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リプロス代表・松尾充泰の賃貸経営ノウハウ

物件の設備・仕様を考える

 物件の建築やリフォームを考えたとき、どのような設備・仕様にすれば良いか、非常に悩まれると思います。

 本来は、永遠に入居者に好まれる物を提供できれば、良いのですが、それは、非常に難しいと思います。

 なぜなら、ライフスタイルが変化し、好みが変わるからです。

 私はリフォームを繰り返しながら、時代にあった物を提供できれば、それで良いと考えています。

 もちろん、投資した資金を回収できる事は前提条件です。

 以下は、私が日ごろコンサルティングなどで、ご提案する時に考えるポイントを纏めてみました。

 まず、誰が利用するのかを考え(ターゲット)、入居者としてターゲットにした人達が求める必須の設備・仕様と、差別化を図るため付加価値仕様を7つに分類したキーワードから考えます。

 このキーワードは固定されたものではなく、現在のトレンドを繁栄させて自分自身の尺度でリストアップしたものです。

 そして、検討した設備・仕様により発生するリスクを考え、最後に付加価値仕様の収益性を検証します。

 尚、必須の仕様について、検証が不要と言っているのではありません。

 付加価値の設備・仕様については、収益性を見定め実施するかどかの判断をする為に、重視している為、特筆しました。また、必ず、付加価値がいるわけでもありません

≪地域経済などを含めた市場を考える≫
 例えば大学生を狙った物件の場合、大学が存続できるかを考える。

 これは、少子化ゆえに特色もない大学はなくなるかもしれないからです。

 国公立の大学でさえ、再編、統合される事が決まっています。
 人口統計、毎年の入学者数など、可能な限りターゲット地域のデータを収集し、動向を考える必要があります。

≪ターゲットを考える≫
どの分類に属するターゲットか。
分類1(契約者):個人契約・法人契約
分類2(年齢):若年、青年、中年、高齢
分類3(世帯):単身、ファミリー

≪仕様の分類を考える≫
1.必須仕様
入居者を確保する為に、最低限必要な仕様
安全性の高い鍵、安全な建材

2.付加価値仕様
必須の最低限を上回る仕様
例)TVインターホン、追い炊き機能、シーリングファン、ブロードバンドネットワーク、セキュリティシステム、床下収納、高機能システムキッチンなど

3.サービス
コンシュルジュサービスなど

≪仕様のキーワード≫
1)高齢化社会、ユニバーサルデザイン
 高齢化社会を既に迎えている現在、少なからず入居者として高齢者を意識していると思われます。

 都市圏であれば30年後も若者の需要を想定できますが、現在の斬新なデザインが将来的に若者に支持されるかはわかりません。

 かといって、早急に高齢者に合わせた仕様が必要かと言えば、まだその必要もありません。

 つまり、後から高齢者に合わせた仕様にすることができる構造であれば良いのです。

 もし、高齢者仕様を今から導入するのであれば、高齢者に限定するのではなく、子どもや障害者など多くの人にとって使いやすいユニバーサルデザインを意識する事をお勧めします。

2)安全 と 健康 (防犯・防災・シックハウス症候群)
 水と安全はただで手に入ると考えられていた日本も国際社会の仲間入りをして、水も安全もお金を出して手に入れる時代になりました。

 そして、「住居」を考えると「防犯対策」は気になるところです。

 凶悪犯罪が多発していることから見ても、今後もその傾向は益々強まるでしょう。

 また、入居者の安全を守る事は、大家さんの賃貸経営を守ることに繋がります。

 事件が発生した物件に住みたいと思う人はなく、事件後は入居者の確保が難しいからです。

 健康面では「シックハウス症候群」という言葉を良く聞かれると思います。

 これは、建材や家具などに使われる化学物質(ホルムアルデヒドなど)が原因となり、目眩や頭痛の症状が発生することを言います。

 シックハウス症候群は、入居者ではなく物件所有者の責任です。

 換気システムや化学物質を含まない建材を使用するなどの対策が必要です。

3)防災(防火、地震対策)
 入居者の安全を確保することはもちろん、物件を守るためにも必要な仕様です。

 火災で全焼、地震で倒壊すれば、元も子もありません。

4)お洒落(個性的)
 ここでいうお洒落は、奇抜なデザインのことではなく、さりげないお洒落のことです。

 高齢者でも生活が豊かな人、特に女性はお洒落を楽しむ余裕があります。

5)収納 (備え付け家具など)
 デットスペースをうまく活用するなど、家具の購入が不必要となる収納スペース量は非常に喜ばれます。

 また、入居者の家具購入資金も浮きます。

6)防音
 構造による制限がありますが、可能な限り行うことをおすすめします。

 入居者間のトラブル、プライバシー保護に有効です。防音問題の克服法として、1Fと2Fを内階段で繋げた一部屋とし、入居者が気にならないようにする方法もあります。

7)原状回復(リフォーム費用の軽減)
 タイルカーペットなどの、耐久性が高い床材の活用。

 脱衣場の壁、部屋の壁のクロスは同じである必要はないので、用途に応じた素材を使用してください。


≪仕様のリスクを考える≫
1.奇抜なデザインは、人気が長続きしないことがあるリスク
2.若年層に絞った仕様は、高齢者には受け入れらないことがあるリスク
3.高齢者を意識し過ぎると、若年層には受けいれらないことがあるリスク
4.デザインを優先した為の実用性が低くなることがあるリスク
5.機能の陳腐化のリスク
例)90年代後半に騒がれたインターネットの専用回線がある物件も、今では回線のスピードが遅すぎて魅力が薄れている。

≪付加価値仕様の収益還元を考える≫
付加価値によって、いくら収益がUPするのかを考えます。

(ポイント)
付加価値仕様の寿命・・・耐久性の寿命ではなく付加価値としての寿命
付加価値を維持するためにかかる費用の有無を含めて計算する必要があります。

例1)システムキッチンなどで60万円ほど高い設備の場合
借り入れ 60万円
金利 3%
期間 10年(付加価値期間)
月額支払 5,794円
費用対効果額 8戸ある場合の1戸あたり5,794円以上は必要

例2)外見の付加価値として、おしゃれな外灯やエントランス
借り入れ 500万円
金利 3%
期間 20年(付加価値期間)
月額支払 27,730円
費用対効果額 8戸ある場合の1戸あたり、3,466円以上は必要

例3)警備会社委託、設備機器設置
ランニング月額 10,000円
借り入れ 200万円
金利 3%
期間 20年(付加価値期間)
月額支払 11,092円
費用対効果額 8戸ある場合の1戸あたり、1,386円+1,250円(ランニング負担)
2,636円以上必要

(重要事項)
 仮に上記を現金で設備投資した場合にそれぞれ費用対効果と同じ金額の賃料UPが可能であれば、3%の金利を稼いだ事になります。

 ただし、この考え方には空室のリスクが別にある事を理解する必要があります。

(総括)
 すばらしい物件を用意しても、お部屋を探している人に知ってもらえないと入居には繋がりません。

 直接、入居者に募集情報を発信する方法もありますが、一般的には賃貸仲介会社に募集をしてもらう事になると思います。

 そこで、重要な事は物件の特徴などPRポイントをどのようにして部屋探しをしている人に伝えるかということです。

 その為には、賃貸仲介会社の営業担当者にセールスし、物件の良さを理解してもらうのが近道です。

 物件の写真や図面、特徴やPRポイントを明記した物件概要を作成して配布すると効果が期待できます。

2004.04/09

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松尾充泰 (まつおみつひろ)
(賃貸不動産経営コンサルタント)
昭和43年大阪生まれ。
96年に賃貸不動産業界での職務経験を生かし、賃貸不動産業界向けソフトウェア開発会社、アクセス株式会社を設立。その後、賃貸不動産会社に対する業務コンサルティング、大家さん・賃貸不動産業界のビジネス支援サイトを運営する、株式会社リプロスを2003年に設立。