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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

相続の現場より ~相続の問題事例と相続対策の提言~

 

【1】はじめに
「争族」問題の中で最近特に多いのが「不動産」に関するトラブルです。不動産に関してはいかに事前に相続準備を整えておくかがポイントです。
今回は不動産がらみで相続に問題が生じた2つのケースをご紹介します。
また、「資産家様の生の声」や、資産家様へのご提言などをご紹介します。

 

【2】相続で問題が生じた2つの事例

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<概要>

甲氏は代々より地代収入で生計をたててきたが、経営者という意識が薄く、先祖から引きついだ不動産をただ維持しているのみであった。不動産管理会社とは契約せずご自身で不動産を管理しており、地代の遅れがあっても督促せず、借地人も「地代の催促なし」の状況に慣れていた。

<問題点>

1.資産のほとんどが不動産であり納税資金が不足していた。貸地等の物納を検討したが、借地人から強い反発を受け頓挫した。「甲さんは地代の滞納があっても黙って待っていてくれた。所有者が国になれば地代の取り立てもきつくなるし、地代の値上げの恐れもあり承諾できない」とのことで土地の物納は承諾してもらえなかった。
2.以上のことから延納を選択することとなった。(延納は利子税の負担があります)
3.納税資金を作るため短期間で不動産を売却せねばならず、非常に安い売却価格となった。
<ポイント>

1.財産のほとんどが不動産であり資産の分散が出来ていなかった。
2.生前から相続を想定し流動資産(手許現金)を用意しておく必要があった。そのためには生前から不動産の整理をし、不動産の売却等で金融資産を確保しておくべきであった。
3.物納のために生前より借家人、借地人との賃貸契約関係を世間相場並みに整えておくべきであった。(賃料・家賃滞納の際の処理方法・不動産管理会社による管理)

 

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<概要>

1.将来の納税資金確保のため生前に不動産売却を計画。
2.不動産決済手続きを行ったが司法書士による本人の意思確認の際に「今の状態では不動産の決済は無理である」として契約不成立。
3.長男を成年後見人として家庭裁判所に申し立てをおこなったが審判を待つ間に父が死亡。
4.相続後、遺産分割協議により妻が相続したうえで売却をおこなった。

<ポイント>

1.相続申告手続きと売却手続きが同時進行であったため相続人の精神的負担が大きかった。
2.ご本人、相続人の間で「法律行為」に対する認識が不足していた。
(成年後見制度の内容・手続き方法・不動産売買の際における司法書士による本人の意思確認の必要性など)


【3】今、資産家様のみなさんが考えていること

相続セミナーに参加された資産家様に、相続についてお尋ねしたことがあります。その結果をご紹介しましょう。当ページをお読みの皆様の回答はどれに該当するでしょうか?
「資産家様の生の声」をご参考に今後の皆様の相続対策をご検討下さい。


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相続セミナーに参加された方々だけあって、遺言書を作る意思のない方は少数です。大半は遺言書作成の必要性を感じているようです。自筆証書遺言、公正証書遺言など既に作っている方が半数近くを占めています。皆様の遺言書に対するお考えはいかがでしょうか?


私の経験上、保有財産が多い場合や相続人が3人以上の場合、相続人が遠方に住んでいる場合などは「争族」になる可能性が高くなる傾向にあります。「争族」を心配していない方については既に遺言書等でご自分の意思を明確にされておられる方が多いようです。


資産家の方々は日頃から金融機関や専門家のセミナーなどを通じて税理士や弁護士などと接触する機会が多いようです。配偶者や子供等が相続手続きをおこなったものの手に負えず専門家に依頼するケースも沢山あります。 相続手続きはスピードが命。専門家との日ごろからのお付き合いが物を言います。早い段階から配偶者や子供と専門家を引き合わせておきましょう。特にご子息様はサラリーマン層が多く、平日に相続手続きをおこなうのは困難です。土日にかかわらず相談に乗っていただける専門家を探しましょう。


 

 【4】資産家様へのご提言

  1. (1)不動産は今のままの状態でよいのでしょうか?
    1. (ア)売却して金融資産を増やしておく必要はありませんか?
    2. (イ)今のうちから不動産を整備して物納に備えませんか?
    3. (ウ)司法書士や土地家屋調査士とのお付き合いはありますか?
  1. (2)あなたの財産の保管場所を誰かに伝えていますか?
    1. (ア)財産リストを作成し配偶者や子に渡しておく必要はありませんか?
      (ご本人にしか保管場所が分からず、財産が発見されないままのケースもあります・・・)
    2. (イ)貸金庫には何を入れているか相続人の方はご存知ですか?
  1. (3)遺産をどのように分割してもらいたいですか?
    1. (ア)相続税が最も安くなる分割方法を望む
    2. (イ)相続人が全て平等になる分割方法を望む
    3. (ウ)残された配偶者が安心して暮らせる分割方法を望む
    4. (エ)一族の将来を見据えた分割方法を望む
    5. (オ)自分の意思を尊重した分割方法を望む
  1. (4)では、あなたの希望をどのように伝えますか?「遺言書」を作成しておく必要はありませんか?
  1. (5)成年後見制度を活用する必要はありませんか?
    1. (ア)法定後見:認知症などで判断能力が衰えた後に、配偶者や相続人等から申立がなされます。
    2. (イ)任意後見:本人が十分な判断能力があるうちに信頼できる人に財産管理や法律行為について代理権を与える契約を公正証書で結んでおきます。        

【5】最後に

今あなたに出来ることは何ですか?・・何から具体的にはじめますか?

2012.06/05

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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