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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

最高裁平成17年9月8日共同相続と賃料に関する判決について

出典:ウエストロー・ジャパン
http://www.westlawjapan.com/

【1】賃貸不動産の共同相続と賃料債権との関係
建物賃貸借契約において、反社会的勢力に対する契約解除条項が現在一般化しておりますが、その契約条項の効力については、これまで判決例もなく、不明確な状況にありました。
この点に関し、平成27年3月27日に最高裁判所において、市営住宅の賃貸借契約に関し、市の条例で定められている反社条例に基づき、賃借人に対して賃貸借契約の解除を行ったことについて、最高裁判所が有効と認める判決が出されました。
市営住宅の賃貸借契約は、社会福祉目的も加味された契約であるため、通常の民事上の賃貸借契約とは同一の性質とは言い難い面もありますが、最高裁が賃貸借契約の反社条項の有効性を明確にしたことは極めて重要であると考えられますので、以下のとおり紹介致します。

【2】事案の概要

  1. (1)Aは、平成8年10月13日、死亡した。その法定相続人は、妻である被上告人のほか、子である上告人、B、C及びD(以下、この4名を「上告人ら」という)である。
  2. (2)Aの遺産には、第1審判決別紙遺産目録1(1)~(17)記載の不動産(以下「本件各不動産」という)がある。
  3. (3)被上告人及び上告人らは、本件各不動産から生ずる賃料、管理費等について、遺産分割により本件各不動産の帰属が確定した時点で清算することとし、それまでの期間に支払われる賃料等を管理するための銀行口座(以下「本件口座」という)を開設し、本件各不動産の賃借人らに賃料を本件口座に振り込ませ、また、その管理費等を本件口座から支出してきた。
  4. (4)大阪高等裁判所は、平成12年2月2日、同裁判所平成11年(ラ)第687号遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告事件において、本件各不動産につき遺産分割をする旨の決定(以下「本件遺産分割決定」という)をし、本件遺産分割決定は、翌3日、確定した。
  5. (5)本件口座の残金の清算方法について、被上告人と上告人らとの間に紛争が生じ、被上告人は、本件各不動産から生じた賃料債権は、相続開始の時にさかのぼって、本件遺産分割決定により本件各不動産を取得した各相続人にそれぞれ帰属するものとして分配額を算定すべきであると主張し、上告人らは、本件各不動産から生じた賃料債権は、本件遺産分割決定確定の日までは法定相続分に従って各相続人に帰属し、本件遺産分割決定確定の日の翌日から本件各不動産を取得した各相続人に帰属するものとして分配額を算定すべきであると主張した。
  6. (6)被上告人と上告人らは、本件口座の残金につき、各自が取得することに争いのない金額の範囲で分配し、争いのある金員を上告人が保管し(以下、この金員を「本件保管金」という)、その帰属を訴訟で確定することを合意した。
  7. (7)本件は、被上告人が、上告人に対し、被上告人主張の計算方法によれば、本件保管金は被上告人の取得すべきものであると主張して、上記合意に基づき、本件保管金及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。


【3】最高裁判所の判断の内容
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
したがって、相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、本件口座の残金は、これを前提として清算されるべきである。
そうすると、上記と異なる見解に立って本件口座の残金の分配額を算定し、被上告人が本件保管金を取得すべきであると判断して、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。

【4】最高裁判決と実務上の注意点について

実務上、共同相続において特に問題となるのは、管理会社がサブリース賃料や集金管理した預かり賃料を賃貸人である共同相続人に交付する際に誰にいくらを引き渡すべきかという点です。
上記の最高裁判決によれば、遺産分割が成立するまでは、賃料債権は各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得することとなりますので、もし、管理会社と共同相続人間で、相続発生後の賃料の送金方法を具体的に取り決めていなければ、管理会社は、法定相続分にしたがって分割した金額を、各相続人に支払う義務が発生することとなり、賃貸管理実務上は極めて煩雑な手続きを必要とされることとなります。
したがって、共同相続が発生した場合には、上記の煩雑な手続きを避けるために、遺産分割協議までは誰か一人を代表者として選任する作業を共同相続人間で行って頂くか、日頃から遺言書の作成や、共同相続発生後の口座を事前に指定する等の事前の準備が必要となると考えられます。
以上のとおり、不動産の賃貸管理において共同相続が発生することは日常良くあることであるため、その際の対応方法について、上記最高裁判決については十分留意しておく必要があると思います。

2015.12/01

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修

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