昨年12月15日、自民党の平成18年度税制改正大綱が公表されました。今回の税制改正大綱では、特に法人税の役員報酬について大幅な改正案が盛り込まれています。役員報酬は、中小企業の税務に大きく影響する項目ですので、ご注意ください。
■実質的な"一人会社"では一定額以上の役員給与支給に対して課税強化
実質的な一人会社(オーナー及びその同族関係者等が、株式等の90%以上を保有し、かつ、業務に従事する役員の過半数を占めている同族会社)のオーナーへの役員給与について、「経費の二重控除」に相当する給与所得控除相当部分の法人段階での損金算入が制限されることとなりました。
これは、会社法の施行により会社の設立が容易となることから、節税のための法人成りの抑制を行うという趣旨と思われます。
個人事業者が会社を作って節税しようとするのは、「給与所得控除分の節税効果」を狙うからです。(具体例参照)
社長の役員報酬は、社長の給与所得として所得税と住民税がかかります。ただし、給与収入に対して直接課税されず、「給与所得控除」を差引後の金額に対して課税されます。この「給与所得控除」が使える分、会社設立して役員報酬を受ける方が、個人事業よりも税負担を軽減できます。
ところが、次の要件に該当すると、オーナー社長報酬の給与所得控除相当分が損金不算入になりそうです。
1同族関係者で株式の90%以上を保有
2同族関係者で常務に従事する役員の過半数を占める
■損金不算入とされない場合
次の1または2に該当する場合には、損金不算入の規定は適用されません。
1同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損金の額に算入された当該給与の額の合計額をいう。以下同じ)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年8百万円以下である場合
21の同族会社の所得等の3年間の平均額が年8百万円超3千万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合。
■適用時期
平成18年4月1日以降に開始の事業年度から適用予定です。(財務省「平成18年度税制改正の大綱」
■不明点
この制度につき大綱では不明確な事項があります。
例えば、1と2の所得等の金額について、計算方法等の詳細が不明確です。特に同族会社に青色繰越欠損金がある場合、所得金額は欠損金控除前か後かいうことが不明です。さらに、この制度における「役員」に、法人税法上の「みなし役員」が含まれるのかどうかもわかりません。これら不明点の取扱いは、今後公表される法令等で内容を確認することが必要です。
≪具体例≫
社長に役員報酬を1,200万円支給している不動産所有法人の例
不動産所有法人
不動産収入 2,000万円 経費 800万円 役員報酬 1,200万円
現行制度
2,000万円 - 800万円 - 1,200万円 = 法人所得 0 法人税額 0円
改正後
2,000万円 - 800万円 - 1,200万円 +
*230万円(給与所得控除)= 法人所得 230万円
※ 役員報酬 1,200万円に対する給与所得控除 230万円が損金にならないため法人の所得が増えることとなった。
230万円 × *22%(法人税率)= 506,000円 となり大幅な増税となります。
※ 法人税率 22%は所得 800万以下の場合
◇ひとことアドバイス!
税制改正大綱によりますと、ほとんどの(上記枠内の要件を満たす)同族法人のオーナー社長への役員報酬(たとえば600万円とすると)給与所得控除相当額(上記対応額は174万円)が損金不算入となりそうです。