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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

後期高齢者医療制度と税金

後期高齢者医療制度とは
後期高齢者医療制度(長期医療制度)とは、75歳以上の方の健康保険制度として、平成20年4月1日より始まりました。従来は国民健康保険や健康保険組合等のそれぞれの制度に加入していた75歳以上の方をこの一つの制度に加入させることとし、これにより、保険料などの地域格差・制度格差の縮小を目的としています。

納付方法が変わった

昨秋の後期高齢者医療制度に係る話題のうちに「保険料の天引き問題」がありました。後期高齢者医療制度への移行により、今まで、国民健康保険料等を自分で納付(「普通徴収」)していた方でも原則「年金から天引き」で保険料を納めること(「特別徴収」)とされました。

 

実質増税?

ところで、この納付方法の変更により、税金が増加する可能性が出てきたことが、昨秋問題になったわけです。
では、どうしてそうなるのでしょう。
後期高齢者医療制度の保険料も国民健康保険料等と同じく、社会保険料として確定申告の際、所得から控除する(引く)ことができます。ただ、年金天引きにより保険料が徴収された場合、確定申告の際に社会保険料控除ができるのは、年金受給者当人のみとなります。
具体的に下図でみていきましょう。
事例 I をご覧ください。
今まで生計を一にする家族の方の保険料を自分で納付していた場合、その保険料もその支払った本人の税金の計算上、社会保険料控除を用いることができました。
ところが、その家族の保険料がその家族の受け取る年金から天引きされると、その保険料は、その家族自身が支払った扱いになり、その家族自身の社会保険料控除の対象とすることしかできません。

事例 II を見てください。
後期高齢者医療制度に移行し、保険料が特別徴収なったことにより、設例ですと所得税・住民税併せて2万7千5百円の増加になります。これは家族分の保険料について社会保険料控除が使えなくなったためです。場合によってはより税金の負担が増えることもあります。
そこで、これは実質増税ではないかとして、申請に基づき、20年10月から普通徴収を認めるという対策が打ち出されました。これにより、確定申告の際、今まで通りの社会保険料控除が使えることになりました。具体的な申請の方法等はお住まいの市区町村にお問い合わせください。

設例・後期高齢者医療制度と税金
【前提】 ご本人 公的年金等 200万円 / 保険料 27万円
  家族 公的年金等 120万円 / 保険料 20万円
事例 I :H19年以前の確定申告における税金の計算
  ご本人:(200万円-120万円)
年金の控除額
-(27万円+20万円)
社会保険料控除
-38万円<0
基礎控除
 

→所得がゼロなので税金はかかりません

 

家族:(120万円-120万円)-38万円<0

 

→所得がゼロなので税金はかかりません

事例 II :後期高齢者医療制度により年金天引となった場合の税金の計算
 

ご本人:(200万円-120万円)-27万円-38万円=15万円

 

15万円×5%+20万円×10%=27,500円
所得税   住民税(基礎控除は33万円)

  家族:(120万円-120万円)-20万円-38万円<0
 

→所得がゼロなので税金はかかりません

 

ここに注意!

(1) あくまで、原則は特別徴収ですから、普通徴収への切替は手続きが必要です。
(2) 平成20年については、75歳以上の方は従前の健康保険料等の保険料と後期高齢者医療制度の保険料の2種類の保険料を支払ったことになります。控除漏れのないようご注意ください。なお、平成21年以降に75歳になられた方もその75歳になられた年については2種類の保険料を支払うことになります。さらに、介護保険料という別の保険料も社会保険料控除の対象となりますのでご注意ください。

 

さらにここにも注意

以上は、後期高齢者医療制度についての話でしたが、65歳以上(75歳未満)の国民健康保険料についても、特別徴収への移行が検討されています(市区町村によっては平成20年より特別徴収開始)。この場合も、後期高齢者医療制度と同じ税金の問題が発生します。普通徴収への切替は別途、申請を行うことが必要となります。お住まいの市区町村に確認して適切な対応をお願いします。

2009.05/26

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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