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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

相続時清算課税制度利用の留意点と設例

 今回は、相続時精算課税制度について、ちょっと分かりにくい、ちょっと留意しておいた方がいいなぁ、という点について、お話ししたいと思います。本文では、設例を用いてわかりやすく解説していきます。

相続時精算課税制度の留意点
 相続時精算課税制度は、税制改正の大きな目玉です。例えば、父から不動産2千5百万円の贈与を長男が受けた場合に、従来からある110万円控除を利用して贈与税を支払うという方法に加えて、相続時精算課税制度を採用して非課税枠を2千5百万円まで拡大するという選択肢が増えました。
 この精算課税制度を採用するためには、贈与を受けた翌年の3月15日までに、この制度を採用することの届出書を提出しなければなりません。この制度を採用して、すでに2千5百万円の非課税枠を使いきってしまった後に、さらに贈与を受けた場合は、2千5百万円を超える部分に対して一律20%の税率で課税されることになります。
  したがって、翌年110万円の贈与を受けた場合には、22万円の贈与税の支払いが必要だということです。これは、長男が父との間で相続時精算課税制度をいったん採用しますと、父が亡くなるまで相続時精算課税制度が継続するということになっているからです。この点については、特に留意をしていただきたいと思います。
 相続時精算課税制度を一度採用すると、110万円控除制度に変更することは、父が亡くなるまでできないということです。
 この選択は、父・母ごとに選択できますので、例えば、母については110万円控除を使って、ずっと贈与を続けていた、それで何年かたった後に、母から大きな贈与を受けることになった。すでに110万円控除で10年ほど贈与を続けていて、1千1百万円の贈与を受けていた、というような場合でも、110万円控除から相続時精算課税制度への移行は可能です。110万円控除制度から相続時精算課税制度へ移行した段階で、2千5百万円の非課税枠を使うことができます。

設例(前提)
 母が財産を所有しており、父はすでに何年か前に亡くなっているというケースを想定します。子供は長男と長女の2人とします。相続財産は9千万円で、母と長男家族で住んでいる土地・建物が3千万円、それから駐車場にしている土地が3千万円、合計土地・建物は6千万円します。また、現・預金が3千万円あるとします。この場合に相続財産は9千万円ですから、母が亡くなったときの相続人は長男と長女の2人ということで、相続税の計算上は、(5千万円+1千万円)×2人=7千万円の基礎控除ということになります。2人が相続人ですから、相続財産9千万円を2人で分けて、基礎控除を引いた残りは、1千万円ずつに対して課税されるということになりますから、1千万円の部分については、税率1割で、2人が等分に財産を分けた場合には、百万円ずつの相続税ということとなります。2人とも何も対策をしていなければ、相続税は百万円ずつということです。

パターン1
 こういう前提のもとで、まずパターン1として、長男と一緒に母が住んでいるので、相続時精算課税制度を利用して、長男へ、3千万円の土地・建物を贈与した場合を考えてみます。そうすると、3千万円の贈与ということですので、2千5百万円を差し引き、差額5百万円の20%、すなわち百万円の贈与税を納めるだけで、母名義になっている土地・建物が、長男の名義になるということです。それで何年かたって今度は母が亡くなったという時には、またその亡くなった時に、財産の評価額が贈与した時と一切変わっていなかった、とした場合には、相続税額は、長男については百万円、子供が等分に贈与した財産を持ち戻して、等分に相続したと考えると、長男の相続税は百万円ですが、すでに贈与税を百万円支払っているので、長男については、課税はないということとなります。一方、長女については、相続税百万円を支払うということです。
 したがって、税金の計算上は、なんら増減がないということとなります。しかし、長男にとっては、長く慣れ親しんだ不動産も、母が亡くなる前から贈与を受けて、自分の物となっているということによる安心感とか、相続の時に、この土地・建物を含めてどう分割するのかといことを、争わなくてよいという安堵感はあると思います。

パターン2
 これに対して、パターン2では、生前の相続時精算課税制度を使わずに、土地・建物を、毎年長男に、共有持分で110万円ずつ10年間贈与を実施したという場合を考えてみます。
 パターン2においては、贈与を10年間実施しましたので、110万円×10年の1千1百万円の財産が長男の子に移っています。(これは長男であれば直近3年間の贈与は、相続財産に持ち戻すことになっているためです)長男の子に1千1百万円移っていますので、相続財産は、9千万円から1千1百万円を引いた7千9百万円ということとなります。
 この7千9百万円を長男が3千4百万円、長女が4千5百万円取得したとすると、長男は38万7千円の相続税、長女は51万2千円の相続税が課税されるということになります。
 すなわち、相続税は、110万円贈与を続けることによって、このケースでは10年間で約半分ほどに減ったということがいえます。
 したがって、110万円の贈与を使うのか、相続時精算課税制度を使うのかは、相続財産の全体がいくらくらいあるのか、また、どのような形で連年贈与を続けるのかということをよく考えてから決める必要があります。

2004.05/18

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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