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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

平成23年度の税制改正 ~資産家編:相続・贈与税 ~

【1】はじめに
平成22年12月に民主党から平成23年度の税制改正大綱が発表になりました。国会での混乱がなければ、平成23年3月下旬ごろ法案が可決成立されると思われます。
今回の税制改正大綱には法人税率の引下げが盛り込まれた一方、相続税の基礎控除や税率構造の改正があり、資産家にとっては相続税が増加することが予想されます。
そこで今回は、税制面で資産家に関連する項目についてご説明いたします。

【2】相続税

  1. (1)基礎控除の引下げ
    基礎控除とは、相続税の総額を計算する場合に、不動産・預貯金などのプラスの財産から、借入金・葬式費用などのマイナスの財産を控除した純資産から差し引く控除額のことです。

     

    現    行

    改  正  案

    定額控除

    5,000万円

    3,000万円

    比例控除

    1,000万円×法定相続人の数

    600万円×法定相続人の数

    <例> 法定相続人が3人の場合
        改正前:5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円
        改正後:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
  2. (2)基礎控除の推移
    昭和50年1月1日~昭和62年12月31日・・・2,000万円+400万円×法定相続人の数
    昭和63年1月1日~平成3年12月31日 ・・・ 4,000万円+800万円×法定相続人の数
    平成4年1月1日~平成5年12月31日 ・・・・4,800万円+950万円×法定相続人の数
    平成6年1月1日~現行 ・・・・・・・・・・5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
    ※今回の改正により、昭和50年代の水準まで戻る結果となります。
  3. (3)相続税の税率構造の見直し

    現    行

    改  正  案

    各取得分の金額

    率(%)

    控除額(万円)

    各取得分の金額

    率(%)

    控除額(万円)

    1,000万円以下

    10

    1,000万円以下

    10

    3,000万円以下

    15

    50

    3,000万円以下

    15

    50

    5,000万円以下

    20

    200

    5,000万円以下

    20

    200

    10,000万円以下

    30

    700

    10,000万円以下

    30

    700

    30,000万円以下

    40

    1,700

    20,000万円以下

    40

    1,700

    30,000万円以下

    45

    2,700

    30,000万円超 

    50

    4,700

    60,000万円以下

    50

    4,200

     

    60,000万円超

    55

    7,200

  4. (4)相続税の具体例
                                             (単位:万円)

    課税価格

    配偶者と子2人の場合の相続税
    (法定相続分で相続した場合)

    子2人の場合の相続税

    現 行(①)

    改正後(②)

    増税額(②-①)

    現 行(①)

    改正後(②)

    増税額(②-①)

    5,000万円

    0

    10

    10

    0

    80

    80

    1億円

    100

    315

    215

    350

    770

    420

    2億円

    950

    1,350

    400

    2,500

    3,340

    840

    3億円

    2,300

    2,860

    560

    5,800

    6,920

    1,120

    4億円

    4,050

    4,610

    560

    9,800

    10,920

    1,120

    5億円

    5,850

    6,555

    705

    13,800

    15,210

    1,410

    10億円

    16,650

    17,810

    1,160

    37,100

    39,500

    2,400

    20億円

    40,950

    43,440

    2,490

    87,100

    93,290

    6,190

    30億円

    65,950

    70,380

    4,430

    137,100

    148,290

    11,190

  5. (5)死亡保険金の非課税限度額

    現   行

    改  正  案

    500万円に法定相続人の数を乗じた金額

    500万円に法定相続人(未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限る)の数を乗じた金額

    ※改正前は、法定相続人であれば非課税限度額を計算する人数に算入されていましたが、改正後は、法定相続人のうち上記の要件に該当した人しか人数に算入されなくなります。
  6. (6)適用時期
    平成23年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。

【3】贈与税

相続税が増税される見直しが予定される一方、生前贈与を促進し、次世代へ財産を移転させることにより経済を活性化させる目的で贈与税を緩和する改正が予定されています。
  1. (1)相続時精算課税の要件

    現   行

    改  正  案

    1.受贈者は20歳以上の

    推定相続人のみ


    2.贈与者の年齢は

    65歳

    以上であること。
    1.受贈者の範囲に、20歳以上である

    を追加する。
    2.贈与者の年齢要件を

    60歳

    以上に引き下げる。
    ※相続人でない孫に贈与した場合には、相続税額の2割加算の対象となりますので、注意が必要です。
  2. (2)直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税

    現   行

    改  正  案

    住宅の新築等に先行して、その敷地に供される土地等を取得する場合における当該土地等の取得のための資金の贈与については、適用対象外。

    適用対象となる住宅取得等資金の範囲に、住宅の新築等(住宅取得等資金の贈与を受けた翌年3月15日までに行われるものに限る)に先行して、その敷地に供される土地等を取得する場合における当該土地等の取得のための資金を追加する。

  3. (3)相続時精算課税以外の贈与税の税率構造の見直し

    現   行

    改   正   案

    20歳以上の者が、直系尊属から
    贈与を受けた財産に係る贈与税

    左以外の
    贈与財産に係る贈与税

    基礎控除後の課税価格

    税率
    (%)

    基礎控除後の課税価格

    税率
    (%)

    基礎控除後の課税価格

    税率
    (%)

    200万円以下の金額

    10

    200万円以下の金額

    10

    200万円以下の金額

    10

    300万円以下の金額

    15

    400万円以下の金額

    15

    300万円以下の金額

    15

    400万円以下の金額

    20

    400万円以下の金額

    20

    600万円以下の金額

    30

    600万円以下の金額

    20

    600万円以下の金額

    30

    1,000万円以下の金額

    40

    1,000万円以下の金額

    30

    1,000万円以下の金額

    40

    1,000万円超の金額

    50

    1,500万円以下の金額

    40

    1,500万円以下の金額

    45

    3,000万円以下の金額

    45

    3,000万円以下の金額

    50

    4,500万円以下の金額

    50

    3,000万円超の金額

    55

    4,500万円超の金額

    55

  4. (4)贈与税の具体例
    A:20歳以上の者が、直系尊属から贈与を受けた場合  B:A以外の場合        (単位:万円)

     

    贈与価額

    現行の贈与税

    改正後の贈与税

    Aの場合

    Bの場合

    200

    9

    9

    9

    300

    19

    19

    19

    500

    53

    49

    53

    700

    112

    88

    112

    1000

    231

    177

    231

    2000

    720

    586

    695

    3000

    1220

    1036

    1195

    5000

    2220

    2050

    2290

  5. (5)適用時期
    平成23年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。
【4】まとめ
今回の税制改正は、資産家にとって全体的には非常に厳しいものとなり、相続税は増税となります。今回取り上げていない項目もありますので、その他の項目については、顧問の税理士等に内容を確認する必要があります。 贈与税など一部減税になったものや要件が緩和されたものもありますので、早期の相続対策がますます重要となったように思われます。今まで相続税の試算をされていた方ももう一度改正後の相続税の試算をされることをお奨めします。
2011.03/08

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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