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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

所得税の改正 控除対象範囲の見直しと適用時期

 平成22年度の税制改正では、「控除から手当へ」の考え方から、年少の扶養控除が大幅に見直されました。また、介護医療制度の充実と介護医療保険の普及から、生命保険料控除に新たに介護医療保険控除の区分が設けられました。寄付金控除についても、ふるさと納税にあるように寄付が身近になったことから見直しがなされました。
今回は、これら控除と関連する制度、および小規模企業共済制度と中小企業退職金共済制度の対象範囲の拡大について取り上げてみたいと思います。

【1】扶養控除について次の改正が行われました

  1. I 適用時期
    平成23年分以降の所得税から。
    平成22年分の所得税については、従来どおりの控除が適用されます。
  2. II 概要

    (1)16歳未満の者に対する扶養控除が廃止されました。(子ども手当て創設に関連)
    (2)16歳以上23歳未満の者の扶養控除に加算されていた25万円は、19歳からとなり、対象年齢は19歳以上23歳未満となりました。(高校実質無償化に関連)

  3. III 年齢別の控除額
    扶養親族の年齢 H22年まで H23年から
    16歳未満 38万円 0円
    16歳以上19歳未満 63万円 38万円
    19歳以上23歳未満 63万円
    23歳以上70歳未満 38万円 38万円
    70歳以上 48万円 48万円
    同居老親等 58万円 58万円
  4. IV 改正の理由

    (1)子ども手当ての創設
    平成22年4月1日から、中学校を卒業するまでの子ども一人につき月額13,000円(平成22年度)が子ども手当として支給されるので、その間の控除がなくなったものです。なお、子ども手当については、非課税です。
    (2)高校の実質無償化


    平成22年4月1日から国公立高等学校の授業料無償化及び私立の高等学校等における就学支援金の制度が創設されましたため、16歳以上19歳未満の者の扶養控除に加算されていた25万円がなくなりました。これは、高校生が対象となりますが、高等学校等に支給されるため、両親が直接現金を受給するものではありません。
    この授業料無償化に伴う経済的利益及び就学支援金についても、非課税です。


【2】生命保険料控除の改正

  1. I 適用時期
    平成24年分以降の所得税から。
  2. II 対象契約

    平成24年1月1日以降の新契約分から。

  3. III 概要
    (1)新たに介護医療保険料控除を設け、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除のそれぞれの適用限度額が4万円となりました。(表B)
    (2)平成23年12月31日以前の契約(旧契約)に係る生命保険料控除は従前と同様の一般生命保険料控除、個人年金保険料控除(それぞれの適用限度額5万円)が適用されます。(表A)
    (3)新契約と旧契約の双方がある場合の控除の計算は、それぞれ次の金額の合計額(上限4万円)となります。
    (イ)新契約の支払保険料等については、(表B)の計算式により計算した金額
    (ロ)旧契約の支払保険料等については、(表A)の計算式により計算した金額
  4. IV 控除額の計算
    表(A)  旧 契 約 表(B)  新 契 約
    年間の支払保険料 控 除 額 年間の支払保険料 控 除 額
    25,000円以下 支払保険料の全額 20,000円以下 支払保険料の全額
    25,000円超
    50,000円以下
    支払保険料×50%+12,500円 20,000円超
    40,000円以下
    支払保険料×50%+10,000円
    50,000円超
    100,000円以下
    支払保険料×25%+25,000円 40,000円超
    80,000円以下
    支払保険料×25%+20,000円
    100,000円超 50,000円 80,000円超 40,000円


【3】寄附金控除の適用下限額の引下げ

  1. I 適用時期
    平成22年分以降の所得税から。
  2. II 控除額の計算
    特定寄附金の額
    いずれか低い方の金額 ― (A)
    課税所得×40%
  3. III 改 正 点
      H21年分まで H22年分から
    (A)の金額 5,000円 2,000円
    控除額の 計算例 特定寄附金の額 20,000円
    課税所得×40% 1,000,000円
    20,000円 - 5,000円 = 15,000円
    (低い方の金額) (Aの金額)  (控除額)
    特定寄附金の額 20,000円
    課税所得×40% 1,000,000円
    20,000円 - 2,000円 = 18,000円
    (低い方の金額) (Aの金額)  (控除額)
  4. IV 寄付金控除を受けるための注意
    (1)特定寄附金とは、国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、独立行政法人、認定NPO法人等特定の団体に支出した一定の寄附金や一定の政治献金、一定の特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭等をいいます。 ただし、学校の入学等に関して寄附するものは除きます。
    (2)控除を受けるためには、寄附金の受領年月日及び金額を証する書面の他、一定の証明書の写しを添付又は提示することが必要です。

 

【4】その他

  1. (1)小規模企業共済制度
    (i) 制度の概要
    小規模企業共済とは、個人事業主の廃業、引退時の生活資金などを確保するための制度で、掛金は全額所得控除の対象となり、受け取った金額は退職所得として課税上も優遇されます。
    (ii) 改正の内容
    小規模企業共済法の改正(施行は、平成23年1月1日)で、加入対象者が拡大されました。 加入対象者に個人事業主の「共同経営者」が追加されることとなったため、共同経営者が支払った掛け金について小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。
    共同経営者とは以下の??を満たす者が想定されています。
    (1)以下のいずれかを満たすこと。
    ・事業の経営に必要な資金を負担していること。
    (直接的に資金を拠出している場合以外にも、個人事業主が拠出した資金に対して連帯保証している場合も含まれます。)
    ・多額の借財、支店の設置その他の重要な業務執行の決定に関与していること
    (2)報酬、賞与その他の業務執行等の対価を受けていること。
    また、小規模企業共済制度に加入できる「共同経営者」の数は個人事業主1人あたり2人までとします。
  2. (2)中小企業退職金共済制度

    (i) 改正の概要
    中小企業退職金共済法の改正により、中小企業退職金共済制度の加入対象者に、同居親族のみを雇用する事業の従業員が追加される予定です。 所要の省令改正を前提に、次の措置が講じられます。
    (1)事業主掛け金については、事業主の所得の金額の計算上必要経費に算入されます。
    (法人税についても同様)
    (2)事業主掛け金については、従業員の給与所得の計算上、収入金額に算入しません。
    (ii) 改正のメリット
    (1)(2)の改正により、個人事業主の営む事業の経営に携わっている配偶者や後継者も加入対象となり、税制面の優遇も受けられるようになりました。事業の承継のためにも、歓迎すべき改正です。経営のお役に立てればと思います。

2010.11/02

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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