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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

マンスリー契約における法律上の注意点について

マンスリー契約における契約方法
 アパート又はマンションの一室を、月単位で短期的に賃貸する所謂マンスリー契約が、現在盛んに行われておりますが、マンスリー契約を行うにあたっては、契約方法として、定期建物賃貸借契約による方法と、一時使用目的賃貸借契約による方法があります。
 まず、定期建物賃貸借契約による場合には、定期建物賃貸借契約の要件である1公正証書等の書面によって契約しなければならない(38条1項)、2契約の更新がないこととする旨を定めなければならない(38条1項)、3賃貸人があらかじめ書面を交付して定期借家権の説明を行ったこと(38条2項)が必要となります。特に、契約期間が終了した際に更に引き続き物件の使用を賃借人が希望する場合には、再契約を行う必要があり、再契約時にも上記要件を備える必要がありますので、定期建物賃貸借契約方式を用いる場合には、その点について十分注意する必要があります。

 次に、一時使用目的による契約方法を使用する場合には、一時使用目的の賃貸借契約が、一時使用の為に建物を賃貸借したことが明らかな場合には、借地借家法26条から39条にの全ての規定の適用が排除される(借地借家法30条)こととなるため、普通賃貸借契約と比べて賃借人に不利な契約であることから、一時使用目的であるかどうかは判例上も厳しく解釈される傾向にあります。そして、一時商目的の賃貸借契約の要件としては、1一時使用のために契約したこと、すなわち、当事者双方の動機、賃料の多寡、権利金等の金銭の授受の有無、賃借人の使用目的・使用状況、契約期間の長短、更新の有無、建物の種類・項贈答の諸要素を総合的に考慮して、通常の賃貸借と異なる一時使用の特別の合意があったと客観的に認定されることが必要であり、2一時使用の目的が客観的に明らかであること、すなわち、一時使用と認められる客観的事情が存在し、かつ、これを契約書に明記しておくことが必要であると認められることが要件となります。したがって、マンスリー契約を一時使用目的の賃貸借契約による方法で締結しようとする場合には、契約書に契約期間が短いだけでなく、一時的な居住に過ぎず借地借借家法の適用の排除される一時使用目的であることを明記する必要があります。また、更新または契約期間の延長についても普通建物賃貸借契約と異なり厳しい条件の下で許すような定め方が望ましいと考えられます。

旅館業法との関係
 最近、旅館業法の適用のある週を単位として宿泊させるような契約方式もあるため、マンスリー契約にも旅館業法の適用があるかどうかという点が大きく問題とされております。
 この点、旅館業法に定める「人を宿泊させる営業」とは、アパート等の貸室業との関連でみると、

1施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者の居る部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあるものと社会通念上認められること
2施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として営業しているものであること

 の二点を条件として有するものであるとされております(昭和61年3月31日付厚生省指導課長通知)。
 そして、週単位で物件を使用させる場合については、

1契約上、利用期間中の室内の清掃等の維持管理は利用者が行うこととされているが、一~二週間程度という一月に満たない短期間のうちに、会社の出張、研修、受験等の特定の目的で不特定多数の利用者が反復して利用するものであること等、施設の管理・経営形態を総体的にみると、利用者交替時の室内の清掃・寝具類の管理等、施設の衛生管理の基本的な部分はなお営業者の責任において確保されていると見るべきものであることから、本施設の衛生上の維持管理責任は、社会通念上、営業者にあるとみられること
2生活の本拠の有無についても、利用の期間、目的等からみて、本施設には利用者の生活の本拠はないとみられること

 から、本施設を、旅館業法の適用対象施設として取り扱うのが相当と考えられております。
したがって、週単位で期間を定めて物件を使用させる場合には、旅館業法上の営業許可が必要になると考えられております(昭和63年1月29日付厚生省生活衛生局指導課長通知)。

 ところで、上記の判断は、所轄官庁の見解ですが、12の要件ともに、実際の事実にあてはめて判断するときは、両要件は極めて抽象的であるため、その適用が困難です。そこで、各保健所等は、寝具の所有権の存否、衛生設備の所有権の存否など個別の基準により旅館業法の適用の有無を判断しているようですが、右個別の基準によっても統一的判断が困難となっております。そのため、実際には、宿泊期間が1か月以上に及ぶかどうかで旅館業法の適用の有無が判断されている傾向にあると思われます。

 したがって、週を単位とするような表示であるウイークリー等の名称を使用して週単位で契約期間を定めて物件を賃貸する場合には、当該事業者が旅館業法上の営業許可を取得していないと旅館業法に違反するおそれがあると考えられますので、旅館業法の適用を受けない通常の建物賃貸借として物件を賃貸するするため、少なくとも契約期間を1か月以上の長期の期間を定めて物件を賃貸することが必要である考えられます。

 但し、マンスリー等の1か月以上の期間を単位とする名称を使用して、月単位で契約期間を定めて物件を賃貸する場合でも、寝具の所有権や、衛生設備の所有権の帰属によっては、旅館業法の適用があると判断される場合がありますので注意する必要があります。

 以上のとおり、週を単位として物件を使用させる契約と、月を単位として1か月以上の契約期間を定めて物件を賃貸する契約とでは適用法令が大きく異なる可能性がありますので、その点に十分に注意して、いずれの契約方法で事業を行うのか明確に認識した上で、事業計画を立てる必要があると思います。

 そして、その際月を単位とする契約方法をとる場合には、その事業の方法によっては旅館業法の適用があると判断される場合もあるというリスクが存する点も十分に認識しておく必要があります。

2006.11/28

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修