3月1日より売買契約の締結またはその代理・媒介を行うとき、宅建業者に本人確認や記録の作成・保存、疑わしい取引の届出が義務付けられることとなった。これは昨年3月末成立の犯罪収益移転防止法に基づくもので、マネーロンダリング(犯罪資金の洗浄)の防止が目的。既に金融機関には義務付けられており、今回38業種に拡大された。具体的な義務は次の4つ。
1.本人確認
契約締結のとき、運転免許証等の公的証明書で本人
特定事項を確認する。個人なら氏名・住所・生年月日。
法人なら名称・本店または主たる事務所の所在地。
宅建業者が2社介在し、それぞれ売主側・買主側の
片方の代理・媒介であることが明確なら、その一方
のみの確認でよい。なお、法人取引や代理人取引は、
現に取引の任に当たっている個人と法人(依頼人)の
それぞれについて本人確認が必要。
2.本人確認記録表
本人確認を行ったのち直ちに本人確認記録表を作成し、
契約締結時から7年間保存しなくてはならない。記録表
の様式・書式は任意。
本人確認の方法や本人確認記録表の作り方等はこちら
http://www.enecho.meti.go.jp/policy/mineral/data/m03_4.pdf
3.取引記録表
契約締結後直ちに取引記録表を作成し、その日から7年間
保存しなくてはならない(宅建業法で既に義務付けられている
帳簿でよい)。つまり、宅建業法上の帳簿の保存義務は5年だが、
売買については7年間となる。
4.疑わしい取引の届出
契約締結に至らなくても(例えば物件を案内しただけでも)、
疑わしい取引に該当する場合は宅建の免許権者宛(国土
交通大臣免許の場合は所管の地方整備局)にその旨を届
けなければならない。
疑わしい取引があったときの届出方法はこちら
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/horei/strcls.pdf
<疑わしい取引の参考事例(抜粋)>
(1)現金の使用形態に着目
・多額の現金で宅地建物を購入
・短期間で複数の宅地建物を現金購入
(2)真の契約者を隠匿している可能性に着目
・申込書、重説書、契約書等に異なる名前を使用
・顧客の住所と異なる連絡先に関係書類の送付を希望
(3)取引の特異性に着目
・宅地建物の購入後、短期間で売却
・売り急ぎ等の異常な取引
(4)契約締結後の事情に着目
・合理的理由のない決済期日延期の申し入れ
(5)その他
・公務員や会社員の収入に見合わない高額取引
・顧客が取引の秘密を不自然に強調
・暴力団員、暴力団関係者に係る取引
・不自然な態度、動向等が認められる顧客に係る取引
「疑わしい取引の参考事例」全文はこちら
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/fudousan/11guideline.pdf
以上に違反しても直ちに罰則を課されることはないが、是正命令違反や、報告義務の拒否などについては罰則規定が設けられている。是正命令違反は2年以下の懲役、もしくは3百万円以下の罰金、又はその併科(法人に対しては3億円以下の罰金)。報告徴求や立入検査の際の質問拒否及び虚偽報告、妨害及び忌避は1年以下の懲役もしくは3百万円以下の罰金、又はその併科(法人に対しては3億円以下の罰金)。
情報提供:財団法人日本賃貸住宅管理協会
財団法人日本賃貸住宅管理協会