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リプロス代表・松尾充泰の賃貸経営ノウハウ

最適な管理会社の選び方

 「管理会社は資産価値を上昇させる?」で説明したように、管理会社の選び方が賃貸経営にとって、非常に重要である事は理解して頂いたと思います。

 では、どのようにして選ぶかをいくつかのポイントを挙げて説明します。

1.管理を任せるのに会社の規模は重要ではない
 まず、管理会社の規模だけで管理を判断してはいけない事を理解してください。

 もちろん、お金の面やその他のフォロー面で安心できる事を大きな基準として選ばれる事は間違いではありません。

 しかし、賃貸経営をちゃんと考えるなら、ご自身の賃貸経営スタンスやターゲットとなる入居者、地域に適した管理会社を選ぶ必要があります。

≪経営スタンスの違い≫
 面倒な業務が嫌ならば、サブリースをしてくれる管理会社。

 積極的に自ら賃貸経営を行うのであれば、相談にのってもらえる管理会社を探す事になります。

 後者は、担当者が大家さんに1名付く会社や顧問税理士や弁護士などを活用した大家さん向け「オーナーセミナー」を開催している管理会社を選ぶことをオススメします。

 このような管理会社は、しっかり相談に応じてもらえる体制があり、管理会社側も日々勉強していることが想像できるからです。

≪ターゲットの違い≫

 学生専用物件の管理を委託する場合は、学生専用物件をメイン業務にしている管理会社を選択するとメリットが多くあります。

 このような管理会社は、大学生協との業務提携や新入生向けのマーケティング力があり、学生向け物件運営ノウハウが充実しています。

 また、法人契約を限定にした物件であれば、法人客の仲介を行う営業部を持つ管理会社が入居者確保に強みがあります。

 このようにターゲットがはっきりしている場合は、ターゲットとする入居者を確保する能力で判断する事が重要です。

≪管理会社のタイプの違い≫
 仲介部門をもつ管理会社と仲介部門を持たない管理会社の2タイプに分けて考えます。

仲介部門を持たない管理会社の場合
 物件の周辺に仲介会社が多くある場合、複数の仲介会社に客付けを依頼でき、良い物件であれば競って入居者を紹介してくれるメリットがあります。

 しかし、物件の周辺に地元で集客力のある仲介会社が1社しかない場合、以下のようなデメリットが生じるかもしれません。

1)地元の仲介会社は他社の物件より、自社の専任仲介物件や管理物件などを優先して仲介する為、仲介部門を持たない管理会社の物件は空室期間が延びる恐れがある。


2)地元の仲介会社が仲介部門を持たない管理会社の空室を意図的に客付けをせず、大家さんの不安をあおり自ら管理受託を画策する事があります。


3)地元の仲介業者にとって管理会社が管理受託においてライバルだったり、また、単純に嫌いなために客付けをしないことがあります。

仲介部門をもつ管理会社の場合
 客付け能力の高い仲介部門を持つ管理会社なら、安心して任せておけます。しかし、客付け能力が低い会社では、自らの仲介売上げを確保する為に空室にも関わらず他の仲介業者に客付けを依頼せず、空室期間が延びる可能性があります。

2.管理料より管理契約の内容と運営方法をチェック
 単純に管理料のパーセンテージだけで、管理会社を選んではいけません。

 なぜなら、管理料が安くて空室の多い管理会社より、管理料が高くても空室の少ない管理会社の方が、結果的に収入が高くなることが十分あるからです。

 また、運営がうまく資産価値を上げてくれる管理会社であれば、数%の違いでも大家さんに大きな利益を還元してくれます。

例)
10室×10万円×12ヶ月=1,200万円(年収)

 管理料の差が2%であれば、支払の違いは年間24万円です。もし、空室が年間3ヶ月あれば、30万円の損失となります。
 管理会社は退去時のリフォーム代などに自社の利益を上乗せる事が慣習化しています。

 ここで、大きく儲ける事を考えている管理会社もあるので、目先の管理料ばかりに気を取られてはいけません。

 そして、管理契約は徹底的に熟読する必要があります。

 家賃滞納時の賃料保証、契約更新時の費用負担、サブリースの場合は費用負担について明確に理解する必要があります。

 また、空室募集時の報酬負担、管理料に物件の清掃が含まれているか、敷金などを管理会社に預ける必要があるか、管理契約の途中解約時に発生する違約金があるかなど、例を出すとキリがありません。
 管理契約の説明を受けて、契約書をじっくりと読み、わからない事は全部質問して一晩考えるぐらいの余裕をもって契約する事をお勧めします。

3.管理している物件をチェック
 管理している物件をチェックすれば、管理会社の能力を計る事ができます。
 物件のチェックを行う為に管理会社に案内してもらうのも、時間の節約になり悪くはありませんが、近くで時間があり、より真実を見たいなら5~10件程度ピックアップしてもらい、その中から数件を抜き打ちで見に行く事をお勧めします。

 事前に案内を申し出ると、普段以上に清掃をするなど真実が見えづらくなることもあります。

 ただ、物件によっては清掃を管理会社が請け負っていない場合、管理料の関係で清掃の回数などが少ない場合、大家さんの都合で設備を壊れたまま修繕しない場合もあるので、事前にピックアップしてもらった物件の管理メニューや管理状況を聞いておく必要があります。

≪チェックポイント≫
1)共有部分の清掃状況
ゴミ収集場所、エレベータ、ポスト、ガレージ、物件の裏手など人目にふれにくい場所
2)設備・植栽の状態
蛍光灯などが切れたままになっていないか
消火器などが使える状態であるか
壊れたままのものがないか
掲示板があれば、掲示板の状態
植栽の状態

4.オーナー報告書をチェック
 管理会社の能力がもっとも容易に判断できるのが、オーナー報告書です。

 尚、サブリース契約の場合、支払明細だけで報告書がない場合もあります。

 普通の管理であれば、かならずオーナー報告書はあります。これは、月ごとに発行される「月次報告書」と1年に1回発行される「年次報告書」などが一般的です。

 管理会社によっては、月次報告書しか発行していない会社もあります。

 重要なのは内容です。

 家賃の入金状態を報告するのは当たり前で、そこにプラスして以下の2種類の内容が報告されていればベストです。

1)設備などハードに関する点検事項
 設備の点検などに写真を添付してビジュアル的に報告書を作成する管理会社もあります。


2)クレームなど日常の運営に発生した内容の報告
 管理会社に任せているので、見るのが面倒と言う方には不要かもしれません。

 しかし、賃貸経営者ならば自分の物件で発生しているクレームや事故などをしっかりと知る必要があります。

 物件の構造上の問題で入居者がけがをしたと訴えられる事だってありえるわけですから。
欲を言えば、近隣の空室率や賃料相場、入居者のニーズなどの市場状況の報告書があれば良いのですが。ここまで、している管理会社は少ないようです。

5.会社や担当者の姿勢・態度をチェック
 当たり前すぎてここで書くことでないかもしれませんが、事務所や担当者の服装が乱れている管理会社に物件の維持ができるとは思いがたいですよね。

 人や会社を見た目で判断してはいけないかもしれませんが、ひとつの判断基準になると思います。

6.提案書を書いてもらう

 管理における提案書を書いてもらうと、報告書のチェック以上に管理会社の力量がわかります。

 年間及び長期的な視点でどのような管理を行うかの計画を提案してもらうわけです。

 管理会社にとって管理料が少ない物件では、時間を割いて提案書を作成してくれないかもしれませんが、新築時や管理料がたくさん入る物件であれば作成してくれると思います。

 ポイントはこの作成を依頼した時に、大家さんに対して物件を投資としてどのように考えているかヒアリングするかどうかです。

 そして、そのヒアリングの結果を反映した提案書になっているかが重要です。

 物件を運営する上での予算計画が出されていていれば、平均的な管理会社より良い仕事が期待できると思います。

 また、予算の計画があれば運営する上で予算との差異も発見でき、質の高い賃貸経営が可能となります。

≪ワンポイントアドバイス≫
 まず、管理会社選びを行う前に、大家さんの賃貸経営に対する方針を決めてください。管理会社にすべて任せたいのか、賃貸経営を投資として考えるのか否かなどを明確にしておきましょう。

2004.04/09

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松尾充泰 (まつおみつひろ)
(賃貸不動産経営コンサルタント)
昭和43年大阪生まれ。
96年に賃貸不動産業界での職務経験を生かし、賃貸不動産業界向けソフトウェア開発会社、アクセス株式会社を設立。その後、賃貸不動産会社に対する業務コンサルティング、大家さん・賃貸不動産業界のビジネス支援サイトを運営する、株式会社リプロスを2003年に設立。