平成21年も押し迫ってきました。この時期、火災や盗難の被害が増加します。もし、そんな被害にあってしまったら・・・。
今回は、そんな場合の所得税での救済措置についてです。
【1】はじめに
「雑損控除」という言葉は聞き慣れないですが、台風・火災などで住宅や家財に損害が生じたり、盗難や横領にあったときは、医療費控除と同じように所得税額の計算上、その損失のうち一定の金額を所得金額から引くことができ、これを「雑損控除」と言います。
【2】損失の発生原因
災害、盗難・横領により生じた損失ですが、詳しくは図表1をご覧ください。 なお、盗難による損失(盗難に際し生じた破損等も含む)や、シロアリ(害虫)による損失も含まれます。
原因 | 備考 |
災害 |
I. 自然現象の異変による災害(風水害・震災・雪害等) II. 人為災害(火災・爆発事故等) III. 生物による災害(害虫・害獣等)・・・シロアリ被害 |
盗難 | 詐欺または脅迫による損失は含まれません・・・振り込め詐欺の被害はダメ!! |
横領 |
【3】対象となる資産の範囲
雑損控除は本人やその家族が保有する生活に必要な財産について生じた損失について適用ができます(図表2参照)。従って貴金属・書画・骨董などは対象外となります。
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区分 |
具体例 |
備考 |
控除を受けられる資産 | 生活に通常必要な財産 |
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納税者またはその控除対象配偶者・扶養親族が保有している資産に限る |
控除を受けられない資産 | 生活に通常必要でない財産 |
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生じた損失は譲渡所得から控除可 |
事業用資産 |
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生じた損失は事業所得等の必要経費算入可 |
【4】雑損控除額の計算
図表3をご覧ください。まず、資産の損害金額は時価ベースで計算することに注意してください。図表3のIと II のどちらか多い金額が控除額になりますので、最低でも「災害関連支出の金額―5万円」が雑損控除額となります。
【5】繰越控除
雑損控除をその年の所得金額から引き切れない場合は、その引き切れない金額は3年間繰越することができます。
【6】必要書類
雑損控除を受けるためには、確定申告を提出する必要があります。 その際、災害関連支出についての領収書、住宅や家財の資産の損失額を計算した書類等(場合によっては被災証明書、盗難証明書等の写し)を添付する必要がありますので領収書等の保管には注意してください。
【7】他の規定との関係
災害の程度や不動産賃貸業の規模により次の規定を適用することもできます。
I
.災害により住宅や家財に著しい損害を受けた場合・・・
「災害減免法」による所得税の軽減・免除措置を受けることも可能です。
II.不動産賃貸業で所定の規模(5棟10室未満)であって、その貸家に災害損失が生じたとき・・・
不動産所得の計算上、その損失額を必要経費に計上することも可能です。
I
・IIとも、雑損控除と比較して、どちらか有利なほうを選択することができます。
【8】最後に
雑損控除は対象となる資産、その計算方法や有利な方法の選択にかなり専門的な知識を要します。資産の損失が生じた場合は、税理士や税務署員などの専門家にまずご相談をお勧めします。
なお、残念ながら「振り込め詐欺」によりだまされた場合の損失は、雑損控除の適用はできません。