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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

新しい資金調達方法「少人数私募債」

 今までは、会社でお金が必要な場合は、銀行等金融機関からの融資が中心でした。しかし、最近の金融情勢は「貸し出し金利の引上げ」「担保や保証人の見直し」など金融機関の融資態度が一層厳しくなりました。
 そこで今、少人数私募債が脚光を浴びています。少人数私募債とは、有価証券の一種で、株式会社が銀行・機関投資家などの金融のプロに頼らないかたちで資金調達を行う方法です。

 長期借入金のように貸借対照表の「固定負債」の部に入り、元本の返済と利息の支払を必要としますが、銀行からの借入れと異なり、償還期間、利息、発行金額など全て取締役会の発行決議で自由に取り決めができ、しかも、担保が不要で弾力的な資金調達が可能です。

発行条件
 少人数私募債の発行には、4つの条件があります。
(1)発行者は株式会社であること
・ 商法上社債を発行できるのは、株式会社に限られます。

(2)社債権者(購入者)が50名未満の縁故者(自社の役員、従業員、親戚、友人、取引先等、お互い顔の見える範囲)に限られ、銀行や証券会社などの機関投資家がいないこと
・「少人数私募」に該当するためには、50名未満に勧誘し、50名以上に社債が譲渡されるおそれのないこと。
  →50名以上となる場合は公募となり、証券取引法上の諸届等が必要となります

(3)1口の最低社債額が発行総額の50分の1以上(社債発行口数が50未満)であること(社債管理会社設置義務の免除)
・ 商法では、社債権者保護の見地から社債管理会社を定め、社債権者からの弁済金を受け取ったり、債権を保全したりするなど、社債の管理を委託することが義務付けられています。
 ただし、「社債の総額を社債の最低額をもって除した数が50未満の場合」すなわち、社債発行口数が50未満の場合は、社債管理会社の設置は任意となります。

(4)社債発行総額が1億円未満であること
・ 発行額が1億円以上になると、勧誘の相手方に対し「譲渡に関する制限の内容」「所有者の権利を制限する内容」等について文書で告知しなければならない規定があります。
 発行額を1億円未満に抑えれば、この義務は免除されます。

メリット・デメリット
発行会社側のメリット
(1)資金運用性の向上と資金繰りの向上
・資金使途が限られる借入金と違い自由に利用でき、償還期間や利息も自由に設定でき(銀行の貸付金利に近い金利で、年1回後払いでよい)、返済も償還時に一括返済すればよく、長期の安定した資金調達ができ、資金繰りが大幅に向上します。

(2)物的担保等が不要
・不動産等の物的担保や保証人・保証会社の保証が不要であり、担保余力と保証枠など従来までの融資枠を残すことができ、別に資金調達が可能となります。

(3)税務上有利
・利息の支払いは、損金扱いとなり、株式配当金支払に比べ税法上有利となります。(社債権者には利息の20%の利子税がかかる)

(4)資金調達コストが低い
・私募債の金利は通常の金利より若干高く設定して発行しますが、利息を1年後に支払うこと、担保設定や保証人の登記費用や印紙税等がかからないことなど、実質の資金調達コストは低減されます。

引き受け者側のメリット
(1)預貯金より有利な利率で資金を運用できる
(2)社債利息は20%の源泉分離課税で済み、高額所得者にとって税法上有利である

デメリット
(1)社債権者が金融機関などを除く縁故者に限られるため、自ずと募集総額が限られます
(2)引き受け側に担保等がないため、発行会社は詳細な事業計画を立案提示しなければ引受けに応じてもらえない場合もあります
(3)社債の一括償還に向けて返済分を積立ておくなど、会社として自己管理が必要。(経営者としての債券償還責任等発行責任が重い)

 以上のように、少人数私募債は中小企業にとって非常に便利な資金調達方法です。「設備投資」「高金利借り入れの一括返済」など、新しい事業を始めたり、新たな経営展開をしたりする時、一度考えられてみてはいかがでしょうか。

2004.10/19

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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