【1】はじめに
平成23年12月に民主党から平成24年度の税制改正大綱が発表になりました。昨年の東北大震災のような事態がなければ、平成24年3月下旬ごろ法案が可決成立されると思われます。
昨年盛り込まれていた相続税の基礎控除や税率構造の改正については、「社会保障と税の一体改革」に先送りされ、同時に消費税の税率の改正も予定されています。
そこで今回は、税制改正大綱の中で資産家に関連する項目についてご説明いたします。
【2】相続税
(1)相続税の連帯納付義務について
次の場合には、連帯納付義務が解除される。
(2)適用時期
平成24年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税と、同日において滞納中の相続税について適用する。
【3】贈与税(非課税限度額を改正して3年延長)
1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について
(1)非課税限度額
贈与を受けた年 |
省エネルギー性・耐震性を備えた |
左記以外の住宅用家屋 |
平成24年 |
1,500万円(1,500万円) |
1,000万円(1,000万円) |
平成25年 |
1,200万円(1,500万円) |
700万円(1,000万円) |
平成26年 |
1,000万円(1,500万円) |
500万円(1,000万円) |
※カッコ書きは、東日本大震災により住宅用家屋が滅失等した受贈者の場合です。
(2)適用対象となる住宅用家屋
床面積(現行50m2以上)を東日本大震災の被災者を除き、240m2以下とする。
(3)適用時期
平成24年1月1日から26年12月31日までの間に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。
2.住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例について
(1)贈与する親の年齢の制限なし(一般の精算課税贈与は65歳以上)
(2)適用期限
平成26年12月31日まで3年延長する。
(改正後の贈与税の概要)
|
暦年贈与 |
相続時精算課税贈与 |
住宅取得等資金 |
||||
一般枠 |
住宅取得等資金 |
||||||
贈与者 |
親族ほか第三者含む |
その年1月1日現在65歳以上の父母 |
父又は母 |
直系尊属(年齢制限なし)(父、母、祖父、祖母、曽祖父、曾祖母…) |
|||
受贈者 |
年齢制限なし |
その年1月1日現在20歳以上の直系卑属である推定相続人 |
その年1月1日現在20歳以上の直系卑属 |
||||
控除額 |
基礎控除 |
特別控除 |
平成24年 |
平成25年 |
平成26年 |
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※A |
1,500万円 |
1,200万円 |
1,000万円 |
||||
※B |
1,000万円 |
700万円 |
500万円 |
||||
申告手続 |
基礎控除額を超える場合は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告 |
贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告 |
|||||
税率 |
超過累進税率 |
制度選択後の贈与を累積して、累積額から特別控除後一律20% |
非課税額を超えた部分について、それぞれのしくみで課税(暦年贈与、相続時精算課税贈与) |
||||
相続発生時の相続財産への加算 |
相続等で財産を取得した者については、贈与時点から3年以内に贈与者に相続が発生すると贈与財産を加算 |
贈与財産を贈与時の価額で相続財産に加算 |
非課税の特例のため相続財産への加算なし |
||||
特別控除の |
なし |
父母(養父母)から |
なし |
||||
適用期限 |
なし |
なし |
平成26年12月31日までの贈与 |
平成24年1月1日から |
※A 省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋
※B 上記以外の住宅用家屋
【4】譲渡税
1.事業用資産の買換え特例の「長期(10年超)所有の土地等、建物等から国内にある土地等、建物等への買換え」について
(1)適用対象となる買換資産のうち、土地等の範囲を限定する等(現行は限定なし)の見直しを行う。
(2)適用期限
平成26年12月31日まで3年延長する。
2.特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の特例について
(1)譲渡対価の要件を1.5億円(現行2億円)に引き下げる。
(2)適用時期
平成24年1月1日から25年12月31日までの間に行う居住用財産の譲渡について適用する。
3.居住用財産の譲渡・買換えに伴う譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例について
(1)適用時期
平成25年12月31日まで2年延長する。
【5】まとめ
今回の税制改正は、資産家にとって全体的には大きな内容のものはありませんでした。
今回取り上げていない項目もありますので、その他の項目については、顧問の税理士等に内容を確認する必要があります。
「社会保障と税の一体改革」での税制改正もありますので、資産家にとってはそちらの方が関心がある部分が多いように思われます。今後の税制改正の動向をみながら早期の相続対策がますます重要となったように思われます。今まで相続税の試算をされていた方ももう一度改正後の相続税の試算をされることをお奨めします。