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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

税理士事務所は何をやっているのでしょう?

-基本は仕訳- 仕訳とは?例えば実際の営業活動を、
交際費/現金という二つの項目で把握します

 今回は法人のお客様、個人のお客様に係る決算書作成・申告書の提出までの税理士事務所の仕事内容を中心に説明させていただきたいと思います。法人、個人に関わらず最終的には確定申告書を税務署に提出した時点で一区切りつきます。我々が一番ほっとする瞬間です。
 法人は1年365日、つまり極端に言えば365通りの決算日がありますが、個人は12月31日のみです。確定申告の提出期限は3月15日と決められていますので、年明けからは臨戦態勢に入っています。時間との競争の始まりです。法人業務も同時並行的に行いますので、職員の立場からすれば一年を通じて一番憂鬱な時期は正月明けかも知れません

【1】仕訳入力
 法人又は個人に関わらず、お客様からお預かりした書類をもとにパソコンで仕訳入力します。この仕訳入力が貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成するうえでの基本中の基本となります。単純作業ですが最も大事な作業です。
 ○○文具でボールペンを10本購入 現金で支払い 1,050円の取引でしたら
 事務用品費 1,050円 現金 / 1,050円 ○○文具 ボールペン
と入力します。
 この一行の仕訳を1本又は1ラインと呼びます。弊社のお客様の業種によってまちまちですが、本数が少ないお客様でしたら月50本、多いお客さまでしたら月1万本くらいでしょうか。職員がこの入力作業に耐えられるのは単純入力でしたら月500本前後ではないかと思われます。本数の多いお客様については可能な限り自計化(お客様に入力していただくこと)をお願いしてそのサポートをさせていただいています。単純入力とはいえ貸借対照表、損益計算書等の出来上がりのイメージを持ちながら瞬時に判断して正確に入力出来るまでは最低3年程度の経験が必要です。

【2】月次決算
 月次決算ですが、上記の仕訳入力が終了しますとパソコンのボタン一つで月次貸借対照表・月次損益計算書等が簡単に出ます。手書きの試算表又は総勘定元帳を作成していた時期のことを思うと何と便利になったことかと思います。
 要注意なのが、やはりパソコンによる仕訳入力が正確に出来ているか否かです。消費税の課税区分が適正にされているか、勘定科目が統一入力できているか、資本的支出を修繕費としていないか、経費の漏れはないか、売上の漏れはないか、仮払金、仮受金、預り金等の内容を検討して、それを積み重ねて最後の決算業務に引き継ぎます。
 決算月の2~3ヶ月前から期末までの月次決算は非常に大事な作業になってきます。この時期は、税金対策、決算対策等の準備実行期間となります。

【3】決算
 月次損益が適正に積み重さなっていれば、これは非常に楽な作業になります。しかし、一年を通して総勘定元帳を再検証した結果、入力間違いを発見することがあります。水道光熱費勘定が他の勘定科目に誤って入力されていたとか、○月分が抜けていた、正しいと思って入力していた消費税区分が間違っていた、給料の支払いが納付書の金額と違っていたとか…。10年、20年のベテランが入力しても100%正確にすることは大変困難です。
 決算業務については、一年分の総勘定元帳を全て印刷し、再チェックしていきます。それを更にたたき台にして決算書の作成作業に着手します。パソコン入力・月次決算を積み重ねそして決算書作成という段取りとなります。
 月次決算の段階において、税金対策等はお客様と逐次相談していくわけですが、決算直前の業績が極端に悪く、赤字決算を余儀なくされる場合が時にあります。そうなりますと銀行対策とか経営審査対策(公共事業に係る仕事をされている会社が対象になります。)等の問題が発生してきます。決算書の作成に当たっては税務署だけではなく金融機関等にも配慮しながら適正な決算書を作成していかねばなりません。

【4】確定申告
 法人でしたら「内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2月以内に税務署長に対し、確定した決算に基づき確定申告書を提出しなければならない。」とあります。確定した決算とは一般的に株主総会で承認等されたものとされています。株主総会で承認等された決算書の利益(会計上の利益)に税率を適用して法人税・住民税が計算することが出来ればことは簡単なのですがそうもいきません。実際は税務上の利益に税率をかけて法人税・住民税を計算します。例えば、交通違反の罰則金30,000円を雑費として費用経理したとしても別段の定めにより損金となりません。
 会計上の利益が100,000円でしたら100,000円+30,000円=130,000円が税務上の利益とされます。 会計上の利益は100,000円ですが税務上の利益は130,000円となります。この別段の定めという税法独自の規定により法人の利益と税務上の利益は等しくなりません。その税法を正しく理解し、会計上の利益から税務上の利益を計算し正しい税額を計算していくのが税理士事務所独自かつ最大の仕事となります。赤字計上を余儀なくされた場合でも、税務上の適正な赤字額(繰越欠損金)を算出することも、又、大切なことです。

【5】税務調査
 上記の確定申告書を税務署等に提出することにより、我々の仕事も終わりお客さまも一安心で済むのであればいいのですが、最後に税務調査が待ち受けています。私達は自信を持って確定申告書を送り出しているのですが、どうしても税務署との間には見解の相違があります。当然の事ながらどのような状況下にあっても我々はお客様の絶対的な味方です。お客様の利益を守ることが税理士事務所の最大の仕事ですから。

【6】[1]から[5]に付随する他の仕事
 年末調整、法定調書・償却資産申告書及び社会保険事務所並びに労働基準監督署等への提出書類の作成等があります。
 [1]の仕訳入力から[5]の税務調査まで全てに絡んできます。償却資産申告書については、仕訳入力とは直接的に関係なく切り離して作成されていた部分もありますが、現在は税務署に提出した決算書に基づいて申告書を作成してくださいという流れになっています。

【7】最後に
 今回は、仕訳入力から申告までの作業についてポイントを絞って御報告をさせて頂きました。相続税等の申告はこれと全く異なる作業となります。相続税等の申告については別の機会に紹介させていただきたいと思います。
 税理士事務所って何をやっているのだろうか?どんなことを考えながら仕事をしているのだろうかと興味を持っている方もいらっしゃると思います。
 私達は、ひとつ、ひとつの仕訳を積み重ね、その仕訳の積み重ねの結果、こんな試算表、決算書、申告書になるとイメージしながらお仕事をさせていただいています。結構、地味な仕事の連続ですが決算書を完成させたときの喜びはひとしおです。
 弊社においては、月次決算を更に充実させ、お客様のニーズにあったキャッシュフロー計算書、損益分岐点図表を軸とした諸表の提供をと考えています。まだ、スタートしたばかりですので慣れないこともあり御迷惑をおかけすることもあるかと思いますが御指導をよろしくお願いいたします。

2010.03/30

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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