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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

所得税を払い過ぎていたときは「更正の請求」や「還付申告」を

サラリーマンは、源泉所得税を毎月の給料から控除され、年末調整で精算される場合がほとんどですが、医療費控除などは、確定申告をして源泉所得税の払い戻しを受けます。しかし、申告後に医療費の追加や他に控除できるものがあることが判明し、所得税の払い過ぎに気付くことがあります。 今回は、申告書の見直しによる所得税の還付と、長期間所得税の申告をしていない方でも所得税の還付が受けられる場合をご紹介いたします。今回は、最近の事務所内であった事例をまとめてみました。もし読者の皆様の周辺でこのようなことでお困りの方が居られれば、「更正の請求」をおすすめしてください。

所得税を払い過ぎていたときは「更正の請求」や「還付申告」を
納税者が、国税の申告書を提出した後にその申告書に記載した課税標準額や税額などの誤りを発見したときは、どのような処理をするかということです。
過去の確定申告で納税額が過大になったときには「更正の請求」により納めすぎの税金を還付請求することができます。税法では、原則として申告書の法定申告期限から1年以内に限り「更正の請求」をすることを認めています。また、税金を納めすぎた事情によって請求できる期限がそれぞれ定められていますので、その期限が経過してしまわないように注意する必要があります。

 


更正の請求……過去に還付申告していた場合

 

私は、医療費控除を受けるため平成16年分の還付申告書を平成17年7月20日に提出し還付を受けました。しかしこの医療費控除の計算に誤りがありました。また父親の遺族年金で一人暮らしている母親に仕送りをしている関係から扶養控除の適用があると聞きました。これを訂正すれば更に還付税額が増加します。どのような手続きをすればよいでしょうか。
 
あなたの「更正の請求」期限は、平成18年7月20日です。請求期限が過ぎないうちに手続きすることをお勧めします。
確定申告書を提出する義務のない人でも、源泉所得税が納めすぎになっているときは、還付申告をすることができます。確定申告書に記載した内容が税法の規定に従っていなかった場合や、税金の計算に誤りがあり、正しい計算をすれば還付金の額が更に増加する場合には、法定申告期限の3月15日から1年以内に限り、「更正の請求」をすることができます。
ご質問の還付申告書についても「更正の請求」が認められます。また、確定申告書の提出義務のない人が提出する「確定申告書の法定申告期限」は、通達で「その申告書を提出した日」と読みかえることになっています。あなたは、平成18年7月20日までを期限に「更正の請求」をすることができます。


更正の請求……過去に還付申告をしていなかった場合

 


私はサラリーマンで、過去数年に亘り医療費や寄付金がありましたが、年末調整のみで確定申告することを失念していました。いつまで遡って還付申告できるでしょうか。
確定申告書を提出する義務のない人が税金の還付請求の時効は、5年です。還付申告の時効の起算日は、確定申告ができることになった日から数えます。
所得税の確定申告は、所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日までに申告することになっています。ところで、確定申告義務のない人が所得税の還付を受けるための申告(還付申告)は、特に申告書の提出期限はありません。その請求をすることができる日から5年間行使しなければ、時効によって消滅します。時効となる5年の計算は、申告書の提出期限のあるものは申告書が提出できることになる2月16日から数えますから5年後の2月15日が期限となります。また、ご質問のような申告期限のない還付申告は1月1日から数えますので、5年後の12月31日が期限となります。


更正の請求……更正の期限切れの場合


平成16年分の確定申告をした所得税が払いすぎていたことに後になって気がつきました。「更正の請求」期限が過ぎても所得税の還付を求めることはできるでしょうか。
「更正の請求」は、通常法定申告期限から1年以内と限られていますが、災害その他やむを得ない理由により期限内にできなかったときは、提出期限後であっても「更正の請求」を認める規定があります。しかし、この規定の適用を受けられる場合は限られており、現実問題としてはほとんど不可能です。そこで、この規定によらず、実務では「嘆願書」や「請願書」等を税務当局に提出する方法がよく採られます。
提出する書面には、

1税金が納めすぎになった事実関係を証明するものを添付し、
2論点は詳細かつ明瞭に、納めすぎになった理由を記載し、
3嘆願や請願するに至った詳細な事情を記載したもの 

等が必要であると考えます。特に3がしっかり表現できれば税金の還付につながるものと思われます。
また、嘆願や請願で税金の還付を求める場合の留意事項として次の2点が考えられます。

1)「嘆願書」や「請願書」等は、税務署長に対して減額更正をお願いするもので、税法で認められた手段ではありません。このような書類の提出があっても100%還付されるとは限りません。還付する・しないは、税務署長の判断・裁量によるからです。
2)納税者が税金の還付を求めることができる期間は5年間です。この期間を過ぎると、時効にかかり税務署長の判断でも減額更正することができなくなります。


豆知識
税制上確立していない「嘆願書」や「請願書」等による税金の還付を求める作業を怠ったとして、近年税理士に対する損害賠償訴訟では、「税理士は更正の請求期間を過ぎた後でも、税金が還付される可能性があれば税務署に減額更正を求める嘆願はすべきである」(平成15年2月27日 東京高裁判決、平成14年(ネ)第3787号)とされています。

更正の請求・還付申告……納税者の権利
税金の納めすぎによる還付請求の方法として「更正の請求」や「還付申告」には請求・申告できる期間が設けられています。しかも税金が納めすぎになった事情によって請求できる期限も定められていますので、その期限を過ぎてしまわないように注意する必要があります。また、期限切れの場合は、正規の「更正の請求」の道は断たれますが、「嘆願書」や「請願書」等を税務署長に提出することで納税者の権利を救済する方法を模索することも重要です。法律的には期限が切れても諦めることはないと思います。税金の納め過ぎに対して積極的にアピールすることや、納税者の根気強く粘る姿勢が税務当局を動かす基になります。

2006.07/18

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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