大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ ≫ 代表者の行為と認定されがちな会社名義の寄付金

公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

代表者の行為と認定されがちな会社名義の寄付金

神社や学校等へ会社が支出した寄付金であっても、代表者個人が負担すべきものであるとして寄付金と認められず、その結果役員賞与として課税されるケースがあります。
今回はこの寄付金について検討したいと思います。

損金経理できる会社名義の寄付金
事例1:神社・仏閣に対する会社名義の寄付
ある会社が、地域の神社の改築のために寄付し、その寄付金を損金経理しました。ところが、税務当局は、この寄付金は代表者個人の役員賞与にあたるとして課税処分しました。この事例の背景と、処分の理由は次のようなものでした。

1神社改築の寄付の要請が、代表者個人に対してなされていたこと
2代表者は、氏神崇拝の念が強く、寄付を行う充分な動機を持っていたこと
3代表者への寄付要請に対して、代表者は会社の取締役会に諮ることなく自身の意向で寄付を決定したこと
4受入側の神社は、寄付が代表者からの寄付として受入処理をしていること
5改築後、神社側は代表者に対し顕彰したが、代表者はそれを受入れたこと

事例2:社長の出身校に対する会社名義の寄付
ある会社が、社長の出身校である高校の創立記念行事に対して寄付をし、地方公共団体に対する寄付金として全額損金経理しました。この支出は以下のような理由により寄付金に該当すると思われます。

1毎年相当数卒業生を入社させている高校である
2会社名義とは別に、社長個人名義でも寄付をしている

事例1・2で、損金経理ができるかどうかのポイントは、会社と支出先との固有の関係から寄付金を支出すべき合理的な理由があるかどうかです。
事例1は個人が主体で寄付が行われており、「会社と神社との関係」より「社長個人の動機」が重視されているのに対し、事例2は「会社と学校との関係」が重視されており、会社と個人を明確に区分しています。

寄付金とは?

寄付金の特徴
税務上、寄付金になるものには次の13に掲げる特徴があるので、これらが寄付金になるかどうかの判断の基礎となります。

1経理上の勘定科目は関係がない
税務上寄付金に該当するかどうかは会計上の勘定科目とは関係ありません。どのような勘定科目で処理されていても、税務上寄付金と考えられるものは寄付金に含める必要があります。
2金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与である
以下に寄付金の最も基本的な態様を3つ掲げます。
(1) 金銭の贈与
法人が金銭を無償で他人に与えた場合、その金銭の額に相当する金額が寄付金となります。
(2) 金銭以外の贈与
法人が金銭以外の資産を無償で他人に与えた場合、その資産の価額相当額が寄付金となります。
(3) 経済的な利益の供与
法人が本来収益すべき役務の提供を無償で行った場合、提供した役務の価額相当額が寄付金となります。
3その支出は、事業と直接関係がなく、かつ、対価の授受なく行われる

類似費用との区分
1.交際費と寄付金
交際費と寄付金については判断に迷うこともしばしば生じますが、この両者を区分するのは次の二点になると考えられます。
1反対給付(見返り)があるかどうか。
2相手方がその会社の事業と関係があるかどうか。
交際費については接待等をすることにより相手方の歓心を買い、後日、事業上の見返りを期待することが多い。
これに対し、寄付金については当方から相手方に対する一方的なものであり、反対給付を伴うことは少ない。

2.給与と寄付金
法人の役員又は使用人に対し法人が金品を贈与したり、又はこれらの者が負担すべき寄付金を法人が負担した場合には、寄付金ではなく給与とされます。前述の事例1にあたります。
役員への給与に該当する場合には、その支出は臨時であると考えられるので、役員賞与として全額損金には含められず、また法人としては源泉徴収税の徴収が必要となります。

 

おわりに
寄付金は、交際費と違って反対給付を伴わない金銭の支出です。しかし、「社会通念上、何のためにこの支出がなされるか。」を検討する必要があります。
最近では、企業倫理が重要視されており、企業の社会への貢献も重要です。そのような中で不可欠な「寄付金」の認識を誤ると納税額にも大きな影響を与えることになりますので慎重な処理を行う必要があります。

2006.12/19

関連記事

友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
詳しいプロフィールはこちら ≫

お問い合わせ
株式会社トータル財務プラン
友弘正人公認会計士事務所
〒651-0087 神戸市中央区御幸通3丁目1番8号 ライオンズ 三宮ビル2階
TEL:078-221-7711 FAX:078-221-7717 https://topp.co.jp/