大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ ≫ 関係会社間取引における「適正額」の判断

公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

関係会社間取引における「適正額」の判断

はじめに

税務署は同族間の取引について、恣意性はないか、利益操作はされていないか、という視点で調査を行います。そのような指摘を受けた時には、客観的に妥当な金額である、ということを示す根拠がなければなりません。

はっきりした証拠を示して、調査官を納得させることができれば良い訳ですが、その「適正額」というのはどのように考えればよいのか、以下の項目について見ていきたいと思います。

役員給与

会社が利益を出し、その会社から給与を受け取っているのだから役員給与をいくらにしようが大きなお世話だ、という経営者の方も少なくないでしょう。
しかし法人税法では、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入しない、と定められています。不相当に高額かどうかの判断は、実質基準と形式基準で行い、そのいずれにも該当する場合には、そのうちいずれか多い額が損金不算入となります。

(1)実質基準
役員給与の額が下の【1】~【3】に照らし、その役員に対して支給される金額として高すぎる部分があるかないか。
【1】役員の職務内容
【2】法人の収益とその使用人に対する給与の支給状況
【3】事業規模が同等の同業種の役員に対する給与の支給状況

(2)形式基準
定款の規定又は株主総会・社員総会等の決議により、役員に対する給与として支給できる額等を定めている法人において、各事業年度に役員に対して支給された給与の額の合計額等が、その定められている金額を超えているか、超えていないか。

役員給与については、平成18年度税制改正により、【1】定期同額給与 【2】事前確定届出給与 【3】利益連動給与 を除き原則損金不算入とされています。法人の恣意性についての指摘が、より厳しくなっているので、支給に関しては、金額の決定とともに、十分な準備が必要です。



◎ 法人が所有する車は・・

社用車としてベンツ等高級外車を所有している場合が多く見られます。社用車は必要であるとしても、高級車である必要はあまりありません。また、多くのケースでは休日等において、私的に利用していることが予想されます。このとき車輌関係費用を全額損金にしていると、場合によっては役員賞与という指摘を受ける恐れがあるので、実質的に判断し、一部を家事費処理する等の適切な処理が必要です。



役員との金銭貸借

(1)役員に対する金銭の貸付
実務上小規模な同族会社では、頻繁に役員への金銭の貸付と返済が繰り返されているにもかかわらず、その契約書がない場合が少なくありません。このような取引の中で、内容によっては実質的に貸借行為とみなされず、金銭の移動自体が報酬又は賞与とみなされる恐れがあるので、頻度、金額の多寡にかかわらず書面による契約書の作成が望ましいところです。

また、貸付が無利息であることも多くみられますが、ほとんどの法人が営利法人であることを考えると、利息の収受があることが当然と考えられます。通常の利率に満たない部分について、「役員に対する給与」と指摘される可能性は大いにあるので注意が必要です。

(2)役員からの金銭の借入
役員に対する貸付の場合は法人の性質上利息の収受を要求されますが、個人については営利活動を行い、利益追求するという前提で行動する性質はありません。同族会社において役員は株主という立場も兼ねていることが多く、金融機関等は役員からの借入を株主資本的性格が強いものとして捉えています。また法人にとって、無利息による借入れを行うことにより、本来流出すべき支払利息相当額が内部留保され、間接的に法人税課税が行われていると解釈できることから課税上の問題は発生しないと考えられます。

また、利息を収受する場合は、合理的に算出した適正な利率を設定し、その算出根拠を明確にしておけば問題は生じないと思われます。


関係者間の資産の売買

関係者間の資産の売買においては、双方の「都合」によって価額決定がなされる可能性が十分にあるので、売買価額が「適正」かどうかについて、課税サイドのチェックは厳しいものとなります。まずはその資産の時価を把握することが重要です。

(1)個人から法人へ資産を譲渡した場合
個人が法人に資産を譲渡する場合は、その対価の金額により、譲渡する個人については「みなし譲渡課税」、譲り受けた法人については「受贈益課税」や「役員賞与課税」、さらにその法人の他の株主については「みなし贈与課税」等の問題が生じます。

(2)法人から個人へ資産を譲渡した場合
法人が役員に対し、資産を時価より低い価額で譲渡した場合には、その譲渡価額と時価との差額は、その役員に対する賞与と認定されます。


関係者間の資産の賃貸借

法人と法人関係者との間の取引については、特に土地・建物の賃貸借について、借地権・借家権の問題も生ずるだけに、その適正な賃貸借料の算定においては、十分な客観的根拠、すなわち経済的合理性が必要です。

賃料を算定する方法として、【1】積算法 【2】事例比較法 【3】収益分析法等があり、これらのうち、どの方法が採用されるかについては、個々の賃貸物件の特殊性等を加味して、最も妥当なものを選択すべきであると考えられます。


おわりに

法人と法人関係者間の取引が行われている場合には税務調査時に着目されることが多く見られます。一般的な第三者間の取引と考えて、客観的に不自然にならない様にしなければなりません。金額の設定には注意し、帳票書類はしっかり保存し、計算の根拠を明確にしておくことが必要です。

2008.12/02

関連記事

友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
詳しいプロフィールはこちら ≫

お問い合わせ
株式会社トータル財務プラン
友弘正人公認会計士事務所
〒651-0087 神戸市中央区御幸通3丁目1番8号 ライオンズ 三宮ビル2階
TEL:078-221-7711 FAX:078-221-7717 https://topp.co.jp/