【1】はじめに
平成25年1月24日に自由民主党から平成25年度の税制改正大綱が発表になりました。国会での審議の後、平成25年3月下旬ごろ法案が可決成立される見込みです。
そこで今回は、税制面で資産家に関連する項目についてご説明いたします。
【2】贈与税の税率等の改正
相続税が増税される見直しが予定される一方、生前贈与を促進し、次世代へ財産を移転させることにより経済を活性化させる目的で贈与税を緩和する改正が予定されています。
(1)相続時精算課税以外の贈与税の税率構造の見直し
現 行 | 改 正 案 | ||||
---|---|---|---|---|---|
20歳以上の者が、直系尊属から 贈与を受けた財産に係る贈与税 |
左以外の 贈与財産に係る贈与税 | ||||
基礎控除後の課税価格 | 税率 (%) |
基礎控除後の課税価格 | 税率 (%) |
基礎控除後の課税価格 | 税率 (%) |
200万円以下の金額 | 10 | 200万円以下の金額 | 10 | 200万円以下の金額 | 10 |
300万円以下の金額 | 15 | 400万円以下の金額 | 15 | 300万円以下の金額 | 15 |
400万円以下の金額 | 20 | 400万円以下の金額 | 20 | ||
600万円以下の金額 | 30 | 600万円以下の金額 | 20 | 600万円以下の金額 | 30 |
1,000万円以下の金額 | 40 | 1,000万円以下の金額 | 30 | 1,000万円以下の金額 | 40 |
1,000万円超の金額 | 50 | 1,500万円以下の金額 | 40 | 1,500万円以下の金額 | 45 |
3,000万円以下の金額 | 45 | 3,000万円以下の金額 | 50 | ||
4,500万円以下の金額 | 50 | 3,000万円超の金額 | 55 | ||
4,500万円超の金額 | 55 |
(2)贈与税の具体例
贈与 価額 |
現行の 贈与税 |
改正後の贈与税 | |
---|---|---|---|
【A】の場合 | 【B】の場合 | ||
200 | 9 | 9 | 9 |
300 | 19 | 19 | 19 |
500 | 53 | 49 | 53 |
700 | 112 | 88 | 112 |
贈与 価額 |
現行の 贈与税 |
改正後の贈与税 | |
---|---|---|---|
【A】の場合 | 【B】の場合 | ||
1,000 | 231 | 177 | 231 |
2,000 | 720 | 586 | 695 |
3,000 | 1,220 | 1,036 | 1,195 |
5,000 | 2,220 | 2,050 | 2,290 |
(3)相続時精算課税の要件
現 行 | 改 正 案 |
---|---|
1.受贈者は20歳以上の推定相続人のみ 2.贈与者の年齢は65歳以上であること。 |
1.受贈者の範囲に、20歳以上である孫を追加する。 2.贈与者の年齢要件を60歳以上に引き下げる。 |
※相続人でない孫に贈与した場合には、将来、相続税の計算をする時に相続税額の2割加算の対象となりますので、注意が必要です。
(4)適用時期
平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。
【3】相続税の基礎控除及び税率の改正
(1) 基礎控除の引下げ
基礎控除とは、相続税の総額を計算する場合に、不動産・預貯金などのプラスの財産から、借入金・葬式費用などのマイナスの財産を控除した純資産から差し引く控除額のことです。
現 行 | 改 正 案 | |
---|---|---|
定額控除 | 5,000万円 | 3,000万円 |
比例控除 | 1,000万円×法定相続人の数 | 600万円×法定相続人の数 |
<例> 法定相続人が3人の場合
改正前:5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円
改正後:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
(2)相続税の税率構造の見直し
現 行 | 改 正 案 | ||||
---|---|---|---|---|---|
各取得分の金額 | 率(%) | 控除額(万円) | 各取得分の金額 | 率(%) | 控除額(万円) |
1,000万円以下 | 10 | - | 1,000万円以下 | 10 | - |
3,000万円以下 | 15 | 50 | 3,000万円以下 | 15 | 50 |
5,000万円以下 | 20 | 200 | 5,000万円以下 | 20 | 200 |
1億円以下 | 30 | 700 | 1億円以下 | 30 | 700 |
3億円以下 | 40 | 1,700 | 2億円以下 | 40 | 1,700 |
3億円以下 | 45 | 2,700 | |||
3億円超 | 50 | 4,700 | 6億円以下 | 50 | 4,200 |
6億円超 | 55 | 7,200 |
(3)相続税の具体例
課税価格 | 配偶者と子2人の場合の相続税 (法定相続分で相続した場合) |
子2人の場合の相続税 | ||||
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現 行(1) | 改正後(2) | 増税額(2)-(1) | 現 行(1) | 改正後(2) | 増税額(2)-(1) | |
5,000万円 | 0 | 10 | 10 | 0 | 80 | 80 |
1億円 | 100 | 315 | 215 | 350 | 770 | 420 |
2億円 | 950 | 1,350 | 400 | 2,500 | 3,340 | 840 |
3億円 | 2,300 | 2,860 | 560 | 5,800 | 6,920 | 1,120 |
4億円 | 4,050 | 4,610 | 560 | 9,800 | 10,920 | 1,120 |
5億円 | 5,800 | 6,555 | 705 | 13,800 | 15,210 | 1,410 |
10億円 | 16,650 | 17,810 | 1,160 | 37,100 | 39,500 | 2,400 |
20億円 | 40,950 | 43,440 | 2,490 | 87,100 | 93,290 | 6,190 |
30億円 | 65,950 | 70,380 | 4,430 | 137,100 | 148,290 | 11,190 |
(4)適用時期
平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
【4】その他の改正
(1)教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設(贈与税)
個人の教育資金に充てるために、その直系尊属(祖父母等)が金銭等を拠出して金融機関に信託等した場合、拠出金銭等の額のうち受贈者(30歳未満の子・孫)1人につき1,500万円(学校等以外に支払われる金銭は500万円)まで贈与税が非課税とされます。
(注)上記の改正は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出された一定の金銭等について適用されます。(3年間のみ)
(2)小規模宅地等の特例の見直し(相続税の緩和措置)
(注)上記1.と2.の改正は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈について適用されます。
(注)上記3.と4.の改正は、平成26年1月1日以後の相続又は遺贈について適用されます。
【5】まとめ
今回の税制改正は、資産家にとって全体的には非常に厳しいものとなりました。相続税は増税となりますので、早期の相続対策がますます重要となったように思われます。今まで相続税の試算をされていた方ももう一度改正後の相続税の試算をされることをお奨めします。