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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

賃貸住宅管理業者の業務処理上のポイント

【1】はじめに
賃貸管理業者登録制度については、平成23年12月1日に開始され、現在は、各申込み業者に対し、順次登録手続が実施されている状況です。
前回は、賃貸管理業者登録規定に基づく登録の際の注意点について、「解釈・運用基準」を参考にして説明しましたが、今回は、登録後の業務処理の方法についての規定である、賃貸住宅管理業務処理準則の内容を、「解釈・運用基準」を参考にして説明したいと思います。

【2】賃貸住宅管理業務処理準則

1.第2条関係
第2条は、賃貸管理業者が業務に従事するに当たり証明書の携帯等について定めています。

  1. (1)従業者証明書の様式について
    従業者証明書を携帯している者の氏名、当該従業者が登録業者の従業者であること及び登録業者の所在地等が賃借人等からみて明らかになるものであれば、従業者証明書の形式等は問いません。例えば、登録業者が宅地建物取引業者又はマンション管理業者を兼ねている場合は、宅地建物取引業法又はマンションの管理の適正化の推進に関する法律の規定に基づく従業者証明書をもって本規定の従業者証明書とすることができるとされています。また、賃借人居住安定法が成立した場合の保証会社の発行する従業者証明書も同様と考えられます。
  2. (2)従業者証明書を携帯すべき者の範囲について
    従業者証明書を携帯すべき者とは、代表者(いわゆる社長)及び役員を含み、登録業者と雇用関係にあり、管理事務を通じて賃借人等の関係者と接する機会のある従業者等をいいます。例えば登録業者から管理事務を再委託された登録業者でない者の従業者は対象とはなりませんが、当該従業者であっても基幹事務を再委託された場合は、賃借人等と接する機会を持つことが想定されるため、従業者証明書を携帯することが望ましいとされています。
    例えば、退去時の原状回復及び敷金精算のための立会確認を従業者以外の第三者に再委託する場合には、立会者が従業者証明書を携帯することまで要求されていませんが、退去時の敷金精算は基幹事務の一つですので、再委託先が退室立ち会いする場合には従業者証明書を携帯することが望ましいこととなります。
  3. (3)第2項の趣旨について
    第2項の「賃借人等その他の関係者」とは、現に管理を委託している賃貸人や入居中の賃借人のみならず、管理を委託しようとする賃貸人や入居予定者、管理対象の賃貸住宅の近隣住民等を含むものとされています。したがって、家賃の集金等の基幹事務を行う場合には、登録業者の従業者はその事務の相手方から証明書の提示を求められたときには、必ず証明書を提示しなければなりません。
    なお、基幹事務以外の近隣のクレーム対応や、建物の清掃、修繕等の維持管理業務の遂行の場合には、本制度の適用がありませんので、証明書の提示の義務は発生しないと考えられますが、管理業者としての信頼を築くためにはその場合でも証明書の提示をすることが望ましいと考えられます。

2.第5条関係
第5条は、賃貸人に対する管理受託契約に関する重要事項の説明等が定められています。

  1. (1)重要事項の説明等を行う者について
    登録業者が賃貸人に対して管理受託契約の重要事項の説明等を行う者について資格要件は設けられていませんが、例えば、宅地建物取引主任者や賃貸不動産管理に関する民間資格を取得している者など、関係法令の知識や管理の実務を熟知した専門性を有する者が、相手方に対して適切に説明を行うことが望まれます。例えば、賃貸不動産経営管理士が説明することが望ましいとされています。
    また、重要事項の説明等を、本条の義務がある登録業者以外の者に委託することは可能とされています。ただし、当該登録業者の責任において、適切に重要事項の説明等を実施できる者に説明を行わせることが必要です。以下、第6条から第13条までの重要事項の説明や書面の交付についても同様の考え方とされています。
  2. (2)重要事項説明の「書面」について
    重要事項の説明のための書面について様式は問われませんが、第5条各号に掲げる事項が記載されてことが必要です。
  3. (3)重要事項説明の「書面」の交付方法について
    重要事項説明の書面の交付方法については、訪問、郵送等の手段は問いませんが、相手方に確実に交付されることが必要です。
  4. (4)重要事項の説明等を行う場所について
    重要事項の説明や書面の交付を行う場所については、必ずしも店舗や事務所である必要はありませんが、賃貸人に十分に説明することが可能な場所、確実に交付できる場所である必要があります。ただし、書面の交付については、前記のとおり、郵送等による方法でもよいとされています。また、重要事項の説明については、原則として、対面による説明が望まれるが、説明を受ける相手方からの依頼による場合等で相手方が十分に納得できる方法であれば、電話等による方法でもよいとされています。
  5. (5)第4号の「管理事務の内容及び実施方法」について
    第4号に基づく説明は、管理受託契約を締結する賃貸人への家賃等の送金方法や振込日、緊急時の連絡対応等の契約の管理に係る事項、建物・設備の維持管理や清掃等に係る事項のほか、登録規程別記様式第3号に記載する分別管理等の状況を説明することなどが考えられます。仮に、賃貸人が賃貸住宅の管理に関する十分な知識や経験を有している場合であっても、管理事務の方法や契約内容は物件毎に異なるため、契約毎に本条に基づく説明を行う必要があります。
  6. (6)第5号の「管理事務に要する費用」について
    登録業者は管理報酬について賃貸人に説明する必要があり、また、管理事務の実施に対する正当な報酬を請求することができます。
  7. (7)管理受託契約の変更について
    管理受託契約締結後に管理事務の内容等に変更が生ずる場合は、管理受託契約の変更を行うことになるため、相手方と協議し、当該変更部分については、重要事項の説明等を行うことが必要です。

3.第6条関係
第6条は管理受託契約成立時の書面の交付を定めています。
管理受託契約書は、管理受託契約を締結したときに交付するものですが、当該契約締結に係る場で、前条の重要事項の説明等と本条の書面の交付を連続して行うことは可能です。したがって、同一の書面で重要事項説明の書面と管理受託契約の書面を兼ねることも許されます。ただし、当該契約が成立するまでに重要事項の説明を行い、賃貸人が当該契約内容を十分に理解した上で、契約締結、書面の交付が行われることが必要です。

4.第7条関係
第7条は、賃借人に対する管理受託契約の内容を記載した書面の交付を定めています。

  1. (1) 第1項第2号の「事務所の電話番号その他の連絡先等」とは、賃借人が、緊急時に登録業者に確実に連絡を取ることができる連絡先等をいうものであり、コールセンター等に連絡受付業務を委託している場合にあっては、その連絡先等を含むこととされています。
  2. (2) 第3項の「当該変更の内容を周知するための必要な措置」としては、連絡先の電話番号や担当者の変更については、賃貸住宅内に設置されている掲示板への掲示によって行うことができますが、家賃等の金銭の振込先口座の変更については、当該賃貸住宅に入居している各賃借人に対し、書面交付等の方法により変更内容を確実に周知できる方法を用いる必要があります。
  3. (3) 宅地建物取引業法における貸借の代理若しくは媒介において第7条の記載事項を満たす重要事項説明書や賃貸借契約書において、第7条に規定する必要事項が全て記載されている場合、重ねて登録業者が書面交付を行う必要はありませんが、登録業者は、各賃借人に本条に規定する必要事項が確実に交付されることを確保する必要があります。

5.第8条関係
第8条はサブリースの場合の登録業者の重要事項説明について定めています。

  1. (1)重要事項説明の時期について
    第8条各号の項目は、全ての項目について同時期に説明する必要はありませんが、家賃や転貸条件等の変動要素がある項目についても、賃貸借契約を締結するまでに、全ての項目の説明を終える必要があります。
  2. (2)第3号の「転貸の条件等に関する事項」について
    転貸の条件等に関する事項は、賃貸人が契約締結するか否かの意思決定の上できわめて重要な事項となることから、そのような条件等がある場合には、賃貸人が当該事項について十分に理解できるよう、適切に説明、書面の交付を実施する必要があります。例えば、以下のような記載事項が考えられます。
    I. 転貸に係る契約期間、家賃等の金銭、転借人の対象等に係る条件等
    II. 賃貸人からの借り上げ家賃、家賃保証、空室保証、将来の契約条件の変動に係る条件等
  3. (3)第4号の「転貸人の地位の承継に関する事項」について
    賃貸借契約が終了した場合に転貸人の地位の承継に関する定めがある場合には、当該事項について賃貸人が十分に理解できるよう、適切に説明、書面の交付を実施する必要があります。

6.第9条関係
第9条は、サブリース原契約書の交付について定めています。
第9条第1号については、宅地建物取引業法第37条第2項に基づく書面が交付される場合、本条に基づき重ねて書面交付を行う必要はありませんが、第2号から第4号までについては、適用除外となっていないことに留意する必要があります。なお、宅地建物取引業法第37条第2項に基づく書面において、第2号から第4号までに規定する必要事項が全て記載されている場合、重ねて登録業者が書面交付を行う必要はありませんが、登録業者は、本条に規定する必要事項が賃貸人に確実に交付されることを確保する必要があります。

7.第10条関係
第10条は、サブリース業者が転貸の賃借人に対して重要事項説明義務を定めています。
第10条は、転貸の場合、サブリース業者に対して宅地建物取引業法は適用されないものの、契約の重要事項については転借人が適切に理解することが後の紛争発生を防ぐ上でも重要であることから、登録業者に説明義務を課すものであるが、代理若しくは媒介を行う宅地建物取引業者が宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項の説明等を行う場合、登録業者が本条に基づき重要事項の説明等を行う必要はありません。なお、転借人となっている法人の社名変更や、転借人に同居者を追加することに伴う契約名義の変更、定期建物賃貸借契約の同条件での再契約等において、同一の転借人が継続して当該賃貸住宅に入居しているとみなすことができる場合については、本条は適用されないものとされています。

8.第11条関係
第11条は、サブリースの場合の賃借人に対する賃貸借契約の成立時の書面の交付について定めています。
第10条において、定期建物賃貸借契約の同条件での再契約等において、同一の転借人が継続して当該賃貸住宅に入居しているとみなすことができる場合については、重要事項の説明等を行う必要がないものとする旨を示されていますが、第11条については、引き続き同一の転借人が継続して当該賃貸住宅に入居する場合であっても、定期建物賃貸借契約等より再契約を締結した場合には、本条に基づく書面交付が必要であることに留意する必要があります。

9.第12条関係
第12条は、賃借人に対する契約更新時の書面の交付について定めています。

  1. (1)第12条の趣旨について
    第12条は、契約更新時の際、契約更新事務を受託している登録業者又は転貸人である登録業者から賃借人(又は転借人)に対して更新時に変更内容等を通知することにより、契約内容の再確認と後の紛争発生の未然に防止することです。第12条では、書面の交付を義務づけているところですが、更新後の家賃やその支払時期及び方法、金銭の授受に関する定めは賃借人にとってきわめて重要な内容であることから、書面の交付のみでなく、当該内容について説明を行うことが望まれるとされています。
    なお、登録業者が賃貸借契約に基づいて更新する意思の確認を賃借人に対して書面を交付し行う場合などにおいて、当該書面内容が本条各号を満たし、当該内容に変更がないときは、更新前の書面交付であっても当該書面交付を本条に基づく書面とみなすこととされています。
  2. (2)第12条の適用対象外について
    賃借人から異議申し出がない場合に従前どおりの契約内容で更新が行われる旨の自動更新条項の規定等、入居の際に締結した賃貸借契約の中で更新を行う場合の手続きが明記されており、その規定内容どおりに更新される場合は、賃借人も予め契約内容を理解していると考えられることから、本条は適用がありませんのでご注意下さい。具体的には、次の場合の更新が適用対象外になるものと想定されています。
    I. 賃貸借契約書の中に、賃貸借契約の更新時に賃借人から異議申し出がない場合に従前の条件どおりで更新が行われる旨の特約があり、実際に当初契約どおりの更新が行われる場合(いわゆる自動更新)
    II. 更新後の契約内容について、賃借人が異議を申し出、賃貸人との間で合意がないまま契約期間を経過し、引き続き賃借人が入居している場合(いわゆる法定更新)
  3. (3)書面の記載内容について
    第12条の通知は、各号の項目のうち、変更があった部分について賃借人に書面交付をすれば足りるとされています。
  4. (4)再契約の扱いについて
    定期建物賃貸借契約の再契約のように、従前の契約を終了し、新たな契約をする場合、定期建物賃貸借の再契約は、更新ではなく新たな賃貸借契約締結となることから、第12条の適用は無く、第7条第2項若しくは第10条及び第11条が適用されることとなります。

10.第13条関係
第13条は、賃借人に対する契約終了時における書面の交付等を定めています。

  1. (1)第13条の趣旨について
    第13条は、退去時の原状回復に伴う敷金精算等の紛争が賃貸住宅に関する紛争の多くを占めている状況等に鑑み、賃借人(又は転借人)が賃貸借契約の終了によって退去する場合に、終了事務を受託している登録業者又は転貸人である登録業者が実施する退去手続き関係の業務について定めたものです。
  2. (2)第1項の「算定の基礎について記載した書面」について
    賃貸借契約が終了し賃借人が退去する際、賃借人が負担する必要のある原状回復費用や未精算の家賃など、登録業者が賃借人に対して債務の額を提示しようとするときは、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年8月16日改訂版)等を参考に、現況確認表やチェックリスト等を活用して、当該債務金額の算定の考え方が明らかとなる書面を交付する必要があります。
  3. (3)賃借人の退去時の現況確認に係る立ち会いについて
    退去時の現況確認のための立ち会いは、登録業者の義務ではないが、後の紛争を未然に防止するためには、退去時に立ち会い、賃借人と現状を確認し、現況確認表等に双方が署名又は記名押印することが望ましいとされています。
  4. (4)賃借人への説明について
    第2項による説明は、直接口頭で行うほか、電話やメールによる方法でもよいとされていますが、退去する賃借人に対して適切に説明を行うことが必要です。退去した後、他の賃借人が入居した場合、現況確認が困難であるため、通常、賃借人の退去後半年を経過したものについては説明は困難であると考えられます。ゆえに、登録業者は、賃借人の退去後、速やかに賃借人が負担する必要のある原状回復費用や未精算の家賃などについて、算定の基礎とともに提示し、後の紛争とならないよう賃借人に説明することが望まれます。

11.第14条関係
第14条は管理事務の再委託について定めています。

  1. (1)第1項の趣旨について
    登録業者は、管理受託契約に管理事務の再委託に関する事項が定められている場合、再委託を行うことができます。この場合において、第5条及び第6条に基づき、登録業者は、当該事項について重要事項の説明等を行う必要があることに留意する必要があります。再委託先は、登録業者である必要はないが、賃貸人と管理受託契約を交わした登録業者が再委託先の管理事務の実施についても責任を持つ必要があることに留意する必要があります。
  2. (2)第2項の趣旨について
    賃貸人との管理受託契約の場合、登録業者は、管理受託契約に基づき管理事務を実施することになりますが、全ての基幹事務を他者に委託する場合、登録業者は、管理事務の中心である基幹事務を一切行わないこととなり、基幹事務を含む管理事務を行う管理業者を登録するという本制度の趣旨にそぐわないことから、再委託は基幹事務の一部については認められるものの、基幹事務の全てを他者に委託することは禁止されています。再委託の時期を問わず結果的に基幹事務の全てについて他者に再委託することや、基幹事務を複数の者に分割して全て委託することも本条に違反します。ただし、一括再委託に該当するかどうかの判断については、契約ごとに判断することとされています。
    また、転貸における転借人との賃貸借契約の場合、登録業者が自ら基幹事務を一切行うことなく、基幹事務の全てを他者に委託するときは、本項に違反することとなります。
    なお、親会社が登録を受けて、子会社に全ての管理事務を委託する場合、登録を受けた親会社が、自ら管理を行わず基幹事務の全てを子会社に委託するときも、一括再委託に該当することに留意する必要があります。
  3. (3)第3項の趣旨について
    登録業者は、管理事務を再委託する場合、当該委託先の管理業者が登録業者でないときであっても本準則を遵守するよう努めるものとされています。ただし、登録業者が再委託先である場合、当該登録業者は、本準則にのっとり、適切に業務を行わなければならないことに留意する必要があります。

12.第15条関係
第15条は、賃貸借契約に基づかない金銭を賃借人から受領したときの通知について定めています。
第15条は、登録業者と賃借人との間で、賃貸人が把握していない金銭等の受領が行われることの無いよう、賃貸借契約に定めのない金銭等を登録業者が受領した場合、賃貸人に通知することを義務づけたものです。通知対象となる金銭等は、登録業者が管理受託契約により管理業務を行うにあたり受領する、賃貸借契約に定めのない金銭等とされています。例えば、管理受託契約に基づき行う窓ガラスの修理・交換費用について賃借人から受領した場合に通知することが考えられます。なお、報告時期や方法等については第17条の管理事務の報告方法も勘案しながら、適切に登録業者が判断して行うものとされています。
しかし、管理受託契約に基づかない金銭の授受である、登録業者が賃借人に対し、独自に商品を販売したり保険代理店として保険契約を締結する場合には、第15条の適用は無く、通知は不要であると考えられます。

13.第16条関係
第16条は登録業者の財産の分別管理について定めています。

  1. (1)財産の分別管理の方法について
    賃借人から受領した家賃、敷金等については、自社の財産、賃貸人及び他の賃貸人の財産を整然と分別して管理する義務があります。当該財産の分別管理の状況について登録規程第8条に基づき、毎事業年度終了後3ヶ月以内に国土交通省に報告することとなります。
  2. (2)転貸の扱いについて
    転貸の場合は、登録業者自らが賃貸人として家賃を受領するため、「自己の固有財産」とは当該登録業者が賃貸人として転借人から受領する家賃等をいい、「他の賃貸人の財産」とは、当該登録業者が賃借人として賃貸人に支払う家賃等を指すものとされています。ゆえに、転借人から受領する家賃等のうち、当該登録業者が賃借人として賃貸人に支払う家賃等の額については、当該賃貸人に支払うまでの間、明確に区分して管理することなどが求められています。

14.第17条関係
第17条は管理事務の報告について定めています。
管理事務の定期報告の報告内容及び報告期間については、賃貸人と登録業者の信頼関係を維持できるよう、業務内容に応じて、適切に実施される必要があります。また、報告方法についても、報告内容に相応しい適切な方法を各登録業者において定めるものとされています。

15.第18条関係
第18条は管理事務の終了に伴う通知について定めています。
第18条の通知は、従前の管理事務を受託していた登録業者が行うものですが、賃貸人又は新たに管理事務を行う管理業者が通知することも可能です。ただし、当該登録業者の責任において、適切に当該通知を確保することが必要があります。なお、一般に、管理業者が代わると、家賃の振込み先口座も代わることになると考えられるので、各賃借人に確実に通知される方法を用いることが必要です。

16.第19条関係
第19条は、登録業者の帳簿の作成について定めています。

  1. (1)帳簿の記載事項について
    帳簿の作成・保存は、管理業務を適正に実施するために必要なものとして求めているものであり、登録業者は事務所ごとにその業務に関する帳簿を備え、管理受託契約及び転貸に係る賃貸借契約を締結する度に、記載する必要がある。様式は各登録業者において、適切なものを用意する必要があるが、次のような記載事項が考えられています。
    I. 管理受託契約を締結した年月日
    II. 管理受託契約を締結した賃貸人の氏名
    III. 対象となる賃貸住宅の所在地及び賃貸住宅の部分に関する事項
    IV. 受託した管理事務(基幹事務)の内容
    V. 対象となる賃貸住宅における入居状況
    VI. 管理事務に係る管理報酬の額
  2. (2)帳簿の保存期間について
    帳簿の保存期間は、少なくとも5年以上を目処とされています。
  3. (3)電子媒体による帳簿等の保存について
    登録業者が事務所ごとに備える帳簿は、その内容が、本社又は支店等の電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスク等に記録し、オンライン管理され、当該事務所において、必要に応じ、紙面に印刷、表示することができる場合には、当該記録による保存を行うことができるとされています。

17.第20条関係
第20条は賃借人等への書類の閲覧について定めています。

  1. (1)閲覧対象の書面について
    閲覧対象は、登録規程別記様式第三号の書面とされています。
  2. (2)書類の閲覧ができる者の範囲について
    第20条の「賃借人等」とは、登録業者の管理する賃貸住宅に入居している賃借人(当該賃貸住宅に入居を検討している者を含む。)及び登録業者に管理事務を委託又は転貸に係る貸借をしている賃貸人(当該登録業者に管理事務を委託又は転貸に係る貸借を検討している者を含む。)をいいます。したがって、賃貸住宅への入居を検討している者に対しては、書類の閲覧請求に応じる義務が発生します。
  3. (3)書類の閲覧手続き等について
    閲覧申請の手続きについては、登録業者において適切に定めるものとされています。閲覧の方法は、電磁的記録を画面上で確認する方法により行うことも可能であるが、閲覧させることについて、登録業者は費用を徴収することはできないことに留意する。
  4. (4)電子媒体による登録規程別記様式第三号の書面の保存について
    登録業者が事務所ごとに備える当該書面は、その内容が、本社又は支店等の電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスク等に記録し、オンライン管理され、当該事務所において、必要に応じ、紙面に印刷、表示することができる場合には、紙面の形式で事務所ごとに据え置く必要はありません。したがって、インターネット等を利用して書類の閲覧に代わるシステムを設けておけば、個別の閲覧請求に対応しなくてもよいこととなります。

【3】最後に

賃貸住宅管理業者登録制度の業務処理上の重要なポイントも、上記の通り多岐に亘っており、また、解釈・運用基準を見ても、明確でない部分もまだまだ見られます。このため、業務処理の内容についても、実際に制度の運用が始まってみないと分からない点も多く非常に不十分な点がありますことをご容赦願いたいと思います。また、本制度は基幹事務である家賃、敷金等の受領に係る事務、賃貸借契約の更新に係る事務又は賃貸借契約の終了に係る事務のみを対象としており、それ以外の事務については、金銭の受領の通知等関係する部分を除いては、それぞれの管理業者が独自に行うべき業務がまだまだ多く、その業務との整合性、書類の整備についてもこれからの課題ではないかと思います。
したがって、まだまだ様子見の管理業者も多数存在すると思いますが、今後は国の賃貸住宅政策における重要な柱となる制度であると予想されますので、まだ登録を検討していない管理業者は、是非とも登録の方向でご検討いただければと思います。

2012.01/24

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修