大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ ≫ 定期同額給与と事前確定届出給与の支給時期と届出期限

公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

定期同額給与と事前確定届出給与の支給時期と届出期限

【はじめに】
「定期同額給与」と「事前確定届出給与」に関しては、前回「役員給与の損金不算入に関する質疑応答」の記事でもご紹介しました。今回は基本をおさえておく意味も含め、改めて、全体を整理してまとめられた記事をどうぞご覧ください。

リプロス編集部


平成18年度の改正法人税法では、役員賞与の損金不算入規定が見直されました。この改正により「定期同額給与」に該当しない臨時的な給与であっても「事前確定届出給与」については損金算入を認められることになりました。中小企業においては、「定期同額給与」と「事前確定届出給与」は重要な改正項目であり、支給時期など注意する点があります。今回は、この2つの制度について説明していきたいと思います。

役員給与の損金処理の改正
法人税法はこれまで、役員給与を報酬、賞与、退職給与と区分して、報酬と退職給与については不相当に高額な部分を損金不算入とし、賞与については原則として全額損金不算入とされていました。 平成18年度の法人税法の改正により、これら役員給与の報酬、賞与及び退職給与を一つにまとめた上で、1定期同額給与、2事前確定届出給与、3利益連動給与と3つに区分して、不相当に高額ではない限り損金算入できることになりました。そしてこれらの13に該当しない役員給与の額を損金不算入とすることになりました。

◆役員給与の損金算入範囲の概要
1定期同額給与
支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずる給与。


2事前確定届出給与
その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、一定の要件を満たすもの。


3利益連動給与
同族会社に該当しない法人がその業務を執行する役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算定される給与で、一定の要件を満たすもの。

定期同額給与の支給時期

1.これまでの役員報酬との違い
役員給与の支給額を期中に増額する場合には、当該事業年度の開始の日から3ヶ月以内に行わなければなりません。3月を経過して事業年度の中途において定期給与の額を改定した場合には、原則としてその事業年度における定期給与の支給額の全額が、定期同額給与には該当せず、損金不算入となってしまいます。

ただし、定期給与の額について事業年度の中途の増額改定があった場合でも、増額後の各支給時期における支給額も同額であるときは、従前からの定期同額給与とは別個の定期給与が上乗せされて支給されたものと同じとみなされるため、上乗せ支給された定期給与とみられる部分のみが損金不算入になります。

なお、支給額を減額する場合においては、経営状態が著しく悪化したことなど相当の理由がある場合に限り3月を経過していても認められます。なお、その場合には、一度減額してからもう一度同じ事業年度の間に引き上げてしまうとその差額分は損金不算入となります。

2.定期給与の増額改定に伴う一括支給
定時株主総会で役員給与の支給額を改定することを決議し、差額分を一括支給するような場合はその差額分は損金不算入となります。
例えば、3月決算法人が6月末の定時株主総会において役員に対して支給する定期給与について4月に遡及して増額することとした場合の増額分の一括支給については損金の額に算入できません。

事前の届出による損金算入
「定期同額給与」に該当しない役員給与であっても、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」で「政令の定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与」は、「事前確定届出給与」として損金の額に算入することとされました。

要するに、法人が事前に定めた支給内容を税務署に届け出た場合には、臨時的に支給される役員給与であっても損金算入を認めるということです。

事前確定届出給与とは?
事前確定届出給与とはどのような給与かというと、その役員の職務について所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(1定期同額給与、3利益連動給与を除きます)でその給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までに、所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項を記載した届出をしている場合のその給与をいいます。

したがって、事前確定届出給与を運用するには、まず、その役員の職務につき「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を定めて、さらに、所定の事項を記載した書類を所轄税務署長へ届出をし、その後、職務の執行の開始、という順序になります。

◆職務の執行を開始する日とは

事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日がいつであるかについては、一般的には、定時株主総会の開催日とされています。したがって、定時株主総会の開催日と会計期間3月経過日のいずれか早い日が届出期限となっています。
 

teikidogakukyuyo_hyo1.jpg


疑問点とその活用
事前確定届出給与は、文字どおり事前に支給金額と支給時期を確定させ、その届出をした場合に限り、その確定額を損金算入するものです。

この届出額というのは、支給の「限度額」ということではありません。したがって、届出額を上回る額を支給した場合にはその支給した金額全額が損金不算入となります。また逆に届出額を下回る額を支給した場合にも、その支給額の全額について損金不算入となっています。

この「事前確定届出給与」は不動産賃貸業などを経営されている場合に、ある程度の収入や経費が予測でき、利益の予測が立てやすいときには、活用することができる可能性があります。

なお、この「事前確定届出給与」の届出の記載方法や期限については複雑になっていますので、専門家に相談することをお奨めします。

2007.04/03

関連記事

友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
詳しいプロフィールはこちら ≫

お問い合わせ
株式会社トータル財務プラン
友弘正人公認会計士事務所
〒651-0087 神戸市中央区御幸通3丁目1番8号 ライオンズ 三宮ビル2階
TEL:078-221-7711 FAX:078-221-7717 https://topp.co.jp/