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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

賃貸借契約書の保管期間

当社では、賃貸借契約書の保管に困っております。法律上は、退室し、敷金精算してから何年くらい契約書類を保管しなければならないのでしょうか。当社では3年で契約書類を廃棄するようにしております。これで問題ないのでしょうか。
1 事案の概要

 賃貸管理等を行っている不動産会社は、通常株式会社等の商法の適用のある法人であるため、商人として商法の適用があります。そして、商業帳簿等の重要な書面については、10年間の保存義務があることが定められております(商法36条)。

 また、仲介業務は商法上仲立営業に該当しますが、仲立人は商法547条により帳簿の作成が義務づけられており、その作成した帳簿については、商法36条類推により10年間の保存義務があります。

 そして、重要な書面には契約書類も含まれると考えられますので、商法上は契約終了後〈退去及び敷金清算後)10年間の保存義務が発生すると考えられます。 
 したがって、3年間で契約書類を廃棄処分することは商法に違反することとなります。ただし、商法上の保存義務については商法上は罰則の定めはありません。


2 宅建業法上の保存期間

 宅建業法上は、宅建業者に帳簿の備え付け義務が課せられており(宅建業法49条)、その帳簿は、各事業年度の閉鎖後5年間は保存しなければならない旨定められております。

 したがって、当該書面が宅建業法上の帳簿に該当する場合には各事業年度の終了後5年間の保存義務が存在することとなります。
 なお、宅建業法上の帳簿備え付け義務に違反する場合には20万円以下の罰金が課せられます。

 しかし、宅建業法上の帳簿備え付け義務及び保存義務は、宅建業法で定められた書面ですので、必ずしも契約書類自体を保存すべき義務を負うものではありません。。


3 会社法上の保存期間

 会社法では、計算書類について、定時株主総会の2週間前または1週間前から本店において5年間、支店において3年間備え置かなければならない旨定められております。〈会社法442条1項2項〉
 しかし、計算書類とは、貸借対照表、損益計算書等の会社の事業報告に必要な書類をいい、契約書類等は含まれておりません。したがって、契約書類等の保管期間については、商法36条が基準となります。


4 消滅時効との関係

 以上のとおり、商法上契約書類等は10年間の保存義務が存在しますので、原則として、契約終了後10年間は賃貸借契約書等の契約書類は保存すべき事となります。

 ところで、賃貸借契約が終了しても敷金返還義務等の債権債務が残存する場合には、民法上の債権の消滅時効は10年間と定められておりますので(民法167条1項)、賃貸借契約の当事者は契約終了後やはり10年間は債権を主張される危険を負っているので、消滅時効が到来するまで書類等を保管する必要があると言えます。

 しかし、株式会社等の商法上の会社が賃貸人となっている場合や、賃借人が商法上の会社の場合には、当該賃貸借契約が商行為に該当することとなります。そして、賃貸借契約が商行為に該当する場合には商法522条により、5年間の消滅時効にかかりますので、契約終了より5年を経過すれば、契約書類を紛失しても、消滅時効により免責される可能性があります。

 ただし、仲介業者の調査義務違反による損害賠償責任の場合のように、不法行為が別に発生する余地がある場合には、商法上の消滅時効が到来しても別途責任が発生する余地が出てきます(損害及び加害者を知ったときから3年、不法行為の時から20年 民法724条)ので、その消滅時効が到来するまで書類等を保管する必要はあると考えられます。

 

2007.08/08

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修