空室を完璧に無くす魔法のような対策はありません。
でも、どうにかして、空室を無くしたい。
この願いは賃貸経営をする大家さんをはじめ、それを管理する側の管理会社にとって永遠のテーマといえます。
そこで、どのようにすれば空室が減るのかを考えてみたいと思います。
1.原因を見つける
空室の対策を考える前に、忘れてはいけない事があります。
空室の原因を見極めることです。
空室とは、問題の発生による現象のひとつです。
なぜ、空室になったのか原因に気付かないまま対策をしても、充分な効果を得る事ができません。
2.原因に対しての対策
原因が複数ある場合は優先度を付けて、それぞれに対策を検討する必要があります。
ひとつの原因に対しても、ひとつではなく複数の対策が必要な場合もあります。
また、対策には管理会社や大家さんのどちらか一方の努力だけでは対応できないものもあります。
例えば、設備の老朽化、陳腐化により物件価値が低下している場合などは大家さんの理解と出資が必要です。
場合によっては、物件の売却を検討するのもひとつの選択です。
売却は空室の問題解決にはなりませんが、大家さんが賃貸経営を投資として割り切っているのであれば、これもひとつの選択です。
原因と対策の一例
原 因 | 対 策 |
競合物件との比較により劣る (賃料、敷金、設備など) |
競合に条件・状況を合わせる 差別化を図る 競合を避ける(2DKから1LDKに変えるなど) |
管理会社の管理運営における能力の問題 (クレーム処理、募集業務、ハードメンテナンス、清掃など) |
【管理会社】 業務フローの見直し、社内教育の実施 【大家さん】 改善要求 管理会社の変更 |
周囲または物件における犯罪の発生 | セキュリティ対策 入居者への注意の呼びかけ 被害者への誠意ある対応 |
入居者間のトラブル | トラブルの原因をよく確認した上で口頭、書面などによる注意を促す 再発する入居者は退去させる事を検討 |
管理会社の業務怠慢 | 【大家さん】 管理会社が空室の募集に力を入れていない場合は改善要求、管理会社の変更 |
仲介業者が物件を知らない | 仲介業者の営業担当者の定着率が低い為、物件を知らない営業担当者もいるので物件概要を作成し、図面、写真入りで積極的にPRする |
市場の悪化 | 地域経済の悪化により、借手がいなくなった場合 例えば、工場閉鎖・大学移転などの場合は、悪化した市場に合わせて賃料の値下げや用途、仕様の見直しが必要 |
環境の悪化 (騒音、悪臭、暴力団) |
騒音であれば、2重サッシ 悪臭であれば、市や保険所に相談 防犯の問題は防犯設備士や警察に相談 |
≪比較についてアドバイス≫
競合物件との比較により劣る場合。これは、もっとも良くある話ですが、充分な賃料比較分析を行う必要があります。
比較の対象として、ロケーション、築年数、見栄え、賃料、設備、契約条件、など総合的に比較し、その結果、賃料の増減を考えます。
≪競合対象についてアドバイス≫
競合の対象は賃貸物件に限りません。
今までは競合と言えば、賃貸だけでしたが、今は分譲マンションも競合物件の対象になります。
例えば、ファミリー向けの分譲マンションが建つことにより、周囲の賃貸マンションの空室が増加する事はよくある事です。
単身用の分譲マンションと違い、ファミリーは学校区の関係により、同一エリアでの転居が多いのがその理由です。
単身赴任者が利用するワンルームマンションなどでは、マンスリーマンションも競合の対象になっています。
3.具体的な対策のポイント
上記の空室要因に対して、一般的に行われている空室対策のポイントを説明します。
大家さんの立場と管理会社の立場では対策の内容は変わりますが、以下は分けずに記載しました。
1) 一括借上げ契約=サブリース契約※1
2) リフォーム
3) 賃料等の値下げ
4) 契約条件の緩和
5) 用途の変更
※1サブリース契約、または、サブリース原契約と言われています
1) 一括借上げ契約=サブリース契約
管理会社が一括して部屋を借上げる契約の事です。本来は物件単位で借上げるのですが、今ではひと部屋単位で借上げる管理会社もでてきました。この場合、契約期間中は管理会社が部屋を借上げているので、空室や滞納の心配はありません。
2) リフォーム
原状回復するリフォームと新たな付加価値を加えるリフォームでは、同じリフォームでも意味が違います。
競合物件と比較して見劣りするので、新しい設備に変えるリフォームでは、競合物件と同程度の賃料を取れる可能性があります。
付加価値を加えるリフォームではいくらの賃料増加が望めるか、付加価値後の競合物件との比較分析により、賃料の増加を予測する必要があります。
また、リフォームによりターゲットとする入居者層を変更して、過当競争の競合市場から避ける方法もあります。
2LDKのファミリー物件から1LDKへの間取り変更がそれにあたります。
3)賃料等の値下げ
競合との比較の結果、賃料、敷金などが高いと分かった場合、市場の相場に合わせるか、賃料を維持するだけの設備や条件に変更する必要があります。
4)契約条件の緩和
契約者を法人限定から個人契約も可能にする緩和。
積極的に高齢者や外国人の契約を認めるようにするなど、地域に合わせた契約条件の緩和を検討してください。
5)用途の変更
オフィスビルから住居マンションへのコンバージョンや、一部の事務所や住居をSOHOとしての用途変更。
事務所・店舗・ガレージをトランクルームに用途変更、マンスリーマンションとしての用途変更などがあります。