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イベントレポート

「賃貸住宅管理士・有資格者研修」

主催:(財)日本賃貸住宅管理協会

 賃貸住宅の所有者や入居者の依頼や相談(資産運用、物件探索・調査、トラブル解決)のアドバイスを行う、賃貸住宅管理士の有資格者を対象とした、賃貸住宅の管理能力、家主へのコンサルティング能力、トラブル対応能力を向上させるためのセミナー「賃貸住宅管理士・有資格者研修」が開催されました。
 セミナーの内容を一部抜粋して、以下にご紹介します。


【第1部】相続税とコンサルティング・上級編
講師:座間昭男氏(税理士)

 賃貸住宅所有者の相続となると、かなりの金額や資産が考えられます。そうなると、相続トラブルに発展する可能性が高くなります。そこで、相続コンサルティングにおける重要なポイントをお話したいと思います。
 相続における重要な対策の順位は、1.円満であること、2.納税をすること、3.節税をすること、の順になります。節税はちゃんと納税をすることが基本となり、納税にこだわるのは、まずは円満で無ければいけません。
1.円満であること
 円満に資産を分けるにあたり、有効になるのは遺言書です。遺言書はどのような形でも良い訳ではなく、「公正証書」、「自筆証書」であることが望ましいです。
2.納税をすること
 納税は確実に行ってください。資産隠しや逃れは、節税では無く脱税です。ここはしっかりと覚えておいて下さい。
3.節税をすること
 相続コンサルティングにおいて、最も望まれる部分ですので、詳しく解説したいと思います。
・生命保険
 生命保険金での支払いは、ひとりあたり500万円まで非課税になります。少なくとも、相続人数×500万円は生命保険をかけておきましょう。
・生前贈与
 生前贈与は年間110万円までの控除が受けられます。例えば200万円なら110万円控除で、90万円の10%、つまり9万円の税で済みます。
・住宅取得資金贈与
 住宅取得資金の援助を行えば、基礎控除110万円の5年前倒しで550万円が非課税になります。
・配偶者の税額軽減
 配偶者が遺産分割や遺贈により受けた遺産額が、1.6億円または法定相続分までは、配偶者は相続税がかかりません。
・相続税の課税価格の特例
 居住用なら240平米までは80%減税、事業用なら400平米までは80%減税されます。

 また、納税は原則として金銭一括納付とされていますが、特例として延納、物納などがあります。これらを利用して、合法的に相続を円滑かつ円満に行うと良いでしょう。

【第2部】コンサルティング実務総論・上級編
講師:本郷 尚氏(税理士)


 今の賃貸不動産経営は、ひと昔前と大きく変わっています。と、言いますのは、以前は地主さんが大家さんとして賃貸不動産を経営していましたが、現在は投資家が利潤を求めて賃貸不動産経営に着手してきています。つまり、今までの流動的な不動産経営では、利潤を得るのは難しいと考えます。
 また、以下のような理由から、これから賃貸不動産経営に乗り出してくる投資家が増えると予測されます。
(1)年金改革
1.年金が下がり課税が増える
・公的年金特別控除の縮小(140万円→120万円)
・老年者控除(50万円)の廃止
2.現役世代への保険料の負担と所得税の課税強化
3.企業の保険料負担の増加 ※年金受難時代

(2)資産活用の促進
1.土地譲渡所得に対する税率が26%から20%に減額
2.事業用資産の買い換え特例を延長
・10年以上所有の事業用資産を売却し、翌年までに事業用資産を買い換えた場合には、買い換え金額の80%は課税が繰り延べられる
3.土地譲渡損の他の所得との損益通産不可とする

(3)税制改正の目指すもの
・公的年金には頼れない
・資産活用による自己年金を
・金融所得、勤労所得の二元化

  では、不動産投資が促進される時代背景を受けて、どのような意識改革が必要なのでしょうか。
1.高齢者の資産活用が進む
2.ストック(資産)よりインカム(収入)
3.資産とは収入を生むもの
・収入を生まないものは組み替えする
4.目標設定が大事
・年収をアップさせるにはどのような戦略が必要か考える
5.年収を増やす為のステップ
・財産の棚卸をする(収入を生むものが資産)
・目標収入を設定する
・財産の組み替えをする
・時には自宅も組み替えの対象とすることもある
6.良質な不動産を選ぶ
・立地は最重要
・タイムイズマネー
・管理の重要性を知る

  年金を確保できないことで、国は国策として資産活用による自己年金取得を促進させる税法を打ち出してきました。そこで、最も目をつけられるのが不動産投資です。しかし、今までの地主大家さんの考えでは利潤を得ることが難しいです。これからの時代に対応した、不動産投資法を活用する必要があります。


【第3部】平成16年版 最近のトラブル事例、判例、法改正等
講師:江口正夫氏(弁護士)

 最近のトラブル事情を紹介します。

平成15年6月30日大阪地裁判決
「原状回復に係る特約が公序良俗に反し無効であるとされた事例」
≪事案の概要≫
(1)賃借人Xは、平成9年6月、賃貸等を業とする株式会社Yとの間で、建物賃貸借契約を締結し賃貸マンションの1室を借り受け、敷金44万円余をYに差し入れた。本物件は、「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(以下「特優賃法」という)に基づく特定優良賃貸住宅であり、住宅金融公庫の融資が利用されていた。
(2)本件賃貸借契約は、遅くとも平成13年8月までに終了し、Xは、本件物件をYに明け渡した。Yは、賃貸借契約時に交付した「入居のしおり」における「退去後原状回復負担基準」に基き原状回復費用として46万円余を請求し、Xは敷金との差額1万円余を支払った。
(3)平成14年10月、Xは、原状回復義務の範囲を定めた本件特約は、Xが承諾していないため成立しておらず、仮に成立していても、民法90条(公序良俗)に違反するため無効である、追加支払分は支払義務がないのに誤信して支払ったとして、46万円余の敷金および不当利得の返還を求めて提訴した。

≪判決の要旨≫
(1)本件特約の成立の有無について
 Yは、賃貸借契約に本件特約を付けることを意図して、入居者説明会で「入居のしおり」を配布して説明しており、入居者においてもその記載が賃貸借契約の内容となることは十分に理解できる状況であった。仮に入居者説明会の際に時間が無く、説明された記憶が無かったとしても、Xには本件賃貸借契約締結までに「入居のしおり」及び本件特約について確認する十分な時間があり、入居者も質問や意義を述べていないことを総合すると、本件賃貸借契約において、本件特約の合意も成立していたものと認めるのが相当である。
(2)本件特約が公序良俗違反として無効か否か
 1.本件特約である「退去後原状回復負担基準」の借主負担の区分記載には、生活上通常の使用による損耗などを含んでおり、借主の故意・過失を前提とする責務不履行の場合に限定されているとはいえず、賃借人の債務不履行とはいえない自然損耗等を、基準の名の下に、網羅的、画一的、広範囲に賃借人の負担に含めてしまう機能を有しているものと認められる。
 2.敷金の性質についての一般的認識、債務不履行が存する場合敷金から差し引く旨明記し、通常損耗を控除する旨の規定のない本件賃貸借契約書等からすると、Xは、故意・過失などによる債務不履行に該当しない損傷等を含めて、修理費を敷金から控除されたり、追加請求されるとは全く予期しないで本件賃貸借契約および本件特約を締結したものと認められる。
 3.本件特約は、公共性の強い特優賃法及び住宅金融公庫法の規定や趣旨に反し、賃借人の過大な不安と不意打ちにおいて、賃貸人側に特優賃法上の補助や優遇措置といわば二重取りとなる結果を容認することにもなることなどから、民法90条(公序良俗に反する)により無効と認めるのが相当である。
(3)本件において、Xは、約4年間入居しており、通常の使用による損耗等も当然予想されるので、公平上ないし信義則上、Yによる見積書における和室、洋室などの壁面・天井のクロス張替え、襖張替えなどの費用額46万円余のうち、2分の1,23万円余をXの負担とし、その余をYの負担とするのが相当である。

 つまり、如何に特約を入居者に説明したという事実が認められても、公序良俗上一方的な内容であったり、利益を得ることのみを目的としたりした契約は無効になる可能性が高い。

※ここに掲載されている内容はセミナーの一部を抜粋したものです。

詳細・関連

財団法人日本賃貸住宅管理協会
http://www.jpm.jp/

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