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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

地震における賃貸住宅の法律トラブルについて

東北地方太平洋沖地震のお見舞い
この度は、突然の東北地方太平洋沖地震に被災された方におかれましては、大変な苦難に遭われており、心よりお見舞い申し上げます。
まだまだ、復興と言うにはほど遠い現状ですが、皆様がもう一度立ち上がって東日本を再興されることを強く祈念致します。
さて、震災の影響は賃貸住宅にも及んでおります。流失した家屋や、倒壊した家屋や、破損した家屋には賃貸住宅も多数含まれております。私の所属しておりますことぶき法律事務所(東京都新宿区新宿2-19-13 坂善第1ビル8階)では、この度、地震が発生したときの賃貸住宅に関する簡単なQ&Aを作成しましたので、ご参考にしていただければ幸いです。

地震に関するQ&A

旧賃借人と新賃借人、優先するのはどちら?

Q1 物件について、旧賃借人との間で賃貸借契約の解除が完了し、明渡日も決まっており、新賃借人が決まっておりましたが、今回の地震で旧賃借人が引っ越すことができません。新賃借人と旧賃借人とどちらに優先する権利があるのでしょうか?
A 賃貸借契約が解除され終了しているので、旧賃借人から建物の明け渡しを受け、新賃借人を入居させる必要があります。ただ、法律とは別に、旧賃借人のために、別の空室を手当てして、旧賃借人の住居も確保するようにして下さい。


地震で建物が損壊。その際の賃料は?

Q2 地震で賃貸している建物が損壊して、通常の住居として利用できません。建物を修復するまで間の賃料を請求できますか?
A そもそも住居の用に供することができない場合には、賃貸借の目的を達成することができませんので、賃料を請求できませんし、賃借人より賃貸借契約を解除することもできます。


津波で建物が全壊。その際の賃貸借契約は?

Q3 津波で賃貸物件が全壊しました。賃貸借契約はどのようになりますか?
A 賃貸目的物が全壊してしまった以上、履行不能となり、賃貸借契約は当然に終了します。なお、賃貸人の損害賠償義務は発生しません。


原発問題で避難勧告。賃料を請求できるか?

Q4 原発の問題で行政より避難勧告が出たため、賃貸物件を使用することが出来なくなりました。勧告が解除されるまでの間、賃料を請求できますか?
A 住居として使用できないことについて、賃貸人・賃借人の両者に責任のない場合には、その負担を賃貸人が負うことになります。したがって、賃料の請求をすることができません。但し、利用の割合に応じて、賃料請求できる場合があります。


地震による仮住まいの費用を支払うべきか?

Q5 今回の地震の影響で、賃貸物件が水浸しになり、使用できなくなりました。賃借人よりホテル等の仮住まいの費用の請求を受けましたが、支払う必要があるでしょうか?
A 賃貸人の責任によって生じた費用ではないので、支払う必要はありません。ただ、賃貸物件が使用できないので、賃料の請求は出来ません。


敷金の返還が遅れた場合の責任は?

Q6 今回の地震で賃貸物件が使用不能となったため、賃借人から解除・明け渡しの上、敷金の返還請求を受けました。速やかに敷金を返還することが困難なのですが、敷金の返還が遅れた場合、責任が発生するでしょうか?
A 敷金返還債務のような金銭債務は不可抗力であっても、法律上は遅延損害金が発生することになります。


住民票等が入手できない入居申込者と契約して良いか?

Q7 今回の地震で入居申込者が、契約時にお願いしている住民票等の必要書類を揃えることができません。契約を行っても法的に問題はないでしょうか?
A 住民票等の資料は、本人確認のための資料ですので、他の資料で本人確認をできるのであれば、契約を行っても法的には問題はありません。


預かり賃料の送金が遅れた場合の責任は?

Q8 今回の地震で、管理会社が期日までに、建物のオーナに預かり賃料を送金することができませんでした。管理会社に責任は発生するでしょうか?
A 預かり賃料の送金も金銭債務であり、不可抗力であっても、法律上は遅延損害金が発生することになります。


入居予定の賃貸物件が地震で水浸しになった。さてどうしたら?

Q9 賃借人が決まり、契約したところ、引渡し前に地震のため物件が水浸しになってしまいました。賃貸借関係はどうなりますか。
A 賃貸物件が水浸しで修繕も不能であれば、賃貸借契約は使用収益させるという目的を達成することができないため終了します。この場合、賃貸人は、賃料を請求できません。 賃貸物件が修繕可能であれば、賃貸人は、これを修繕する義務があります。賃料については修繕が完了し入居できるまでの間の賃料は請求できません。賃借人は賃貸借契約を解除することもできます。


入居後に賃貸物件が地震で水浸しになった場合は?

Q10 入居後に地震のため水浸しになった場合賃貸借関係はどうなりますか。
A 入居後に水浸しになった場合、修繕不能であれば、賃貸借契約は目的を達成することができないため終了します。この場合、賃貸人は、賃料を請求できません。   修繕可能であれば、賃貸人が修繕義務を負担し、修繕の間の賃料の一部を減額すべき場合があります。賃借人は賃貸借契約を解除することもできます。


本棚が地震で倒壊し床が凹んでしまった。修繕費はだれが負担する?

Q11 賃貸している建物内で賃借人が設置した本棚が地震で倒壊し、床が凹んでしまいました。床の修繕費用を賃借人に請求できますか。
A 想定外の強い地震で本棚が倒壊した場合は、不可抗力によるものですから賃貸人が床の修繕費用を負担します。しかし、普通であれば本棚が倒壊することはないのに、賃借人の設置の仕方が悪かったために倒壊した場合は、賃借人に過失が認められ、床の修繕費用を賃借人に請求できる場合もあります。

2011.03/29

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修