大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ ≫ 上場企業の株価低迷期の自社株対策~ 自社株贈与等のチャンス ~

公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

上場企業の株価低迷期の自社株対策~ 自社株贈与等のチャンス ~

中堅法人のオーナーで上場株を所有されている方は、昨年の大幅な株価下落のため損をしたと考えられておられる方も多いと思います。
しかし、事業・経営承継を考えているオーナーにとっては、今が自社株贈与のチャンスです。その概要と相続税に与える影響を説明していきたいと思います。

今が自社株贈与等のチャンスの理由

中堅法人のオーナーの自社株の株価は、同業種(類似業種)の上場企業の株価を考慮して計算されています。(類似業種比準価額といいます。)
そのため同業種の上場企業の株価が下落すると自社株の株価も合わせて下落することになります。
日経平均株価の平成18年~平成20年の年末の金額と類似業種の株価(国税庁発表)の同年12月(平均)の金額は以下の通りです。

zu_01.gif

 日経平均の平成20年12月末は、平成18年12月末に比べて48.6%下落し、類似業種の株価の内、上場企業で不況の影響を一番受けている建設業・不動産業では70%以上の急落をしています。
今年(平成21年)3月末時点で日経平均は8,100円台で推移しています。今後3月決算の発表等により日経平均が下落した場合には、自社株の株価は更に下落すると考えられます。

zu_02.gif


設例(自社株贈与による相続税対策)

A(70歳)は不動産業の代表取締役をしており、平成18年12月に顧問の税理士に相続税の概算額を計算してもらいました。相続財産概算額は、自社株2億円、自宅等・預貯金等6,000万円の合計2億6,000万円、相続税は3,311万円でした。
今回、子供のC(40歳)が取締役に就任し、経営を本格的に引き継いでくれることになったことから、事業承継・相続対策を行いました。
 

1.親族図及び平成18年12月時点の財産等

zu_03.gif

 

2.現在の自社株の株価及び相続税対策

類似業種の株価が低い現在(平成20年12月時点)の財産額及び相続税は次頁のように変わります。本来、自社株の評価額※は、会社の配当・利益・財産内容等により変わりますが、今回の計算は便宜的に株価の下落率を基に計算しています。自社株の便宜的評価額は、2億円×(1-86.4%)=2,720万円まで減少します。  ※ 自社株の評価については顧問の公認会計士・税理士等の専門家にご確認下さい。

zu_04.gif

1) 自社株すべてを子供のCが相続し、他の財産を配偶者が相続したものとして相続税を計算しています。
2) 相続税は非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の適用を受けていないものとし計算しています。
3) 自宅・預貯金等の評価額は平成18年12月と同じとして、相続税を計算しています。

このように株価が急落したときには、相続税額も急落します。
ただし、相続税はAが亡くなった時の自社株等の金額により計算します。相続発生時に株価が上昇していると今回の株価下落の効果は得られません。そのため自社株を「相続時精算課税制度」を使って贈与します。この制度を利用すると、いったん贈与した財産を相続発生時に、贈与時の価額で相続財産に持ち戻して相続税を計算し、すでに納めた贈与税と相続税を精算することになります。持ち戻す財産の価額が贈与時の価額となりますので、相続時に評価が上昇していても相続税がその影響で高くなることはありません。

設例の場合で、Aが自社株の100株全てを相続時精算課税でCに贈与をした場合には、贈与時・相続時の税金は次のようになります。
 

   贈与時:(2,720万円-2,500万円)×20%= 44万円(贈与税:相続税の前払い)
   相続時:55万円(相続税全体)-44万円(贈与税)= 11万円(相続時の納税)
 

相続時精算課税贈与を行った結果、相続税が減少し、相続税を55万円に固定することができます。
 

最後に
昨年のサブプライムショック等の金融危機により中小企業の経営は厳しい状況にありますが、自社株の贈与については、効果的に行うことができる時期になっています。
また、昨年の10月からは、経営・事業承継に関する法律「経営の承継の円滑化に関する法律」が施行され、今年2月には同法における非上場株式(自社株)等評価ガイドラインも公表され、中小企業の経営・事業承継をバックアップする体制が整ってきております。
まずは、自社株贈与が効果的かどうか、お気軽に顧問の公認会計士・税理士に自社株の評価のご依頼をしてみて下さい。
自社株の対策と合わせて行うとより効果的な事業承継については、相続全体(事業用財産とその他の財産)の承継計画とタイミングが重要となりますので弁護士、公認会計士・税理士などの専門家に早めに相談し、相続・会社の方向性を考えていく必要があります。

2009.06/09

関連記事

友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
詳しいプロフィールはこちら ≫

お問い合わせ
株式会社トータル財務プラン
友弘正人公認会計士事務所
〒651-0087 神戸市中央区御幸通3丁目1番8号 ライオンズ 三宮ビル2階
TEL:078-221-7711 FAX:078-221-7717 https://topp.co.jp/