従業員に支払うボーナスは全額損金算入されますが、役員に対する支払いは、事前確定届出給与として毎月の定額給与とは別に、支払い時期・支払い金額を事前に届け出る必要があります。今回は、税務署から損金算入を否認されない為の細かいチェックポイントを説明したいと思います。
届出書類と提出期限
(1)届出書
事前確定届出給与に関する届出書
(2)提出期限
(1)職務執行開始にあたり、株主総会や社員総会等で支給時期や支給額の決議をした場合、次の(イ)、(ロ)のいずれか早い日
(イ)
決議をした日(決議をした日が職務執行開始日後である場合は、その開始日)から1ヶ月を経過する日
(ロ) 事業年度開始の日から4ヶ月経過日
(2)臨時改定事由により、給与を支給することになった場合
上記(イ)、(ロ)と臨時改定事由が生じた日から1ヶ月を経過する日までの、いずれか遅い日まで
チェックポイント
1.届出給与は、職務執行の開始日までに支給時期・支給額が定められていたか
(
例 )平成21年6月開催の株主総会で支給時期・支給額を定めた場合
2.届出が下記??のいずれか早い日までに提出されたものか
(1)株主総会等で決議をした日から1ヶ月を経過する日
(2)会計期間開始後4ヶ月を経過する日
(
例 )株主総会開催日が「平成21年–6月27日」の場合
●「決議をした日から1月を経過する日」とは?
「決議をした日」の翌日を起算日として、暦に従って計算する。例えば、決議をした日が6月27日の場合、6月28日が起算日となり翌月における起算日に応答する日(7月28日)の前日である7月27日が「1月を経過する日」なります。
3.届出どおり支給されているか
原則:届け出た支給額と、実際の支給額が異なる場合には「全額損金不算入」
判断単位:職務執行期間ごと
留意点:当事業年度は定めどおり支給したものの、翌事業年度は定めどおり支給しなかった場合、当事業年度中に支給した給与まで損金不算入は及ばない(例2)
(
例1 )届出金額と支給金額が同額の場合
届出金額と支給金額が同額の場合には全く問題はありません。
( 例2 )支給金額のうち翌期に支給した金額が届出額を下回る場合
原則は全額損金不算入となりますが、支給しなかったことにより、直前の事業年度の課税所得に影響を与えるようなものではないため、翌事業年度に支給した給与のみ「損金不算入」となります。ただし、一時的に資金繰りの都合で支給できなくなり、差額を未払い計上した場合には、債務が確定したものとして全額損金計上が認められます。
( 例3
)支給金額のうち当期に支給した金額が届出額を下回る場合
当期の支給額(100万円)だけでなく、翌期支給額(200万円)も損金不算入となります。
4.届出内容を変更する場合、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を下記の提出期限までに提出されているか
(1)役員の職制上の地位の変更等に伴う変更の場合(臨時改定事由)
臨時改定事由が生じた日から1ヶ月を経過する日まで
(2)法人の経営状況の著しい悪化等に伴う変更の場合(業績悪化改定事由)
改定の内容についての株主総会や社員総会等による変更決議をした日から1ヶ月を経過する日まで(変更前の直前の届出に係る定めに基づく給与の支給日が1ヶ月経過する日前の場合は、その支給日の前日まで)
( 例 )業績悪化に伴い平成21年10月10日に減額改定することが決議された場合
● 臨時改定事由とは?
役員の急逝により他の役員の職制上の地位が変更された場合や、不祥事があったこと等に伴いその役員の職務の内容について重大な変更が行われた場合など、やむを得ない事情のこと。
● 業績悪化改定事由とは?
事業年度においてその法人の経営の状況が著しく悪化したことを指し、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標に達しなかったことなどはこれに含まれないが、経営状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況は、これに含まれるものと考えられます。
事前確定届出給与は、届出の提出時期が遅れると、支給したとしても全額損金不算入となってしまいますので、支給を考えられる場合は、早めに担当者に相談されることをおすすめします。