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リプロス代表・松尾充泰の賃貸経営ノウハウ

個人情報保護法のポイント≪不動産業者≫

 2005年4月1日から個人情報保護法が施行されます。関心の薄い不動産業者もいるようですが、この個人情報保護法は、賃貸業者、売買業者、管理会社など不動産業者にとって、とても重要な法律です。
 国土交通省は、この個人情報保護法のガイドラインを作成し、有識者を集め、更に解りやすくQ&A形式に纏めた『「不動産業における個人情報保護法のあり方に関する研究会」報告』(以下「あり方」)を発表しました。

 以下は、個人情報保護法や"あり方"ガイドラインから抜粋し、私見をまじえて簡単にまとめたものです。

 そして、不動産業者の皆様におかれましては、個人情報保護法の施行をお客様に企業コンプライアンス(法令遵守)を示す良いチャンスと考え、積極的に取り組んで頂きたいと思います。

1. 物件情報は個人情報に該当する

 

 「何故?」と思われるかもしれませんが、物件情報は他の情報と容易に照合できる事がその理由となっています。

 例えば、所在地から謄本を照合すれば、個人情報の対象となる所有者の名前がわかります。

 よって、個人情報保護法に基づき、物件情報を第三者に提供する場合やチラシ、インターネットに掲載する場合は、売主や貸主の同意が必要になります。

 特に売主の場合は、売却する事を他人に知られたくない人もいるので、更なる注意が必要と思われます。

 また、売主が法人の場合でも、代表取締役等の特定の個人情報が明らかになるので、留意が必要とガイドラインには書かれています。

しかし、例外もあります(同法23条第2項による)。例えば、他業者に物件情報を提供し、取引が成立する事を目的としている場合がそれにあたります。

 もう少し具体的に説明しますと、賃貸管理会社がオーナーから預かっている物件の空室情報を第三者である仲介業者に提供することは、そもそも管理委託業務の範囲であり、事前の同意は不要であると言えます。

 しかし、念には念を入れて管理委託の契約書にはどのような方法でどのような第三者に情報を公開し募集業務を行うか明示する事をお勧めします。
【参考:あり方Q1/Q3/Q24/Q27】

 

2. すべての不動産業者は個人情報保護法を厳守する必要がある

 

 個人情報保護法の対象となる事業者の定義に、除外する事業者として、個人情報の取扱が過去6ヶ月以内において、いずれの日においても5千を超えない者と書かれています。

 これを見て小規模の不動産業者の方が関係ないと考えている方もいるかもしれませんが、間違っています。

 なぜならば、不動産業者の皆様は指定流通機構の会員業者として、個人情報データベースに該当するレインズを使えるからです。その結果、個人情報取扱事業者に該当するのです。
【参考:あり方Q5】

 

3. 来店時のアンケートも個人情報である


賃貸、売買の仲介を行う店舗では、来店時に希望の条件などをアンケートしてとる事が一般化しています。

 しかし、その場で成約せず、後日、物件情報を案内するなどセールスの為にこのアンケートを利用する場合、事前に同意が必要となります。
【参考:あり方Q7】

 

4. その他書面の個人情報


賃貸契約の申込時に使われる入居申込書はもちろんの事、重要事項説明書、賃貸契約書なども個人情報保護法の対象になります。

 ただし、賃貸契約書のように個人情報の取得が契約当事者を特定する為である事が明確な場合、その利用目的を明示する必要はありません。

 しかし、この情報を元にダイレクトメールなどを発送する場合は、利用目的を明示しておく必要があります。
【参考:あり方Q4/Q16】

 

5. インターネットによる個人情報の取得も注意が必要

 

 消費者がインターネット上でおこなう物件への問合せなども、利用目的を明示する事をお勧めします。

 例えば、特定の物件に対しての問合せでも、後日、別の物件情報を送ったりするセールスに利用します。また、今までなら勝手にメールマガジンの配信対象者にするような事も見受けられましたが、今後はこのような利用についても、あらかじめ明示しておく必要があります。
【参考:あり方Q12】

 

6. 個人情報取扱業者の監督責任


個人情報取扱業者は、漏洩防止等の安全管理措置を講じなければならなりません。

 それに伴い、従業員及び業務の委託先においても、監督責任を負います。

 そこで、ガイドラインには、具体的にどのような事をすれば、良いか書いています。

 個人データへのアクセス権限の管理や、従業員との個人情報の非開示契約の締結や教育、委託先との非開示契約の締結や委託契約範囲外の加工、利用の禁止など多数記載されています。

 しかし、書き方は弱く「努める」との表現にとどまっています。

だからと言って、そこまでする必要がない訳ではありません。

 原状回復のガイドラインでもわかるように法廷で争えば、ガイドラインは裁判官にとってある一定の判断基準に用いられます。

 よって、具体的に記載されている事項はすべて、努力目標ではなく不動産業者の皆様にはガイドライン通り実施する事をお勧めします。

 早い段階で実施すれば、他業者との差別化にも繋がりますし、実際に個人情報が漏洩して訴えられるリスクも軽減できます。そして、厳しい事を言えば、「将来的にはコンプライアンス(法令遵守)できない業者は淘汰される」ことになると思います。
【参考:あり方Q20/Q23】

 

7. 個人情報が漏洩した場合

 

 不動産業者の方であれば、管轄官庁の国土交通省に直ちに報告しなくてはなりません。

 この場合の直ちには"一切の遅滞が許されない"趣旨になり、とにかく急いで報告しなくてはなりません。

 そして、漏洩された個人には、事実関係を速やかに通知し、2次被害の防止、類似事案の発生回避の観点から可能な限り事実関係等を公表する必要があります。
【参考:あり方Q22】

 

8. 個人情報保護の対象となる個人から情報開示を求められた場合

 

 国土交通省の個人情報保護法のガイドラインによると、個人から情報の開示を求められた場合は、原則、書面により当該保有の個人データを開示しないといけないとあります。

 ただし、口頭など他の開示方法を本人より求められた場合は、その限りではありません。

 そして、保有するデータがない場合も同様にその旨を知らせる必要があります。
【参考:国土交通省の個人情報保護法のガイドライン第14条】

 

9. 個人情報保護法の施行前に取得した個人情報の扱い

 

 施行前に取得した個人情報については、原則、本来の収集した目的以外の利用はできません。

 ただし、事前に本来の目的以外の利用や第三者への提供を認める同意がある場合は、この限りではありません。

【参考:個人情報保護法の附則2条/3条/4条/5条】

 

10. 個人情報保護法の罰則

 

 個人情報保護法に違反し、主務大臣である国土交通大臣からの違反行為の中止、是正などを命じられ、この命令に違反した者は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる刑事処罰になります。

 善意で事業をしていれば、滅多な事がないと罰則が適用されることはないと思いますが、経営者に悪意がなくても従業員の不正などにより罰則が適用される可能性があります。

 この違反は、駐車禁止違反などの反則金と違い、懲役もありえる刑事罰である事を経営者、従業員、業務委託先も含めて認識しておく必要があると思います。
【参考:個人情報保護法 第6章罰則】

※文中の「通知」「公表」「明示」の具体的方法については、"あり方のQ9"を参照してください。

最後に、この個人情報保護法やガイドラインを遵守すれば問題はないと、考えないように願いしたいと思います。

 これは、最低限のルールとして国家が明示しただけで、個人情報の漏洩や間違った利用方法によって、個人に損害を与えた場合は、民法709条により損害賠償請求の対象となります。

≪参考文献≫
●「不動産業における個人情報保護法のあり方に関する研究会」報告
(不動産流通業における個人情報保護法の適用のあり方)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/01/010114_.html

pdficon.gif

[PDF 173KB]
●個人情報保護法

pdficon.gif

[PDF 144KB]
●民法709条
「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」
 

 

2005.02/22

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松尾充泰 (まつおみつひろ)
(賃貸不動産経営コンサルタント)
昭和43年大阪生まれ。
96年に賃貸不動産業界での職務経験を生かし、賃貸不動産業界向けソフトウェア開発会社、アクセス株式会社を設立。その後、賃貸不動産会社に対する業務コンサルティング、大家さん・賃貸不動産業界のビジネス支援サイトを運営する、株式会社リプロスを2003年に設立。