相続税の税務調査で申告漏れを指摘される事項の1/3以上が「現金・預貯金」とされます。今回はその「現金・預貯金」について説明いたします。
相続税の税務調査とは?
相続税の申告は、法人税や所得税とはちがい一生に一度ぐらいしか申告の機会はありません。そして、その相続税の税務調査は、その申告書を提出してから、1年や2年経過してちょうど忘れた頃に行われることが多くあります。
そして相続税の税務調査が行われると、修正申告をしなければいけないケースがほとんどとなります。
では、なぜ修正申告の必要が多くなるのでしょうか。下表のデータによるとその1/3以上が現金・預貯金の申告漏れとされています。
相続税の税務調査では「現金・預貯金」を調べることが多いということです。
そして、その漏れる「現金・預貯金」とは主に「名義預金」と言われるものです。
ペイオフと名義預金
ペイオフが実施された今、例えば3億円の預金をリスク分散させるためには、30行の銀行を探す必要があります。
しかし、家族3人の名義で預金を分散させれば10行 (1千万円×3人×10行=3億円)で済みます。
この場合、贈与税は課せられません。なぜなら本人が贈与したのではなく単に家族名義にしただけのことですから、以下の1から4を充足していれば贈与税は課税されませんし、ペイオフも「大丈夫」となります。
1家族名義になっているが実質は本人のものである。
2
当事者間で贈与の意思がない
3以前から預金管理は本人が行っている
4課税庁からの指摘があれば本人名義に戻せば贈与税は課さない
これらのように名義預金とは、被相続人の配偶者、子、孫などの家族が名義になっている預金が、実質的には、その名義人の固有財産ではなく、被相続人の所有に属したものであれば、その預金は、遺産に該当することになり、その預金を一般的には「名義預金」といいます。
金融資産(預金・有価証券)はほとんど税務署に見つかります。
税務署が相続税の税務調査をする場合には、被相続人の取引先金融機関だけではなく、取引先でない一定の金融機関に対し書面等により預金の残高照会及び取引記録(お金の動き)を照会します。さらに、この照会は相続人や相続人以外の家族(孫など)に対してもなされます。これらの金融機関へ照会により被相続人や相続人が過去にどのような収入があり、また、そのお金がどのように使用されたかを、把握されることとなります。 被相続人が亡くなる前後などに預金を動かしていれば、必ずその流れがつかまれるわけです。
そのお金は誰のもの?
前述のように相続税の申告に当たって注意すべき点の一つは、「名義預金」であるといえます。
次に掲げる預金については「名義預金」として判定される可能性が高いと思われます。
1嫁いだ娘の旧姓の名義で放置してある預貯金がある場合
2名義人の預貯金として使用している印鑑でない印鑑(三文判等)を使用している場合
3入金のみの預貯金(口座)で引き出しがほとんどされていない場合
4名義人の住所地が遠距離で、親元近くにある金融機関等の預貯金がある場合
5親が定期預金等の手続きを行っている預貯金で、そのサインなどが名義人のものではない預貯金
「名義預金」は実質的には、被相続人の所有に属することになることから、相続税の申告に際しては、この「名義預金」を相続財産として計上しなければなりません。
どの家族でも親子間などでのお金の貸し借りは、あいまいになりがちです。結婚式等の費用、住宅建設のための土地購入、マンション購入などのために、安易な家族間でのお金の移動は贈与税又は相続税の対象となる場合が多くあります。
お金には名前が書かれてあるわけではありません。「お前のものはオレのもの、オレのものはオレのもの」と誰のものかはわからず、すべて相続財産にされてしまいかねないこともあります。ご不明な点がある場合には、ご相談下さい。