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中間とりまとめを踏まえた今後の議論の方向性に関する意見

国交省のホームページには『インターネット等を利用した、対面以外の方法による重要事項説明書等について、具体的な手法や課題への対応策に関する検討する場として、この検討会がある』と書かれていますが、消費者や事業者のITスキルや環境を考え、今すぐにでもできる対面以外の方法として、電話での重要事項説明も合わせて検討してほしいと思います。

そもそも、IT化は手段であり、目的ではないはずです。ただし、これらは無条件で認めるのではなく、対面を原則とした上で、消費者の都合により一部の取引で非対面を認め、保護トラブル防止の為にも「ある一定の条件」を付けるべきと考えますが、その条件については、以下に示します。
1.物件を一度も案内していない仲介業者が行う非対面の取引は原則禁止。
これまでは重説を対面で行う必要があった為、遠方から転居する消費者も物件を自ら見て、周辺の環境や町の雰囲気、騒音、匂いなど、インターネットでは提供できない情報を得て、契約を行ってきました。
また仲介業者は、物件を店頭で説明している最中や案内時の消費者の言動から、薬物中毒者や暴力団など既存の入居者に迷惑をかけるような人物ではないだろうかといった観察をしており、仲介業者として、トラブルが発生するような人物ではないと判断された場合に限り、仲介を行ってきました。

こうした業界の慣習は、過去の経験則に基づくものであり、必要不可欠なことであると思います。 よって、物件を一度も案内していない仲介業者が行う非対面の取引は、原則禁止にするべきだと考えます。

また、もし、こうした制限がないと、以下の2つの問題が発生すると考えます。

 1)誤った情報を消費者に伝えたり、取引を行ってしまう可能性  物件を見た事もない仲介業者に非対面の取引を認めると、物件の現状を知らずに、誤った情報を消費者に伝えたり、取引を行ってしまう可能性があります。

ポータルサイトに掲載されている写真は、新築当初の写真であったり、また、図面もリフォーム前の物であったりと、必ずしも現状を示した物ばかりではありません。また第三者が提供した写真は、意図的に不都合な点を隠す事も可能です。よって、自ら現状を確認した仲介業者以外が非対面で取引をした場合には、多くのトラブルが発生することは容易に想像できます。

完成前の新築物件でさえ、住環境を知って頂く為に現地を案内し、設備などの情報を詳細に説明する等、慎重に取引をしています。
そして、慎重に取引をしても、現物を見ていない事により様々なトラブルが発生しているのが現状なのです。
 2)業界のモラル崩壊  例えば、他社で案内を受けた消費者が、その後、非対面による仲介手数料の安さを売りにするネット専業の仲介業者を知り、そちらに流れて取引をした場合、後から案内をした仲介業者が、消費者に対して仲介手数料を請求する事も考えられます。 実際にそのようなトラブルは、現在でも発生しておりますが、実態として、地元の不動産業者同士の場合、そうした姑息な行為は、モラルに反するとして地元業者からつまはじきにされるため、抑制が効きますが、ネット専業業者が東京で大阪の物件を扱うなどした場合は、そうした抑制も効かなくなります。その結果、消費者が2社の仲介業者に仲介手数料を支払う事になる可能性もあります。
2.一度も案内していない仲介業者が非対面で重説等を行う例外

参照:中間とりまとめ P2 2.重要事項説明等におけるIT活用の可能性(メリット) 囲み罫枠内 ポツ4番目

IT活用にとらわれることなく、ニーズとして、非対面による取引を希望する声は確かに存在し、コストや効率の面からも、一部はIT化の活用を含めて非対面の取引を認める検討は必要だと思いますが、私自身、業界を長年みていても、これまでそうした事をせずに大きな不都合が社会に発生している訳ではないと感じており、実験的に例外を認めて段階的に検証するべきだと思います。

しかしながら、その検証においても、IT活用が必須要件になるようであれば、業界のスキルを考えても実効性は難しいと思われますので、ITの活用は必須要件にするべきでないと考えます。
取引主任者証の提示や本人確認については、後段で意見致します。

 1) 外国に居住する者が売買を行う場合は例外とする。  資産売却をする場合や投資家を対象とした例外措置なので、自ら居住することを目的とする場合の購入時には、トラブル回避の為、「必ず一度は物件を確認している」事を前提条件とするべきです。
また、仲介業者自身が「仲介する該当物件を事前に目視で確認」しており、購入者に対して「部屋の現状写真、図面などを重要事項説明書の添付資料として提出する」場合に限定する必要があると考えます。

自ら確認する意味は、「周辺の環境を理解しないで仲介する」事に対するトラブルを避ける為です。
また、第三者が撮影した写真は意図的に不都合な部分を見せない事もできますが、仲介業者はお客様にそのような事をすると自らトラブルに巻き込まれるため、そんな事はしないという性善説で考えています。もちろん、悪質な業者もいますので、その点については、消費者がリスクを負います。

尚、国内の居住者の場合、このコスト削減と比較してリスクが高過ぎますし、トラブルの数が多過ぎて業界団体も対応しきれない事が予測できます。
 2) 賃貸の法人契約の場合は、例外とする。  ただし、仲介業者自身が「仲介する該当物件を事前に目視で確認」しており、重要事項説明書には、「図面と写真を添付資料として提出する」事を必須要件とし、「図面や写真が現状と一致する事を確認」した場合に限定する必要があると考えます。
 3)宅建業者同士の取引は例外とする。  取引のリスクは互いに承知しており、非対面でも問題がないと考えます。
3.借主、買主への重説等は原則対面とする必要性
中間とりまとめには、『ITを活用することで、新たな取引のニーズが掘り起こされるなど、市場を拡大する効果がもたらされる可能性があるのではないか』とありますが、対面による重説等は原則とするべきで、非対面を推奨するような事があると将来的に取引の質が劣化しトラブルが増加すると考えます。

といいますのも、仲介業者は物件を案内する営業担当者に対して、取引主任者の資格を取得する事を推奨しています。
その理由としては、物件を選びだして案内をした担当者が、重説に記載するべき内容や説明するべき内容を誰よりも理解している事により、お客様への説明が適切になされ、トラブルになりにくいからです。

例えば、仲介の営業担当者は物件を説明する為に、契約条件、入居可能日、リフォームする範囲などを消費者に説明します。また、消費者は現地を確認し、リフォームの範囲として、例えば、エアコンも新品になるのか?などの質問をしたりします。こうした点を重説に約束事として記載し、エアコンは入居前に新品に交換されますと記載したり、口頭で説明したりするわけです。

ところが、案内等はせずに、在宅で事務処理をするような係りが重説をする事になれば、現場の状況や消費者のニーズを理解した重説を作成することは難しく、また、重説時に曖昧な返答をしてしまい、トラブルになる恐れすらあります。

現業の流れでは、取引主任者ではない者が営業担当者の場合、取引主任者資格を有する者が説明している横で、借主の質問に対して補完的に説明を行い、重要な点はその場で書き込む等のサポートを行います。また、こうした営業担当者は、自ら説明できない事を恥ずかしく感じ、取引主任者資格を取得できるように努力もします。

対面が原則でなくなると、経営者はトラブル防止よりも新経済連盟が主張されるように在宅などを使い、コスト削減を優先して、案内係りと重説係りのように業務が分断されることは、経営基盤の弱い企業が多い不動産業界であれば、必然の流れになると予測できます。しかし、その結果、取引主任者資格取得率は下がり、更には案内時の説明の質も劣化すると思われます。

以上のような観点からも、現状は対面で行う必要があり、営業担当者に宅建資格を取得させることがコスト削減にも繋がり、取引の質を高める効果があると考えます。
4.非対面の取引におけるリスクの説明書は統一した内容にすべき。

参照:中間とりまとめ P3 3.IT活用を進める場合に検討が必要となる点

非対面の取引において、同意を取り付ける際に不動産業者が故意または過失により、リスクの説明を怠った場合に、関係者が想定していなかったような損失などを受ける可能性がある為、統一された内容のリスク説明を事前に行うべきであると考えます。
5.対面を原則として、「非対面でしか仲介を行わない」という業者を認めてはならない。

参照:中間とりまとめ P3 3.IT活用を進める場合に検討が必要となる点 囲み罫枠内 ポツ3番目

先に挙げたネット専業業者が発生した場合の危惧以外にも、例えば、当初は非対面での重説等でも気にならないと考えていた消費者が、後になって気が変わるという事も十分に考えられます。そうした事も考慮し、非対面でしか仲介を行わないという業態を許可してはならないと考えます。

また、対面を希望した時に別途費用を追加で請求するような選択があってはならないと思います。これは非対面を助長する恐れがあり、また、費用面について消費者が混乱する恐れがあります。現在の携帯電話のような複雑な料金体系は望ましくないと考えます。
6.IT化に限定しない取引主任者の成り済まし防止。

参照:中間とりまとめ P5 (3)取引主任者の本人確認【重要事項説明】

取引主任者の成り済ましを防止する観点でIT化の議論がありますが、消費者の同意は前提条件ですが、重説等を行う前(案内時など)または、後日鍵の引渡し時などに取引主任者証を提示することで良しとするべきと考えます。

対面であっても、成り済ましをしようとすれば、取引主任者証を見る機会の少ない消費者を騙す事は容易であり、また、取引主任者でない者が説明するリスクは消費者よりも業者側にある訳で、成り済まし防止策の為に新たなシステムの在り方などは不要と考えます。
7.成り済ましよりも裏取引の防止。

参照:中間とりまとめ P5 (3)取引主任者の本人確認【重要事項説明】

取引主任者の成り済ましよりも、不動産会社が把握していない中で、担当者が勝手に取引を行うような行為を防止する為に、重説等を非対面で行う場合は、金銭の授受は現金ではなく、必ず銀行振込で行う事を条件とするべきだと考えます。

重説等の説明を消費者が自宅や勤務先など、宅建業者の事務所以外を要望しても、原則は事務所で行う事を社内ルールとする不動産業者も少なくありません。それは、会社を通さず内緒で行う裏取引を防止する為です。その為にも重説はナンバリングしており、会社に内緒で勝手に持ち出して使う事ができないような工夫を不動産業者はしています。

裏取引では、担当者が仲介手数料を着服し、消費者が損害を被るような事が過去に散見されていますので、これらを防止する事を消費者保護の観点から検討する必要があると考えます。そして、こうしたトラブルを防止するには、現金の授受を認めない事がもっとも効果的です。
8.IT化に限定しない消費者本人の確認。

参照:中間とりまとめ P6 (4)消費者の本人確認【重要事項説明】 囲み罫枠内 ポツ2番目

『ITを活用した場合の消費者本人の確認手法について検討する必要がある』と書かれていますが、案内時に対面した上で、契約書に署名・押印を頂けるなら、ITを活用しなければできないような本人確認に頼るべきではないと考えます。

ポツ2で『入居者について本人確認を行いたいとのニーズが実務上大きく存在する』とあるのは、一度も対面することなく、案内もされない状況で非対面で契約する事に対する不安要素を述べているだけではないでしょうか。

取引業者が案内時に対面していれば、本人確認は契約書の署名・押印と契約時に提出される身分証明書で確認できる為、IT化による本人確認は不要だと考えます。

現在、一般的には対面の契約でも住民票や運転免許証のコピー、在職確認や源泉徴収票など、あらゆる形で本人確認をしています。重説のタイミングだけ成り済ましをしたところで、契約者本人にメリットはなく、契約書に一文を加える事で不動産業者側が成り済ましによるトラブルを防止すれば良いと考えます。

その一文には、「重説等の説明を受け、理解した上で契約書に署名しています」というような事を記載するだけで、説明を受けていないから契約は無効だという事態は避ける事ができます。
9.IT化は一つの手段であり、非対面の要件とするべきではない。

参照:中間とりまとめ P7(5)その他の論点【重要事項説明、書面交付の両方】 囲み罫枠内 ポツ3番目

(その他)に書かれていますが、『テレビ電話によらない他のツールを用いた重説等のあり方』として、ITを活用した重説等の書面交付が本件の議題ではありますが、ITならOKで、電話やFAXでは非対面の要件を満たさないというような事がないように検討が必要です。

書面交付のIT化には、例えば、物件の案内時に取引主任者証を提示し、後日、書面等を郵送やFAX、メールに添付された書面等を消費者が自ら印刷して、電話で説明を受けてから、署名・押印するような事も想定するべきと思いますので、今回の非対面に電子署名など、既存の環境には無い仕組みを要件とするべきではないと考えます。

対面で説明する場合とカメラで互いを見ながら説明する場合、また、電話で説明する場合では、多少の理解のし易さに差はあるかもしれませんが、理解の結果が違うほどの差はありません。説明に少し時間がかかったりするだけの事だと思います。

もし、IT化であればOKで上記のような場合は不可だとなれば、その違いについて理解できる説明が不動産業界にできない以上は実施するべきではないと考えます。
10.共同仲介の非対面による重説等は、当面禁止にするべき。

参照:中間とりまとめ P8(5)その他の論点【重要事項説明、書面交付の両方】 委員からの意見 ポツ3番目

共同仲介の場合は、重説等の解釈をめぐり、その場で議論したり、書面を変更したりする事もあることから、現時点では非対面での取引にはそぐわないと思います。
その為、一定期間、非対面によって発生するトラブルなどを検証した後に検討すれば良いと考えます。
11.サブリース物件の議論は、この検討会の目的にそぐわない。

参照:中間とりまとめ P8(5)その他の論点【重要事項説明、書面交付の両方】 委員からの意見 ポツ10番目

『サブリース物件は、重説義務がない。かなりの数の賃貸物件は、重説義務がないまま契約が行われているという実態もあり、この把握も必要』とありますが、国交省がこの事を把握する事に対しては異論はありませんが、この検討会の目的に照らして考えれば、ここで議論する事ではないと考えます。

この検討会は、宅建業法上の重説等を対面以外で行う為にITを活用できないかと検討しいている場であって、宅建業法上、重説の義務がないサブリース物件について、考慮したり、検討する場ではないはずです。
もし、国交省が必要だと考えるのであれば、サブリース業を行う為に宅建事業者である事を要件にする検討から始める必要があり、これは、ITの専門家など門外の方を交えて議論するのではなく、法律家や業界団体や免許を出す都道府県などと議論する事項だと考えます。
12.医薬品や金融商品とは違う宅建主任者の不動産業界における役割。

参照:中間とりまとめ P10 4.取引類型からみた検討の方向性 ポツ7番目 

『賃貸契約では、契約をそれほど重視しない者や、入退去時の立ち会いを行わない者も一定割合おり、これらのような者にはIT活用の場面はあるのではないか』とありますが、不動産は、二つとして同じ物はなく、住環境を含めてITだけでは、提供できない情報が多くあります。

医薬品や金融商品の重要事項を説明する場合は、あらかじめ商品の勉強をしてから重説を行う事ができますが、新築のマンション等を除き、不動産は予め勉強して物件の説明をすることはできません。なぜなら、同じ物件は二つとしてないからです。

新経済連盟が2013年11月14日に発表されている資料を見ると、在宅勤務を希望するニーズにマッチするとありますが、物件を案内し、取引の条件を自ら確認した営業担当者が自宅で行うなら問題はありませんが、別の者が在宅で説明をするのは困難です。

仮に現時点でできたとしても、こうした事を認めると、取引主任者資格を取得する率は下がり、取引の質は下がります。
これでは、不動産業者の取引の質を上げて、トラブルを防止する為に、取引主任者を5名に1名必要であるとしてきたこれまでの考え方に大きく逆行してしまいます。

また、非対面を原則にして、しかも、在宅でも可能等とすると、今以上に免許貸しが横行することは、業界の実態を知るものであれば、これも容易に想像できると思います。