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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

大田区民泊条例について

出典:大田区ホームページ
http://www.city.ota.tokyo.jp/index.html
内閣府ホームページ
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/index.html


【1】国家戦略特区における旅館業法の特例
大田区において大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例(以下「大田区民泊条例」といいます)が、平成27年12月7日可決成立し、平成28年1月29日施行されましたが、大田区民泊条例は、国家戦略特区事業の一環として制定されたものです。昨今、旅館業法の改正により、民泊の合法化が検討されていますが、それとは、法令の根拠、制度の仕組みが異なります。
そこで、今回は、国家戦略特区特定事業の一つである大田区民泊条例について、紹介したいと思います。

国家戦略特区特定事業は、特定の事業について、通常の法律上の規制の適用除外事由を定めることにより、当該事業を法律の規制を無視して実施することを可能とする制度です。そのうち、今回の民泊条例は、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業と呼ばれ、国家戦略特別区域において外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき一定期間使用させ、滞在に必要な役務を提供することを目的としています。

今回大田区が定めた民泊に関する条例は、国家戦略特区法により、旅館業法の特例を定め、旅館業法の規定の適用除外として、住宅として賃貸借契約に基づき一定期間の滞在を可能とするものです。
国家戦略特区法の特定事業に該当することについては、都道府県知事の認定が必要となります。すなわち、国家戦略特別区域会議が、国家戦略特区法の特定事業を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を受けたときは、当該認定の日以後は、国家戦略特区法の特定事業を行おうとする者は、その事業について都道府県知事の特定認定を受けることにより、その事業には、旅館業法の規定は適用されず、賃貸借契約により宿泊事業を実施することが可能となります。
事業の実施者は、現行の旅館業法の制度では、宿泊期間が1ヵ月未満の施設では旅館業法が適用されます。旅館業法の適用による主な義務は、フロントの設置、宿泊者名簿の作成義務、衛生管理、保健所による立入検査などが課せられています。

しかし、国家戦略特区法上の特定時事業に認定されると、以下の特例が法令及び規則等で定められ、実施することが認められます。

  1. (1)使用期間:7日から10日までにおいて条例で定める期間以上であること。
  2. (2)一居室の床面積:原則25平方メートル以上等であること。
  3. (3)国家戦略特区において外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき条例で定めた期間(7日?10日)以上使用させ、滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当するもの(※滞在するのは日本人でも外国人でも構わない)。
  4. (4)国家戦略特区に指定された地域であれば、本事業を区域計画に位置付け、総理認定を受けることにより実施できます。

【2】民泊条例と宅建業法の関係

ところで、国家戦略特区法の特例が適用される場合には、旅館業法の適用の除外となり、賃貸借契約として取り扱われるため、宅建業法上の規制の適用の有無も問題となります。
この点、国土交通省土地・建設産業局不動産業課長から各都道府県主管部長宛てに、平成26年12月5日、国家戦略特区法が適用される滞在施設事業について、宅地建物取引業法との関係で、次のとおり通達が出されており、国家戦略特区法の適用のある民泊事業については宅建業法の適用がないことを明らかにしております。

本年4月1日に国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号。以下「特区法」という)が施行され、今般、国家戦略特別区域諮問会議(平成26年10月10日)において、「国家戦略特区における追加の規制改革事項等について」がとりまとめられ、「国家戦略特区における旅館業法の特例の活用を促し、一層の外国人の滞在ニーズに対応するため、当該特例の対象となる滞在施設には宅地建物取引業法の適用はなく、滞在者への重要事項説明が不要であることを明確化する」とされたところである。これを踏まえ、同法第13条に旅館業法(昭和23年法律第138号)の特例として規定された国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業と宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下「宅建業法」という)の関係について、下記のとおり通知するので、御了知頂きたい。

国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業は、特区法第13条において「国家戦略特別区域において、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業(その一部が旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定する旅館業に該当するものに限る)として政令で定める要件に該当する事業をいう」とされている。

「外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させる」行為自体については、宅建業法が規制対象としていない「宅地又は建物を自ら賃貸する行為」に該当するものであり、宅建業法は適用されない。

このような施設を紹介・あっせんする行為が本事業に含まれる場合は、宅建業法の規制対象である「貸借の代理又は媒介」との関係が問題となるが、宅建業法の適用の有無は、従来より、施設の使用に係る契約の内容によって実質的に判断しており、提供される施設に生活の本拠を有しないと考えられる滞在者を対象として、寝具等を備えた施設を紹介・あっせんする事業については、宅地建物取引業には該当しないものである。

以上のとおり、国家戦略特区法の適用を受ける民泊事業は、賃貸借契約に該当しても宅建業法の適用を受けないため、施設の利用の媒介・斡旋をした事業者についても、宅建業法上の重要事項説明義務等の義務は課せられないこととなります。


【3】大田区民泊条例の内容

大田区の民泊条例は、平成27年10月14日に、国家戦略特区法上の区域会議において事業決定がなされ、同月20日に、同法上の諮問会議において議場認定がなされました。その結果、大田区は平成27年12月7日大田区民泊条例を可決し、平成28年1月29日より施行されております。
大田区民泊条例の概要は以下のとおりですので、実際に民泊事業への参加を検討されている方は、直接大田区へのお問い合わせをお願い致します。

  1. (1)主な認定基準
    大田区における民泊事業における主な認定要件はいかのとおりです。
    • 貸借契約及びこれに付随する契約に基づき使用させるものであること。
    • 施設の居室の要件等
      • 一居室の床面積25平方メートル以上であること。
      • 出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること。
      • 出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであること。
      • 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること。
      • 台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること。
      • 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること。
      • 施設の使用の開始時に清潔な居室を提供すること。
      • 施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供、その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供すること。
    • 当該事業の一部が旅館業法 第二条第一項に規定する旅館業に該当するものであること。
    • 滞在期間が6泊7日以上であること。
    • 建築基準法上「ホテル・旅館」が建築可能な用途地域であること。
  2. (2) 近隣住民への周知
    大田区民泊条例においては以下のとおりの近隣住民への周知等に対する指導が予定されています。
    1. 1. 条例第4条、規則第9条及び第10条で定めるとおり、認定を受けようとする者に対して、近隣住民に対して周知するよう指導する。その際には、適切に周知、説明し、近隣住民の理解を得るように努める。
    2. 2. 認定事業者は、近隣住民からの苦情等の窓口を設置し、近隣住民に周知するとともに、近隣住民から騒音やごみの廃棄方法等の苦情があった場合は、適切かつ速やかに対応できる体制を整備すること。
  3. (3) 認定事業の実施状況についての報告
    1. 1. 法第13条第8項に基づき、認定事業者に対し、認定事業の実施状況について報告を求めることができる。
    2. 2. 近隣住民から騒音やごみの廃棄方法等の苦情があった場合は、適切かつ速やかに対応できる体制を整備し、近隣住民の理解を得るよう指導し、その際の近隣住民とのやり取り、交渉経緯等を別紙により適宜報告するよう指導する。
  4. (4)滞在者の確認に対する指導
    テロ対策、感染症対策及び違法薬物の使用や売春などの特定認定施設における違法な行為の防止の観点から、事業の実施に当たっては、以下に掲げる点に十分に留意させること。
    1. 1. 必要事項を記載した滞在者名簿を備え、保管場所を明確にしておくこと。 日本人及び日本に住所を有する外国人の場合は、本人と確認できる顔写真付きの身分証明書等で本人確認を行うこととする。外国人の場合は、記載の正確性を担保する観点から当該滞在者に旅券の呈示を求め本人確認を行うとともに、旅券の写しを滞在者名簿とともに保存すること。なお、これにより、当該滞在者に関する滞在者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の記載に代替しても差し支えないものとすること。この内容は契約約款に記載し確実に履行できるようにすること。
    2. 2. 認定事業者は、滞在者が施設の使用を開始する際に、対面(又は滞在者が実際に施設に所在することが映像等により確実に確認できる方法)により、滞在者名簿に記載されている滞在者と実際に使用する者が同一の者であることを確認すること。例えば、以下の方法にあること。
      1. i現場で対面による確認及び旅券等の確認並びに滞在者名簿との確認
      2. ii現場でないところでの対面による確認及び旅券等の確認並びに滞在者名簿との確認
      3. iii滞在者が実際に施設に所在することが映像等(テレビ電話等)により確実に確認できる方法
    3. 3. 認定事業者は、契約期間中に、滞在者本人が適切に施設を使用しているかどうかについて、状況の確認を行うとともに、挙動に不審な点が見られる場合や違法薬物の使用や売春などの法令に違反する行為が疑われる場合には、速やかに最寄りの警察署に通報すること。
    4. 4. 認定事業者は、滞在者が施設の使用を終了する際にも、対面(又は滞在者が実際に施設に所在することが映像等により確実に確認できる方法)により、滞在者名簿に記載されている滞在者と実際に使用した者が同一の者であることを確認すること。
    5. 5. 滞在者名簿は、3年以上保存すること。
    6. 6. 認定事業者の求めにもかかわらず、当該滞在者が旅券の呈示を拒否する場合には、当該措置が区の指導により行うものであることを説明して呈示を求め、更に拒否する場合には、当該滞在者は旅券不携帯の可能性があるものとして、最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行うこと。
  5. (5) 警察への捜査協力に対する指導
    厚生労働省の通知に基づき、警察等の捜査には適切に協力するよう指導すること。

    【参考】厚生労働省健康局長通知(平成27年7月31日内閣府地方創生推進室長)
    認定事業者は、警察等の捜査機関の職員(以下「警察官等」という)から、その職務上、滞在者名簿(81(1)の旅券の写しを含む)の閲覧請求があった場合には、捜査関係事項照会書の交付の有無にかかわらず、当該職務の目的に必要な範囲内で協力すること。なお、この場合には、捜査関係事項照会書の交付がないときであっても、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第23条第1項第4号の場合に該当し、本人の同意を得る必要はないものと解すること。また、滞在者に係る不審事案の有無に関する警察官等の質問に対しては、積極的に協力すること。
  6. (6) 認定の公表
    1. 1. 特定認定を受けた施設については、施設名称及び所在地の一覧表を、大田区ホームページに公表する。
    2. 2. 認定事業者に対し、特定認定を受けた施設の郵便受け、玄関のとびら付近等に、事業開始時までに当該施設である旨(施設名及び緊急連絡先)の表示をするように指導する。

【4】他の自治体の動向との関係

大阪府においても、大田区民泊条例と同様に、民泊条例の実施に向けて動いております。
具体的には、平成27年10月27日に条例が成立し、平成27年11月2日に条例が公布され、平成27年12月15日に区域計画の認定がなされ、平成28年3月に事業者説明会、事前相談が実施され、平成28年4月には特定認定申請受付の開始が予定されております。

大阪府で民泊条例を制定した目的は、滞在施設不足の解消および安全性や衛生面に配慮した施設を提供する環境を整備するため、特定認定事業者が、区域計画で定める実施区域内において旅館業法の適用を除外した滞在施設を提供できるようにするためです。
大阪府では、平成27年10月27日の関連条例成立後、平成28年4月の特定認定申請受付開始に向けて体制の整備を進めています。

実施地域は、大阪府内全43市町村のうち5市町(守口市、大東市、泉佐野市、能勢町、忠岡町)で、市街化区域のうちホテル・旅館の建築が可能な地域のほか、住居専用地域においても実施し、28市町で、市街化区域のうちホテル・旅館の建築が可能な地域において実施を予定しています。
大阪府としては、民泊条例の実施により、海外からのインバウンドが急増し、現在宿泊施設の稼働率85.2%(平成27年1月?12月分)が日本一である大阪府において、安心、快適な滞在環境の選択肢を提供することを企図しています。


【5】今後の展開について

上記のとおり、民泊条例は、大田区や大阪府では既に成立し、現実に開始している状況ですが、現在、旅館業法の改正の動きもありますので、今後は、民泊事業に参加する場合には、上記の国家戦略特区法による場合と、旅館業法の改正後の法規制による場合とが考えられますので、今後も、旅館業法の改正の動向も十分に注視していくことが必要であると考えられます。

2016.04/19

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修

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