景気悪化にともない、ゴルフ会員権の相場が下落しています。資産価値が下がったと嘆くばかりでは能がありません。ピンチをチャンスに!
今回はそんな含み損を抱えたゴルフ会員権を使った節税策です。
はじめに
バブル崩壊後、ゴルフ会員権は大幅に下落しました(表 I
参照)。手がとどかなかった会員権も少し無理をすれば購入することができるようになったため、ここ数年ゴルフ好きの個人の方は会員権を購入されました。ところが、今回の世界同時不況で、再びゴルフ会員権相場は下落基調にあります(表
II 参照)。今回はその会員権を損切して節税に役立てようというご提案です。
売却損益は総合課税
個人の税金である所得税において、資産を売却(譲渡)したときは原則として譲渡所得として所得税の対象となります。譲渡所得は、売却(譲渡)した資産の種類により課税関係が異なりますが、ゴルフ会員権の売却に限っていえば「総合課税」といって売却損益は他の所得と通算することになります。従って、売却損が生じた場合は他の所得から差し引くことができます。例えば、サラリーマンの場合では給与所得からその損を差し引くことができます(図
I 参照)
どれ位所得税額は減りますか
では、どれ位所得税の金額は減るのでしょうか?
図 II
のAさんの例では、ゴルフ会員権を売却する前の所得税は約93万円でしたが、ゴルフ会員権の売却損の損益通算後では9万円にさがります。給与所得がより多く、税率が高い方はより税額軽減の効果があることになります。
また、譲渡損を退職所得から差し引くことも可能です。退職金に税金がかかり、退職後の収入が大幅に減る方は、退職年における退職金との通算は効果的ともいえます。
なお、損益通算しきれなかった損失金額は、青色申告者(サラリーマンの方は残念ながらダメです)の場合、3年間繰越すことができます。
資産の組み換えの効果も
ゴルフ場の運営会社が倒産した場合、ゴルフ会員権は紙くず同然となります。しかし、倒産したゴルフ場の会員権を売却してもその売却損は譲渡所得に該当せず、従って、その損失は他の所得と損益通算することができません。要するに、ゴルフ場が倒産してしまってからでは先に述べた節税効果は得られないことになります。
いま、優良なゴルフ場の会員権もやはり値下がりしています。譲渡損を出して税金を軽減しつつ、優良なゴルフ会員権(に限りませんが)に乗り換え、資産内容を向上させてみてはいかがでしょうか?
所得税は1月1日から12月31日までの期間で計算しますので、年末を見据えて、会員権相場の動向・その年の所得などの状況・名義書換料などの諸費用をもあわせて、慎重に検討してください。
最後に
財務省では、ゴルフ会員権はぜいたく品であるとして、その売却損と他の所得との損益通算を廃止の方向で検討中といわれています。その動向には注視していきたいものです。