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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

最高裁平成27年3月27日市営住宅契約解除判決について

出典:裁判所ホームページ
http://www.courts.go.jp/

【1】反社条項と賃貸借契約解除との関係
 建物賃貸借契約において、反社会的勢力に対する契約解除条項が現在一般化しておりますが、その契約条項の効力については、これまで判決例もなく、不明確な状況にありました。
この点に関し、平成27年3月27日に最高裁判所において、市営住宅の賃貸借契約に関し、市の条例で定められている反社条例に基づき、賃借人に対して賃貸借契約の解除を行ったことについて、最高裁判所が有効と認める判決が出されました。
 市営住宅の賃貸借契約は、社会福祉目的も加味された契約であるため、通常の民事上の賃貸借契約とは同一の性質とは言い難い面もありますが、最高裁が賃貸借契約の反社条項の有効性を明確にしたことは極めて重要であると考えられますので、以下のとおり紹介致します。

【2】事案の概要

  1. (1) 被上告人(兵庫県西宮市)は、平成17年8月、西宮市営住宅条例(平成9年西宮市条例第44号。以下「本件条例」という)の規定に基づき、市営住宅(被上告人が建設、買取り又は借上げを行い、市民等に賃貸し、又は転貸するための本件条例2条2号から7号までに規定する住宅及びその附帯施設をいう。本件条例2条1号)のうち被上告人が所有する第1審判決別紙物件目録記載1の住宅(以下「本件住宅」という)の入居者を上告人Y1とする旨決定した。
  2. (2) 本件条例46条1項柱書は「市長は、入居者が次の各号のいずれかに該当する場合において、当該入居者に対し、当該市営住宅の明渡しを請求することができる」と規定しているところ、被上告人は、平成19年12月、本件条例を改正し、同項6号として「暴力団員であることが判明したとき(同居者が該当する場合を含む)」との規定を設けた(以下、同項柱書及び同項6号の規定のうち、入居者が暴力団員であることが判明した場合に市営住宅の明渡しを請求することができる旨を定める部分を「本件規定」という)。
     本件条例において、「暴力団員」とは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という)2条6号に規定する暴力団員をいうと定義されている(本件条例7条5号。以下、本判決においても同じ意義で用いる)。そして、暴力団対策法において、「暴力団」とはその団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等(暴力団対策法別表に掲げる罪のうち国家公安委員会規則で定めるもの(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則1条各号に掲げられているもの)をいう。暴力団対策法2条1号)を行うことを助長するおそれがある団体と定義され(暴力団対策法2条2号。以下、本判決においても同じ意義で用いる)、また、「暴力団員」とは暴力団の構成員と定義されている(同条6号)。
  3. (3) 被上告人は、平成22年8月、上告人Y1に対し、その両親である上告人Y2及び同Y3を本件住宅に同居させることを承認した。その際、上告人Y1及び同Y2は、「名義人又は同居者が暴力団員であることが判明したときは、ただちに住宅を明け渡します」との記載のある誓約書を被上告人に提出した。
     また、本件条例によれば、市営住宅の入居者又は同居者のみが当該市営住宅の駐車場を使用することができ、入居者又は同居者でなくなればこれを明け渡さなければならないところ(本件条例56条2項1号、64条2項、西宮市営住宅条例施行規則(平成9年西宮市規則第1号)53条8号)、被上告人は、同年9月、上告人Y2に対し、本件住宅の同居者であることを前提に、本件住宅の駐車場である第1審判決別紙物件目録記載2の土地(以下「本件駐車場」という)の使用を許可した。
  4. (4) 上告人Y1は、平成22年10月当時、暴力団である六代目A組三代目B組C會に所属する暴力団員であった。 被上告人は、同月、兵庫県警察からの連絡によって、上告人Y1が暴力団員である事実を知った。そこで、被上告人は、同月、上告人Y1に対し、本件規定に基づいて同年11月30日までに本件住宅を明け渡すことを請求するとともに、上告人Y2に対しても、本件駐車場の明渡しを請求した。
  5. (5) 上告人Y1は、従前から別の建物を賃借してそこに居住しており、本件住宅には現実に居住することはなく、上告人Y2及び同Y3のみが本件住宅に居住している。


【3】判旨
 地方公共団体は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることに鑑み、低額所得者、被災者その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、住宅の供給その他の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を策定し、実施するものであって(住生活基本法1条、6条、7条1項、14条)、地方公共団体が住宅を供給する場合において、当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては、その性質上、地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。
 そして、暴力団員は、前記のとおり、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ、このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には、当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはできない。他方において、暴力団員は、自らの意思により暴力団を脱退し、そうすることで暴力団員でなくなることが可能であり、また、暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それは、当該市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず、当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。
 以上の諸点を考慮すると、本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。したがって、本件規定は、憲法14条1項に違反しない。
 また、本件規定により制限される利益は、結局のところ、社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益にすぎず、上記の諸点に照らすと、本件規定による居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。したがって、本件規定は、憲法22条1項に違反しない。
 そして、上記2(5)の事実関係によれば、上告人Y1は他に住宅を賃借して居住しているというのであり、これに、上記2(3)記載の誓約書が提出されていることなども併せ考慮すると、その余の点について判断するまでもなく、本件において、本件住宅及び本件駐車場の使用の終了に本件規定を適用することが憲法14条1項又は22条1項に違反することになるものではない。

【4】今回の判決について

 今回の最高裁判決は、市営住宅の賃貸借契約に関する条例の有効性について争われているため、通常の民法上の賃貸借契約に関する判断はなされておらず、借地借家法との関係も判断されておりません。
 しかし、公営住宅における反社条項の有効性が明確になったことは、借地借家法の適用される一般の賃貸住宅における賃貸借契約に定められている反社条項の有効性についても十分に認められる可能性があると考えられます。
 したがって、今後、一般の賃貸住宅において反社条項に基づく契約の解除の有効性が争われる場合には、本判決で示された判断、内容を無視して審理することはできないと考えられますので、実務上も大いに参考になると考えられます。

2015.10/13

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修

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