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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

申込証拠金と手付の関係

申込証拠金と証約・解約手付けの違いについて
 手付け等は、契約締結に際し、またはその後代金等の弁済期までに当事者の一方より相手方に対して交付される金銭その他の有価物を言います。
 証約手付けとは、契約締結の証拠として授受される手付けをいい、手付けは全て証約手付けの性質を有しております。
 解約手付けは、解除権留保の対価たる意味で授受される手付けを言います。
 以上のとおり、手付けは必ず契約の締結を前提としております。
 これに対し、申込証拠金として授受される金銭は、賃貸借契約の締結前に授受されるものでありますから、手付けには該当せず、預かり金の一種であることになります。
 なお、通常の賃貸借契約において、賃貸借契約の事前の手続として、入居申込者から賃貸物件を確保する目的で契約金を預かるケースがありますが、この場合の契約金は契約締結前の金銭の授受ですので、申込証拠金に過ぎず、手付金でありませんので、注意する必要があります。

申込証拠金の適法性について
 ところで、賃貸借契約の媒介における預かり金については、不動産業者が物件借り入れの申込時に申込者から受領した申込証拠金について、申込者が借り入れ申し込みを撤回した際に、その返還を拒絶したり没収するなど主張して、不当に返還しないなどの例が後を絶ちません。そこで、旧建設省作成の借主向け標準賃貸借媒介契約書では、第4条で賃貸借契約成立前に媒介業者が借主予定者から預かり金を受領することを禁止しております。
 そして、東京都住宅局不動産業指導部は、平成4年6月29日付で居住用建物賃貸借契約に係る媒介契約の適正化のために、預かり金については下記の通り指導しております。

 

 

 ・賃貸借の媒介・代理に際して、宅建業者が手付け金、手付け充当金、予約金、交渉預かり金等、その名目の如何を問わず、借り受け予定者から預かり金を受領してはならない。
 但し、借り受け予定者が物件を特定し、特段の依頼をした場合に限られるものとし、その場合においても、当該預かり金が物件を確保する目的のものであること、物件確保の有効期限及び契約の成立・不成立にかかわらず必ず借り受け予定者に返還されるものであることを事前に借り受け予定者に重要事項説明書を交付して説明し預かり証を交付しなければならない。

契約前の契約金の授受の適法性について
 したがって、上記の行政指導からすれば、契約金・手付金・申込証拠金等の名称を問わず、およそ契約締結前に金銭を預かることは、仲介業務としては適正さを欠く恐れがあるものであるため、できる限り避けるべきであると考えますが、やむを得ず申込証拠金等を受領する場合には、当該預かり金が物件を確保する目的のものであること、物件確保の有効期限及び契約の成立・不成立にかかわらず必ず借り受け予定者に返還されるものであることを、事前に物件借り入れ申込者に説明して預かり証を交付すれば、宅建業法上も問題とされるおそれは少ないと考えられます。

2006.12/26

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修