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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

相続税の納税対策

1 有利不利の判定は
 一般的に、相続税の評価額が売却金額よりも高い場合は、財産を売却してその売却代金で納税するよりも、相続税評価額で物納した方が有利になる場合が多いようです。逆に売却代金が相続税評価額よりも高い場合は、売却の方が有利になる場合が多いと考えられます。
 もちろん、売却には、所得税・住民税、あるいは不動産業者に支払う仲介手数料が必要になりますので、これらのコストを差し引いてもなお、売却によって得られる収入の方が高い場合には、物納よりも売却の方が有利といえるでしょう。

2 申告期限までに処分できない場合は
しかし実際は、相続税の申告期限までに売却が成立せず、納税者は物納と売却のどちらが有利か判定することができない場合が多いようです。
このような場合は、相続税の申告期限までに物納を申請しておき、物納財産が収納されるまでの間に売却先を探し、相続税評価額よりも高い金額で売却できそうであれば、物納申請を取り下げ、現金納付に変更するという方法をとるのがよいでしょう。

3 物納から延納に変更して納付

ここで注意することは、物納申請を取り下げて、現金一括納付に変更すると延滞税が課されることになるということです。そのため、物納を取り下げ、いったん延納に変更してから現金納付をするという方法があります。延納申請をした場合は、延滞税が課されず、延滞税よりも税率の低い利子税だけで済むことになります。
このように、物納から延納に変更することは可能ですが、逆に延納から物納に変更することはできません。

4 広大地補正の改正による影響は
平成16年6月4日に財産評価基本通達の改正がおこなわれ、同年1月1日現在に遡って広大地補正の評価がおこなわれます。広大地とは「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」のことをいい、一定の要件を満たせば、評価減の適用が認められています。
最近まで、広大地の補正率の適用に当たっては、専門性が高く、不動産鑑定士に評価を依頼するケースが多かったのですが、同改正により広大地補正は半ば強制的に適用されます。

1適用補正率

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2適用条件
1)その地域における標準的な宅地の地積と比較して著しく地積が広大な宅地であること
2)開発行為ができる土地であること
3)都市計画法に定める公共公益的施設用地(道路、公園等)の負担が必要であること
4)現在、宅地として有効利用されている建築物の敷地用地でないこと等

広大地評価の方法は、今年6月の財産評価基本通達の改正により納税者に相当有利な規定になったばかりでなく、評価の計算式がかなり簡素化されました。この改正により、相続税評価額の低下により納税額も低くなりました。しかし広大地の物納を考えておられた方は、物納用地の収納額まで低くなります。当然の結果として売却を真剣に考える必要が出てきました。


5 「アパート建築による相続対策」に要注意
これまで相続対策として、アパートを建てて土地の相続税評価額(貸家建付地)を切り下げる方法がよく行われてきました。
しかし、この宅地が広大地に該当した場合、この対策は有効でしょうか。

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1広大地に該当しない場合の宅地の評価
100,000円 × 2000m2 = 2億円

2広大地に該当する場合の宅地の評価
100,000円 × 2000m2 × ( 0.6 - 0.05 × 2000m2 / 1000m2 ) = 1億円

3アパート建築後の宅地の評価
1)貸家建付地  100,000円×2000m2 ×(1-0.6×0.4)=1.52億円
2)建   物  5,000万円×0.6(固定資産税評価)×0.6(貸家評価)=1,800万円
3)借 入 金  5,000万円
4)123 =1億2千万円

この例のように、広大地に該当する宅地にアパートを建築すると、逆に評価額が高くなる場合もありますので、今後、アパート建築による相続税対策を考える場合、しっかりとしたシミュレーションが必要と考えられます。
 

2005.05/17

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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