について
 耐震診断に関しては、宅地建物取引業法第35条第1項第12号の規定に基づく宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2について、 建物の耐震診断の結果について、宅地建物取引業者が契約の成立前までに購入者等に対して行わなければならない重要事項説明書の説明事項として追加されました。
 建物の耐震診断については、まず、重要事項説明義務の対象となる建物は以下のとおり昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物であることについて注意が必要です。

1昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物であるか否かの判断にあたっては、確認済証又は検査済証に記載する確認済証交付年月日の日付をもとに判断することとする。
2確認済証又は検査済証がない場合は、建物の表題登記をもとに判断することとし、その際、
I 居住の用に供する建物(区分所有建物を除く)の場合は、表題登記日が昭和56年12月31日以前であるもの、
II 事業の用に供する建物及び区分所有建物の場合は、表題登記日が昭和58年5月31日以前であるものについて説明を行うこととする。
III また、家屋課税台帳に建築年月日の記載がある場合についても同様に取扱うこととする。

 上記のとおり耐震診断の結果について重要事項説明義務の対象となる建物に該当する場合には、宅建物取引業者は、耐震診断の説明義務については、売主及び所有者に当該耐震診断の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合及び管理業者にも問い合わせた上、存在しないことが確認された場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになります。したがって、宅地建物取引業者は取引の対象となった建物について、耐震診断の対象となる建物については、売主等に耐震診断の有無についての照会を行わなければなりません。
 そして、照会の結果、耐震診断の結果の調査記録が存在しない場合には、、調査記録が存在しないこと、調査記録の有無が不明であるときは調査記録の有無が不明であることを説明すれば足りるものとされております。
 また、照会の結果、耐震診断の結果の調査記録が保存されているときは、その診断の結果を説明しなければなりません。
なお、耐震診断の結果の調査記録の説明方法として、下記の書類を別添することとして差し支えないとされております。

1住宅の品質確保の促進等に関する法律第五条第一項に規定する住宅性能評価書の写し(当該家屋について平成十三年国土交通省告示第千三百四十六号別表2-1の1-1耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評価を受けたものに限る。)
2地方税法施行規則第七条の六の二第二項に規定する書類(耐震基準適合証明書の写し、住宅の品質確保の促進等に関する法律第五条第一項に規定する住宅性能評価書の写し)
3租税特別措置法施行規則第十八条の四第二項、第十八条の二十一第一項、第二十三条の六第三項第二号に規定する書類(耐震基準適合証明書の写し、住宅の品質確保の促進等に関する法律第五条第一項に規定する住宅性能評価書の写し)
4指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体が作成した耐震診断結果評価書の写し

 以上のとおり、耐震診断の説明義務については、耐震診断の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではなく、売主等に対して、対象となる建物について耐震診断の実施の有無を照会することが要求されているものであることに留意する必要があります。
 なお、耐震診断とは、建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成十七年法律第百二十号)に定める耐震診断を言いますので、耐震診断の記録を入手したときは、「指定確認検査機関」「建築士」「登録住宅性能評価機関」「地方公共団体」等が行った診断であることを確認する必要があります。
 診断を行った者によっては、施行規則で指定された耐震診断には該当しないことがありますが、同法の施行前に行った耐震診断については、改正前の建築物の耐震改修の促進に関する法律第三条に基づく特定建築物の耐震診断及び耐震改修に関する指針(平成七年建設省告示第二千八十九号)に基づいた耐震診断であり、耐震診断の実施主体が規則第十六条の四の二第三号イからニまでに掲げる者である場合には、同号に規定する耐震診断として差し支えないとされております。

第4 重説の書式

 以上のとおり、アスベスト及び耐震診断の説明義務については、その内容を正確に理解して、重要事項説明に当たる必要がありますが、既に4月24日から施工されておりますので、まだ、重要事項説明書を訂正していない場合には、至急訂正する必要があります。
 この点、国土交通省が書式例は下記のインターネットのアドレスで公表しておりますので、それを参照して、まだ訂正していない方は、自分が使用している重説書に欄を追加して下さい。

 

国土交通省ホームページアドレス 

http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/1_6_bt_000261.html

2006.07/04

関連記事

亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修