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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

有価証券~評価の方法と会計処理~/販売用不動産の強制評価減が必要な理由

平成11年度の商法改正で『時価会計』の規定が新たに導入されました。改正前までは、株式会社の貸借対照表に計上する資産について、原則として企業会計は取得原価主義を採用し、未実現利益の計上を排除することとしてきました。世界の潮流として、時価で評価することが「会社の財政状態」を「適正に表示」することになるとの認識が一般化してきました。

今回は、有価証券の評価方法と評価差額の会計処理と棚卸資産の強制評価減について述べていきたいと思います。

有価証券
~ 評価の方法と会計処理 ~

会社の所有目的によって、評価方法、そして評価差額の会計処理が変わってきます。
具体的に有価証券は、次の4つに分類されます。

1.売買目的有価証券        2.満期保有目的債券
3.子会社株式、関連会社株式   4.その他有価証券

※1.と4.が時価評価の対象となります。

売買目的有価証券
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券
※銀行や証券会社などの金融機関におけるトレーディング目的の有価証券がこれに該当しますが、一般事業会社であっても定款において有価証券の売買を掲げ、かかる取引に係る有価証券を売買目的で取得したものであることがわかる勘定科目で帳簿に記載しているとき。

1.評価方法 ⇒ 時価法
2.評価差額の会計処理
その期の損益(有価証券運用損益として計上)
実現していない評価益が当期の収益になるのは、有価証券の中では、売買目的有価証券のみ。

実際に売ったかどうかでなく、時価の推移で投資の成果を判断する。

満期保有目的債券
売買を目的とした債権ではなく、満期日まで保有することを目的としていると認められる社債その他の債権をいう。
満期まで保有することにより「約定利息」および「元本の受取り」を目的としている。このため、金利変動による「価格変動リスクがないと認められる」ので、原則として取得原価により評価される。
※例外 ⇒ 取得価額と債権金額との差額が「金利の調整の性格」のものと認められるときは、「償却原価法」に基づいて算出された価額をもって貸借対照表価額とされる。

子会社株式・関連会社株式
子会社を支配したり、関連会社に影響を与えるため保有しているもの。
売ることを目的としていないので、取得原価で評価する。

その他有価証券
子会社株式や関連会社株式以外の有価証券で、「売買目的」又は「満期保有目的」といった「保有目的」が明確に認められないグループをいう。
売買目的有価証券と子会社株式・関連会社株式との中間的な性格を有するものとして、一括して捉える立場をとっているため、「時価」をもって貸借対照表価額とする。

~ 処理方法 ~
事業遂行上直ちに売買・換金を行うことは制約を伴うこともあり、評価差額をその期の損益とすることは、適当でないと考えられる。

 原則として、全部資本直入法(※1)を適用する

 継続適用を条件として部分資本直入法(※2) を適用することもできる。

※1 評価差額は、税効果を調整のうえ、資本の部に計上する方法。
※2 時価が取得価額を上回る銘柄に係る評価差額(評価差益)は資本の部に計上し、時価が取得価額を下回る銘柄に係る評価差額(評価差損)は当期の損失として処理する方法。

不動産会社・ゼネコンなどに、 2001年3月期から適用が徹底された 販売用不動産の強制評価減が必要な理由
バブル経済崩壊後の長期的な地価の下落によって、販売用不動産については、大幅な含み損が発生する事態となりました。
これらの含み損は、その資産の売却時まで先送りされていました。
含み損があってもその処理をしていない会社のバランスシートは、含み損の分だけ資産が水増しされていることになります。これが企業の信用不安をあおり、日本企業全体のバランスシートへの信頼の低下につながっていました。

本来は強制評価減

販売用不動産は、棚卸資産に分類されます。棚卸資産の強制評価減の規定は、存在していました。企業会計原則第三 貸借対照表原則五A 但し書
「時価が取得価額より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない」

見送られてきた理由
販売用不動産の強制評価減が徹底して行われなかった理由として、次のような不動産特有の事情、強制評価減の規定の問題があったと思われます。

1.「著しく下落したとき」とは、どの程度か明確に表示されていない。
2.回復する見込みがあれば強制評価減の適用の必要はないとされており、地価はいずれ回復するだろうとの期待から適用してこなかった。
3.不動産の場合、時価の算定が容易ではない。

強制評価減の徹底

2000年7月に日本公認会計士協会から「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」 (公認会計士に、監査先の強制評価減の適用を徹底させる)が公表されました。

1. 「著しい下落」の判断基準 ⇒ 「おおむね50%以上」
2.「回収する見込があるか」の判断基準
下落した時価が「相当の期間内におおむね取得価額以上となる見込がある」かどうか。
⇒ すでに50%以上 下落している販売用不動産の時価が、相当の期間内に取得価額までに戻る。
3. 時価の算定方法

などが明記されています。

2004.03/16

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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