大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ ≫ 保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例

公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例

社長である私が自社の連帯保証人となり金融機関から借入をしましたが、会社が借金を返済できないため連帯保証人である私が会社に代わって借入を返済することになりました。
ただ、私にも金銭がないため、私が所有している土地を売却し返済に充てるつもりですがこの譲渡に対しては通常の譲渡所得税が課されるのでしょうか?
 他人の借金を返済するために自分の資産を譲渡し、その譲渡代金を返済に充てた場合には譲渡税が非課税になる場合があります。これは保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例で、適用例としては法人の経営が行き詰まり、法人の代表者等がその法人の債務に係る保証債務を履行した場合で、求償権を行使することができなくなったケースが考えられます。
極端に言えば、「自分の会社の借金」を返済するための譲渡であれば譲渡税が非課税になる場合もありますが、税務の取扱いは厳しく、適用要件も細かく定められています。
 

この特例を受けるには次の全ての要件に該当する必要があります
1 譲渡代金の全部または一部が債務保証の履行(借金の返済)に充てられていること。
2 保証債務の履行によって生じた求償権(借金の肩代わり分の返済を求める権利)の全部または一部の行使ができなくなったこと。
3 求償権の行使不能によって生じた損失が事業所得や不動産所得等の経費に算入されないものであること。

ポイント
「保証債務」であるかどうか
資産の譲渡時には保証債務契約が存在していたこと。
仮に倒産ギリギリになった段階で債務を保証した場合は「保証」ではなく「贈与」とみなされますので注意が必要です。
 
「保証債務を履行するための譲渡」であるかどうか
この特例は保証債務を履行するために資産を譲渡することが要件になっています。一般的には保証債務を履行するために資産を譲渡し社会通念上相当な期間内にその譲渡代金で保証債務を履行する必要があります。このほか、保証債務の履行をひとまず借入金で行ない、その後その借入金(利子は含まず)を返済するために資産を譲渡した場合でも、その譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは保証債務を履行するための資産の譲渡として取り扱われます。
ですから手持ちの定期預金を解約して保証債務の履行にあて、その後に土地を売却しても認められません。
また、保証債務履行の為に土地を売却したが、銀行の要請によりこの譲渡代金を1年間定期預金として運用してから保証債務にあてた場合には、これは債務保証のための譲渡ではなく、預金のための譲渡になりますので認められません。実際にあったケースですので十分ご注意下さい。
 
「求償権の行使が不能」であるかどうか
求償権の行使が不能であるかどうかの判定についても細かく規定されていますが、債務者の資産の状況、支払い能力などからみて、その債務者に対する債権の全額が回収できないことが明らかになったときには、その債務者に対してもっている求償権の全額が行使不能として取り扱われます。

必ず専門家に相談を!
この特例の適用を考えるならまずは専門家に相談し、上記のポイントや、金融機関との調整を含めた、それ以外の問題点を全てクリアすることが必要です。
事前にしっかりとした準備をしないと本来払わなくてもいい税金を払うことにもなりかねません。

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の計算例

譲渡価額  8,000万円
取得費 400万円
譲渡費用 50万円
保証した債務の金額 9,000万円
保証債務を履行した金額 8,000万円
求償権の額 8,000万円
求償権の行使不能額 8,000万円
譲渡所得以外の所得(事業所得) 290万円
所得控除額 245万5,000円

txt-01.gif

長期譲渡所得金額のうち、ないものとみなされる金額
次の金額のうち最も少ない金額
イ.求償権の行使不能額               8,000万円
ロ.総所得金額と長期譲渡所得金額の合計額  290万円 + 7,550万円 = 7,840万円
ハ.長期譲渡所得金額                7,550万円

 


特例適用後の長期譲渡所得金額(ハ.を適用)

txt-02.gif

 

2005.06/07

関連記事

友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
詳しいプロフィールはこちら ≫

お問い合わせ
株式会社トータル財務プラン
友弘正人公認会計士事務所
〒651-0087 神戸市中央区御幸通3丁目1番8号 ライオンズ 三宮ビル2階
TEL:078-221-7711 FAX:078-221-7717 https://topp.co.jp/