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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

資本的支出と修繕費の区分

固定資産の修理・改良等のために支出した金額は、資産計上するのか、費用計上するのか判断に迷うところで、税務調査でも指摘の多い項目です。今回は、その判断ポイントを整理してみました。

はじめに
個人事業主の方の所有する有形固定資産の税務調査の大きなポイントは、
1修繕費等が、資本的支出あるいは修繕費のいずれで正当に処理されているのか、2耐用年数は取り違えてないかの2点です。
今回は、そのうち1のついて見ていきます。


資本的支出・修繕費とは
修繕費で支出した金額はその内容により資本的支出か修繕費かに区別します。
資本的支出とは多少聞きなれない用語ですが、固定資産の価値を高め、又は使用可能期間を延長するために支出した修理、改良等の金額をいい、
具体的には1避難階段等の物理的に付加した部分の費用2用途変更等のための模様替え等に要した費用を等をいいます。
これに対し、修繕費は固定資産の通常の維持費のために要した金額とされます。
これによると、通常のメンテナンスが、大規模な修繕を行った場合には、それが資本的支出なのか修繕費なのかの判断が非常に困難で。
また、価値が増した部分の金額の計算をするのも通常は困難です。
そんな場合、修繕費をどう計上すればよいのでしょうか?
そこで、所得税では下記3の簡便な判断基準を設けています。
なお、資本的支出は資産計上され、減価償却費として支出した年以後の費用となり、修繕費は支出した年の費用となります。

実務上の取扱い
 

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実務では、<表>のようなフローチャートに従い判断していきます。
チャートにそってみていきましょう。

【1】小額基準・周期基準(表・・12参照)
まず、最初の判定です。20万円未満の修理やおおむね3年以内の周期で行われる修理等の費用は、修繕費として取り扱ってよいとされます。

【2】60万円基準又は取得価格の10%基準(表・・45参照)
【1】に該当しなかった修理費のうち、資本的支出か修繕費かが不明なものについては、
その金額が60万円未満である場合、又はその固定資産の前年取得価格のおおむね10%未満である場合は、
修繕費として取り扱ってよいとされます。

【3】支出金額の30%基準(表・・6参照)
資本的支出か修繕費かが不明な修理費等について、その金額のうち、支出金額の30%と固定資産の前年末取得価額の10%とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とすることができます。
但し、継続適用が条件となります。

以上、このような判断過程を経て修繕費と資本的支出を区分していきます。

留意点
ところで、フローチャートの判断において大変重要な注意点があります。
それは、23の基準の適用はあくまで、資本的支出か修繕費かが不明な場合に限られることです。
もう一度、<表>をご覧ください。24の間に3の判定の項目があります。
(1)の基準はすべての支出に適用できるのにたいし、(2)・(3)の基準は明らかに資本的支出に該当するものには適用できません。
で説明した資本的支出の具体例に、模様替えのための支出があったことを思い出して下さい。
倉庫を事務所に改装した場合の支出は資本的支出に該当し、たとえ60万円未満であっても修繕費になることは絶対にありえません。

最後に

修理費等の支出をされた方、される方は今回の表や開設を費用計上できるか否かのご参考にしてください。
また、法人の固定資産についても今回ご紹介した判断基準は適用できます。
ただし、災害による損失が生じた場合等は別の取り扱いが定められています。
また、判断が難しいケースもあります。迷った場合は、是非税理士にご相談ください。
さらに判断を正確に行うために修理・改良時の詳細な見積書等を取られておくこともお勧めします。

2007.11/06

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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