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リプロス代表・松尾充泰の賃貸経営ノウハウ

第1回「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のリプロス流解体新書

 はじめに
 『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の改定版が発表されて、賃貸業界では、セミナーなどが多数開催されています。

 しかし、この原状回復のガイドラインを最大限に活用しているのは、入居者側の立場の人で、退去時の原状回復問題ではこの原状回復のガイドラインを誤った解釈の元で、敷金返還を主張する入居者も多く見られます。
 そもそも、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』は民間の賃貸住宅の賃貸契約においては絶対的なものではありません。

 大家さんも管理会社の担当者もこの原状回復のガイドラインをしっかりと理解して、ガイドラインを盾に無謀な主張する入居者が現れたなら、正しい内容を説明し、理解させるぐらい原状回復のガイドラインを活用していただきたく思います。

 そして、原状回復のガイドラインを読み、ガイドラインができた背景や時代がどのような方向に流れようとしているのかも感じて頂きたいです。

 たかがガイドライン、されどガイドライン、賃貸経営を行う者にとって重要な一冊だと思います。

 そこで、この『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に何が書かれているのか、どのように理解し活用すれば良いのかを、私なりの解釈で『リプロス流解体新書』と称して解説したいと思います。

 私は中立の立場でこのガイドラインを読んで解説しているつもりではありますが、不動産業者や大家さん側の立場で解説をしていると思われるところがあるかもしれません。

 入居者側の立場にある人がこれを読んで気分を悪くされたなら、そこは、ご容赦いただければと思います。

 また、記載する解説については、すべては私の解説であり、これが、正しい解説だとは決して言えません。立場や見かたによって、解釈が分かれることもあると思います。

 私としては参考までに読んで頂ければと思い、これから数回に分けて連載していきます。

 ご意見、ご感想などがあれば、こちらで受け付けさせて頂きます。

本文中の表記について
・本文中で(P9の図1)などとありますが、これは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の改定版のページを示しています。

ガイドライン改定について
 平成10年3月に当時の建設省が(財)不動産適正取引推進機構に委託し発表してから、およそ6年が経ち、16年2月に『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の改訂版が発行されました。
 注目すべきは改定部分です。もちろん、改定した意図がそこにあるからです。

 例えば、経年変化の説明をする図解(P9の図1)では、経年変化による通常損耗について、以前は「賃貸人負担」とあったものが、改訂版では「賃料に含まれる部分」となっており、単なる賃貸人の負担ではなく、賃料に含まれている事を明示しています。

 つまり、クロスなどが経年変化で損耗したからといって、それを原状回復といって入居者に負担させることは、原状回復に該当しませんよと書いてあるのです。

 例えば、レンタカーを借りて、タイヤが磨り減ったので、原状回復してくださいと言われタイヤを交換する事はありません。

 レンタカー代にタイヤやオイルなど、通常の使用で消耗するものが含まれているからです。

 ですが、賃貸不動産の業界ではこれが慣習で当たり前の事として、賃借人(入居者)も賃貸人(大家さん)も承知していました。それも、物件が少なく借り手が弱い立場にあったからこそで成り立つ慣習だったのです。
 賃貸人に不利な話ばかりと嘆く必要はありません。

 前向きにガイドラインを読めば、賃貸人にとってありがたいことも書いてあるのです。

 例えば、別表1 損耗・毀損の事例区分にある設備、その他(鍵など)と書かれている項目です。

 ここには、風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等について、基本的には賃貸人の負担ですが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるものとした分類に記載されており、考え方には「使用期間中に、その清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合は、賃借人の善管注意義務違反(※1)に該当すると判断され事が多いと考えられる」と書かれています。

 つまり、善管注意義務は自らの所有物よりも更に高度な管理をする事の義務であるという事なので、賃貸人にとってはうれしい指摘です。

 これは、すべてが賃貸人の負担だと主張する賃借人の間違った読み方を正した一例です。


 次回からは『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を抜粋しながらその解説とその裏側を読んでいきたいと思います。

(※1)善管注意義務(民法644条)
受任者ハ委任ノ本旨ニ従ヒ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ委任事務ヲ処理スル義務ヲ負フ

『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の購入に関するお問合せは
(財)不動産適正取引推進機構 03-3435-8111 定価900円(税込)
国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関するページはこちら

【注意】
このページは個人の解釈を元に作成していますので、解説による責任はいかなる場合も一切負いかねます。ご了承くださいませ。

2004.06/08

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松尾充泰 (まつおみつひろ)
(賃貸不動産経営コンサルタント)
昭和43年大阪生まれ。
96年に賃貸不動産業界での職務経験を生かし、賃貸不動産業界向けソフトウェア開発会社、アクセス株式会社を設立。その後、賃貸不動産会社に対する業務コンサルティング、大家さん・賃貸不動産業界のビジネス支援サイトを運営する、株式会社リプロスを2003年に設立。