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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

犯罪収益移転防止法と不動産取引

犯罪収益移転防止法の施行

 犯罪収益移転防止法は、最近におけるテロ資金その他の犯罪収益の流通に係る国内の実態及びFATF勧告に基づく国際的な対策強化の動向から、これまでの金融機関本人確認法及び組織的犯罪処罰法を一本化して、テロ資金その他の犯罪収益の流通防止を主な目的として、平成20年3月1日から施行されている法律です。 

不動産取引への適用拡大

 これまでは、マネーロンダリングの防止等は主に金融機関における金融取引に適用されていましたが、今回の法の整備により、ファイナンスリースや、宅地建物取引等の法律で特定事業者と認定された事業者については、法律により定められる特定事業については、本人確認及び疑わしい取引の届出義務等が課せられることとなりました。

 そして、不動産取引については、法律の適用の対象となる特定事業者として宅地建物取引業者が定められたため、宅地建物取引事業者は、法律で定められた特定取引を実施する場合には、本人確認等の義務が課せられることとなりました。

 なお、犯罪収益移転防止法により本人確認等の義務が課せられるのは、特定事業者の業務のうち、特定の業務であり、且つ、その特定業務の内の一定の取引である特定取引と認められる場合に限られることになります。

 そして、この場合、宅地建物取引業者については、特定業務として、宅地建物の売買又はその代理若しくは媒介業務がその対象とされ、賃貸借の代理又は媒介は含まれません。さらに、特定業務の内一定の取引の範囲である特定取引として、宅地建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介をいい、賃貸借契約の代理又は媒介は含まないことが定められました。

 したがって、宅地建物取引業者は、平成20年3月1日以降宅地建物の売買の代理又は媒介を行おうとすれば、犯罪収益移転防止法の適用により、必ず本人確認等の実施が義務づけられることとなりました。


犯罪収益移転防止法の義務の内容

犯罪収益移転防止法の適用される取引については次のような義務が課せられることとなります。

(1) 本人確認

 特定事業者が、顧客と特定業務のうち特定取引を行うに際しては、運転免許証等の公的証明書などにより顧客の本人特定事項(顧客が個人である場合は氏名、住居及び生年月日、顧客が法人である場合は名称及び本店又は主たる事務所の所在地)を確認しなければなりません。

(2) 本人確認記録の作成保存

 特定事業者が本人確認を行った場合には、直ちに本人確認記録を作成し、特定取引に係る契約が終了した日から7年間保存しなければなりません。

(3) 取引記録等の作成保存

 特定事業者は、特定業務に係る取引を行った場合若しくは特定受任行為の代理等を行った場合には、直ちにその取引等に関する記録を作成し、当該取引又は特定受任行為の代理等の行われた日から7年間保存しなければなりません。

(4) 疑わしい取引の届出

 特定事業者は、I 特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある又は、II 顧客等が特定業務に関し組織的犯罪処罰法第10 条の罪若しくは麻薬特例法第6条の罪にあたる行為を行っている疑いがあると認められる場合には、疑わしい取引の届出を行政庁に行わなければなりません。その際、事業者は、届出を行おうとすること又は行ったことを顧客又はその関係者に漏らしてはなりません。

 なお、宅地建物取引業者の場合には、届出行政庁は、国土交通大臣免許事業者は、本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方整備局長及び北海道開発局長となり、都道府県知事免許事業者は、各都道府県知事となります。


結語

 以上のとおり、宅地建物取引業者には、犯罪収益移転防止法の施行により、取引時に新たに本人確認義務が課せられることになった上、これまでの5年間の帳簿保存義務よりも重い7年間の本人確認記録及び取引記録の保存義務が課せられるなど、宅建業法上の業務にも重大な影響を与える内容となっておりますので、ぜひこの機会に内容のご確認をお勧めします。

なお、犯罪収益移転防止法の詳細については、下記のホームページをご参照下さい。
(警察庁JAFICホームページ http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/index.htm

2008.03/25

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修