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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

税務署以外の役所の動向

社会保険事務所
  パート労働者は、現在、労働時間が正社員のおおむね3/4未満(所定労働時間週40時間の企業なら30時間)なら、厚生年金にも健康保険にも被保険者本人として加入する必要はありません。会社員の妻の場合、パートで働いていても年収130万円未満なら、夫と同じ健康保険に扶養家族として加入します。年収130万円以上になると、本人として社会保険に加入することになるわけですが、現実的には、特に中小法人においては、すぐに社会保険に加入手続をとるということが、非常に難しいケースがあります。

 例えば、パートさん本人が130万円以上となって社会保険に強制的に加入させてしまったために、年間手取り収入がかなり目減りし、労働意欲もなくなり、果ては退職してしまうという極端な場合もあります。又、仮にそのまま在職という選択をとったにしても、社会保険は労使折半なので会社側としても負担増となります。定年退職した経験豊かなベテランを再雇用しても上記の時間制限をオーバーし、社会保険に加入しなければならなくなったために、結果的に本人の年金がカットされるケース等もあります。
 会社にとってもパートさんにとってもメリットの少ないこの制度を、社会保険庁は「所定労働時間が週40時間の企業なら週30時間以上」とあるのを、「週20時間以上の就労という雇用条件で2ヶ月以上継続して働く見込みのある人」というようにパートの社会保険加入の拡大を図っています(下記図)。会社に直接やってきてタイムカード等の管理書類を各人別に調査し、指導するケースが大法人のみならず中小法人にまで及んできているのが実情です。パートさんが主力の事業者にとっては大打撃となっています。

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市町村役場
 最近、神戸市役所より、下記のような「償却資産(固定資産税)の実地調査について」という書類が各事業所に届いています。会社に直接訪問して償却資産の実地調査を受けるか、又は、税務署に提出した減価償却資産明細書及び貸借対照表を提出してくださいというものです。

 

○○○○株式会社 様

平成 年 月 日
神戸市中央区長

償却資産(固定資産税)の実地調査について


  平素は、本市税務行政につきまして、格別のご協力をいただき厚くお礼申し上げます。
  さて、本市では、このたび地方税法第408条の規定に基づき、貴社につきまして償却資産(固定資産税)の実地調査を実施することとなりました。この調査は、これまでご提出いただいた申告書の内容と貴社の会計帳簿を照合し、申告内容を確認するため、神戸市内の全事務所を対象に順次実施しているものです。
  調査は、「A.減価償却資産明細書の写しを送付いただく方法」と「B.貴社にて帳簿を実地に確認する方法」とのいずれかの方法で実施いたします。
  つきましては、希望される調査方法をご選択いただき、下記のとおり「実地調査回答票」を、平成○年○月○日までに、下記連絡先あてご提出いただきますようお願いいたします。
(できるだけ「A」の方法でお願いします。)

 


1.選択された調査方法に応じて、次の書類を提出してください。

A.減価償却資産明細書の写しを送付いただく方法 を選ばれた方
  (1)実地調査回答票
  (2)減価償却資産明細書(または固定資産台帳)の写し
  神戸市内に所在する全ての減価償却資産の名称、取得価額、取得年月、耐用年数、数量がわかるもの(建物、建物附属設備、車両等の申告対象外の資産も含みます。)最新のもの(または直近の期末のもの)を添付してください。
  (3)貸借対照表(直近の決算期の法人税申告書に添付したもの)

B.貴社にて帳簿を実地に確認する方法 を選ばれた方




 

調査において申告誤りがあった場合には、取得の翌年に遡り税額を修正します。

 


 あってはならないことですが、『税務署は調査があるのできちんと申告するが、市は調査がないので適当に申告する。』『指摘されたときは、その時に判断する』という考え方をされている事業所もあるやに聞きます。(市の方も課税徴収をあいまいにしてきた感はありますが…)。そのような状況下において神戸市は"税務署に提出した書類"を添付書類として要求してきました。市に申告した減価償却資産明細書と税務署に提出した償却資産明細書とが同じものでしたら問題はないのですが、異なる場合には償却資産税を過去に遡って課税されるということも考えられます。
 土地建物に係る固定資産税においては、神戸市の職員が実際出歩いて実地調査を行っています。又、航空写真を撮り、例えば立体駐車場が写ったときは、それがちゃんと申告されているかどうかのチェックもされています。過去5年間にわたって徴収された実例もあります。
 事業面積がある一定以上になると課税される事業所税についても、細部にわたってチェックが入っています。問い合わせさえなかった地方税の税目なのですが、固定資産台帳等でその再確認を行っています。

その他
 労働基準局は、労働保険(労災保険雇用保険)を徴収する国の組織です。不景気によるリストラ等で失業給付が多大となり、その結果財源不足が生じ、月々の給料から天引きされる雇用保険料の徴収も増加しています。時節柄、人員整理にあった人がそれを不服とし、労働基準局に当該会社を訴えるケースも多く発生し、そのための調査・指導がおこなわれています。労働者サイドの負担もさることながら、経営者サイドにとっても大きな制約のなかにあって大胆なリストラがやりにくい状況ではないでしょうか。

対応策
 冒頭にも書きましたように、この不況下、各役所はそれぞれ財源を求めて活発に動いています。これといった対応策はないにも等しいのが現実です。各企業において、生き残りをかけてコスト削減を進めておられることでしょうが、この新たなコスト増についても一層の経営努力が必要な時代になってきました。

2005.04/19

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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