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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

バブル期に投資した不動産の含み損の対応

事例
 私は、現在、A・B2棟の収益物件を持っています。平成2年に一棟売りのマンション(物件A)を購入しました。
2億円で取得した不動産は現在価値で8千万円程度に下落しています。自己資金は約半分、残り1億円は金融機関から借入れました。売却処分して借入金を全額返したいのですが、よい方法はありますか?

 

平成2年購入
1購入価格総額
イ.内土地の購入代金 1億円
ロ.内建物の購入代金 1億円
2億円
2同上未償却残高 6千万円
3土地の時価 4千万円
4建物の時価 4千万円
5借入金残高 7千万円
6年間家賃収入 1千万円
古アパート
7時  価
イ.内土地の時価8千万円
ロ.内建物の時価1千万円
9千万円
8建物の未償却残高 1千万円
9借入金残高 0円

 

含み損を抱えた資産だけを処分したい場合

当方は、含み益のある優良な物件を譲渡しなければいけないほど資金繰りがひっ迫していません。含み損を抱えた不良資産のみ処分したいのですが、何かよい方法はないでしょうか?
含み益のある優良な土地・建物等は収益力も十分な資産が多いようです。資産家の多くは、このような資産を他に売却することはとてもできないと思われます。このような資産は、所得税対策・相続対策をかねてプライベートカンパニーに売却することをおすすめします。
不良資産は個人所得の足を引っ張りますが、優良な資産は逆に所得を押し上げて所得税の悩みだけが残ります。含み益のある優良な資産をプライベートカンパニーに売却することにより、今までの個人の所得税・住民税の納税に対する悩みが一挙に解消される可能性が有ります。
この場合、プライベートカンパニーの株主や代表取締役には、資産家さん自身ではなく、資産家さんの子供や配偶者が就任して下さい。なぜかといえば、売却後にプライベートカンパニーの価値が上がっても資産家さんは株主でもなければ代表取締役としての報酬も有りません。資産家さんは、価値の上がった株式の承継や金銭財産の心配をする必要がないからです。
 

含み損のある土地・建物等を売却する具体的方策

物件Aの土地・建物等を処分して金融機関に借金を返済する、具体的な方法は?
 
物件A、物件Bともにプライベートカンパニーに売却した場合を説明しましょう。
含み損のある物件Aを売却した場合の譲渡所得の計算は、

売価8千万円(34)-取得費1.6億円(1イ+2)=譲渡損△8千万円 … A

譲渡損は△8千万円ですが、平成16年度の改正以降は、不動産の譲渡損と他の所得との損益通算ができません。そこで、含み益を抱えた時価9千万円の土地・建物(物件B)をプライベートカンパニーに売却することにより、譲渡損と譲渡益を同一所得内で損益通算させます。
物件Bを売却した場合の譲渡所得の計算は、

売価9千万円-取得費1千万円8※1=譲渡益8千万円 … B

※1:土地の取得原価は売価の8千万円(7イ)×5%=4百万円ですが考慮していません。

A + B = 譲渡損益は“0” 

プライベートカンパニーに資産を譲渡することが可能になっても、プライベートカンパニーには、通常、1億7千万円(物件A+物件B)もの大金はありませんので金融機関から融資を受けて購入する事になります※2。
その際には、以前から物件Aを担保に借りていた借入金は、融資実行と同時に借入金残高7,000万円は返済に回りますので、個人としては1億円の現金が残ります※3。

売却に伴う受入1.7億円(347)-銀行返済5=差引1億円(手許金残高) 

※2:プライベートカンバニーにお金があれば購入資産の買入予定価格と同額以上の金銭を交付して資産の所有権移転ができます。
※3: この1億円の使いみちを検討しなければならないことになります。

 

土地・建物をプライベートカンパニーに処分するときの注意点

土地・建物をプライベートカンパニーに売却するときの売買価格の設定は、どのようにすればよいですか? 固定資産税の評価額や相続税の路線価格で処分できればと思っています。
プライベートカンパニーにオーナー所有の土地・建物等を売却する場合は、売買価格の設定が難しいと思われます。
税務上の時価は、公示価格を基に計算しているようです。しかし固定資産税の評価額や相続税の路線価格は、この公示価格を下回るのが一般的です。ご質問のように固定資産税の評価額や相続税の路線価格で処分した場合はその差額が贈与とみなされます。
したがって、不動産仲介業者に査定してもらう方法や、不動産鑑定士に依頼して価格を決定する方法が考えられます。最近では、対象不動産の収益力を鑑定してその利回りから土地・建物等の価格を算定する方法も徐々に認められてきておりますので、専門家にお尋ねください。
2005.09/06

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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