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イベントレポート

(財)日本賃貸住宅管理協会兵庫県支部セミナーレポート「原状回復(東京ルールの実施にむけて)について」

主催:財団法人日本賃貸住宅管理協会

講師:弁護士 川崎志保先生
(藤田・川崎法律事務所)

 10月8日(金)に、財団法人日本賃貸住宅管理協会兵庫県支部が、セミナー「原状回復(東京ルールの実施にむけて)について」を開催いたしました。講師は弁護士の川崎志保先生、内容は以下の通りです。


 10月1日より、東京都の原状回復問題に関する紛争を防止するための条例(東京ルール)が施行されました。これは宅建免許所持者を対象にしたもので、既存のガイドラインの内容をさらに深めたものです。関西では効力を持ちませんが、これを機会に原状回復義務とはどのようなものかを考えたいと思います。

原状回復義務の範囲(原則論)
 原状回復義務の原状とは、新品の状態に戻すものではなく、経年劣化や通常損耗を考慮した状態に回復するもの。つまり、経年劣化や通常損耗を超えた劣化や損耗がある場合、その部分を経年劣化や通常損耗を考慮した状態に回復する義務が生じる事を指します。経年劣化や通常損耗は貸主(大家さん)負担、それを超える範囲は、借主(入居者)負担になります。
 経年劣化や通常損耗に当たるのは、
・畳の日焼け
・カーペットの染み
・クロスの電気焼け
・画びょうの穴
などです。カーペットの染みなどは程度や状況にもよりますが、ダイニングにあってそこで食事をする事が自然であった場合、ジュースやソースによる染みは通常損耗にあたります。

  逆に、経年劣化や通常損耗に当てはまらないのは、
・ペットによる傷
・掃除をしなかったことによるカビ
など、注意をしておくことで防げたと思える部分。つまり善管注意義務を怠った事が原因と言える範囲です。良く言われる「タバコのヤニ」につきましては、通常のクリーニングで落ちれば貸主(大家さん)負担、落ちなければ借主(入居者)負担となります。ただし、入居年数が長い場合は減価償却が完了しているとみなされる場合もあります。

  原状回復義務の範囲は、その部分のみの補修とされています。つまり、クロスの一部を汚した場合は、その面だけを借主(入居者)負担で行い、他のクロスも(色を合わせるなどで)張り替える場合は貸主(大家さん)負担となります。また、畳などの一部だけを交換できない場合は、借主(入居者)負担でまるまる一枚を交換してもらえますが、その費用から経年劣化分を引いた金額しか請求できません。

特約の効力
 ガイドラインに法的効力が無い以上、契約の自由により特約は正式な契約となります。しかし、以下の条件を満たす必要があります。

(1)特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的合理的理由が存在すること
 …公序良俗に反していないかどうか?

(2)賃借人(入居者)が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
  …説明したことを証明するために、説明後に署名・捺印を頂く

(3)賃借人(入居者)が特約による義務負担の意思表示をしていること
 …書面で説明し、特約契約書に署名・捺印を頂く

 それでは事例をあげて、考えてみましょう。

(事例)
 マンションの一室(居住用)の賃貸借契約(賃料月額7万5000円、敷金22万5000円)。契約書において「建物明渡し時に畳表の取替、襖・クロスの張替え、ハウスクリーニングの各費用は借主が負担する」旨の特約が付されていた。
 貸主は、上記特約に基づき、畳、襖、クロス及びハウスクリーニングの費用(合計23万8875円)を敷金及び返還すべき日割家賃の合計である26万6130円と相殺し、残金のみ返還した。
 借主は貸主に対し、上記特約条項の無効を主張して、畳、襖、クロス及びハウスクリーニングの費用の支払いを求めて提訴した。
 借主の請求は認められるか?

(結果)
 借主の請求は、認められませんでした。

(理由)
・畳、襖、クロス及びハウスクリーニングの費用と、具体的に特約の内容を示している …一切の費用やリフォームにかかる費用など、抽象的な記し方では、特約は認められない

・特約の部分は赤字で書いてあった
 …借主が「読んでいない」とは言えない

・ほぼ敷金と同額で、暴利とは言えない
 …敷金は家賃2~3ヶ月分が妥当

  特約を有効にする為には、「何のために必要なのかを明確に分かりやすく」書くことです。また、借主(入居者)に説明した旨、納得した旨を捺印・署名で残しておくこと。そして、特約部分の色にも注意すべきです。

 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、「東京ルール」、トラブルを防ぐ為に必要なのは、入り口でしっかりと説明し、ちゃんとした契約を交わすことが重要といえます。

 

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詳細・関連

財団法人日本賃貸住宅管理協会
兵庫県支部
http://www.e-jpm.com/

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