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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

痴呆になったら、預金の出し入れを誰に依頼するの?

 平成12年4月1日から、介護保険制度とともに、新しい成年後見制度がスタートしています。少子・高齢化社会にとっては、無くてはならない制度です。何回かに渡って具体的な説明をしていきたいと思います。

任意後見制度とは?
 日本は今、世界でも稀に見る少子・高齢社会に突入しつつあります。子供がいない、あるいは、子供がいるが遠隔地に住んでいるというような方が、今後どんどん増えていくと予測されます。人は年を取れば次第に物事を判断する能力が衰えていきます。時に、老人性痴呆と言われるような状態になり、例えば、不動産のリニューアル、家賃の入金のチェック、年金を受け取っていたのか、固定資産税を支払ったのかなど、不動産管理業務や預貯金の出入りなど日常生活に関わる重要な物事について、適切な処理をする事ができなくなる場合も考えられます。病気などが原因となり、同じ状態となる事も考えられます。
 そんな時の為に、財産の管理や医療契約、施設への入所など、身上に関する事柄を自分に代わってやってくれる人をあらかじめ選んでおくと安心です。年を取るにしたがって、自分の判断能力が低下したり、物忘れが激しくなったり、あるいは、若い時には簡単に郵便局や銀行に歩いて行けたのに、毎月の入出金のチェックに行くだけでも大変になります。
 信頼のおける人が、自分に代わってそのような入出金のチェック、あるいは、アパートの家賃を延滞している先に対しての内容証明を出すなど、弁護士さんと相談して善処してくれる、というような人、このような仕事をしてくれる人(これを任意後見人と言います)を定めて、行ってもらいたい業務をあらかじめ契約によって依頼するのが、任意後見契約というものです。

任意後見契約はどのようにして結んだらいいのでしょうか?
 「任意後見契約に関する法律」によって、任意後見契約を結ぶ時は必ず公正証書で行わなければいけません。すなわち、公証人さんの立ち会いのもとに、以下のような業務を契約するわけです。
・年金のチェック
・固定資産税の支払い
・クロス張り替え
・外装の塗り替え
 (リフォーム作業の見積もり、選定、作業管理)
・家賃滞納者への督促(一定の期間経過後、内容証明の送付)
 項目をきっちりと決めて、公正証書で依頼をしたい方と当人が契約する事になります。
 その理由は、法律的な仕事に深い知識と経験を持っている公証人が関与する事により、当人がその真意に基づいてこの契約を結ぶものである事や、契約の内容が法律に適ったものである事を、制度的に確保し、保証するために公正証書で交わさなければならない事になっています。

 公正証書で契約をするとなると、何か大袈裟な事のように、また、非常に費用が高いのではないかと思われますが、そんな事はありません。費用もこの制度を普及させるという目的がある為に、高い値段ではありません。また、専門の公証人が関与した契約が結べますので、非常に安定したものとなります。

任意後見契約を公正証書で作る場合には、どのくらい費用がかかりますか?

 公証人に支払う費用は、1件につき以下の額になります。
● 公正証書作成の基本手数料・・・11,000円
● 登記嘱託手数料・・・1,400円
● 登記所に納付する印紙代・・・4,000円
 その他、当人らに交付する正本等の証書代、登記嘱託郵送用の郵送代等が必要になります。
 従って、2万円弱の費用でこの任意後見契約公正証書を作る事ができるのです。

この契約の内容は、契約を結ぼうとする者が自由にきめられるのでしょうか?
 自由に決められます。例えば、誰を任意後見人として選ぶのか、また、その任意後見人にどのような仕事をしてもらうのか、ということも自由に決めることができます。例えば、当人に判断能力がなくなり、徐々に痴呆の状態も進行していくというような過程の中で、その先にはご葬儀という事も出てきます。ご葬儀をしてもらうのはこのお寺さんにして欲しい、このお寺さんでしてもらって永代供養もしてもらいたい、ご葬儀にあたってはこの会館でして欲しい、それからご葬儀にあたってどういう方に連絡をして欲しいなど、細かい事まで具体的に任意後見人と話し合います。経験豊富な任意後見人にお願いすることもそうですが、具体的内容をきっちり決めておく事が重要です。

任意後見人は身内の人でもなる事ができますか?
 法律が任意後見人としてふさわしくないと定めている条件に当てはまらない限り、成人であれば誰でも任意後見人になる事ができます。本人の子供、兄弟姉妹、甥・姪などの親族や、親しい友人でも構いません。ただし、ある程度任意後見制度に詳しい人に相談してから、任意後見人を選ばれるのがよいと思います。
 法律的には、通常の成人であれば誰でもなる事ができるのですが、実際には、任意後見人は本人がほとんど判断能力がなくなった場合に、金銭の出し入れ、それから当人が亡くなった場合には、遺産の整理業務などをする場合もあります。
 例えば、お子さんの誰かが任意後見人となっていた場合については、本人さんが亡くなった事により、その任意後見人の方が相続人の一人になる場合も考えられます。
 従って、任意後見人にどのような仕事を依頼するのか、また相続が起こった後の遺産整理業務も依頼するのかというような点をよく考えて、法律に通じ、相続・譲渡等の税務問題を解決できる税金知識がある第三者を選任される例が多いようです。

任意後見人は一人しか頼めないのでしょうか?
 信頼できる方がおられて、その方が法律にもある程度詳しく、また税務知識があるという方がおられるとしても、お一人だけを後見人に決めておく事は、非常に危険な場合も出てくると思います。
 というのは、交通事故や病気などのリスクがあります。若い方を任意後見人に選んでいても、その方が先に亡くなったり、痴呆状態なられたりということも考えられます。ですから、複数の任意後見人を依頼されるというのがよいと思います。
 例えば、50代の経験のある行政書士さんとか司法書士さんと、それから30代の不動産に詳しいファイナンシャル・プランナーの方、また、30代の税理士さんや司法書士さん、複数で専門家集団に一括して任意後見契約の後見人になっていただくようなやり方が、当人にとって一番望ましいのではないかと考えています。
 また、複数の方がその内容を分担する事も考えられます。専門家が専門分野に特化して当人のために後見するシステムです。

2004.06/01

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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