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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

新会社法について

平成17年の会社法の成立
 最近商法が大幅に改正されておりますが、平成17年に改正され会社法として成立した内容は、その中でも非常に大がかりな内容であり、今後の会社経営にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。そして、今回の成立した会社法は、平成18年5月に施行される見込みとなっており、間近に迫っております。
 このため、これから数回に分けて、新会社法の要点について簡単に説明したいと思います。

改正点の概要
 今回の改正は、1有限会社制度の廃止や最低資本金制度の廃止といった会社制度の見直し、2合併、会社分割、新株発行、社債発行等の組織再編、資金調達等の会社経営の機動性や柔軟性の向上、3株主代表制度の改正、会計参与制度の新設等の会社経営の健全性の確保等が盛り込まれております。
 したがって、その改正の内容は多岐に亘るだけでなく、今までになく抜本的な部分にまで踏み込んだ内容となっておりますので、会社の規模の大中小を問わず、何らかの形で影響を受けざるを得ないのではないかと予想されます。
 しかし、全て網羅して詳しく説明することはここでは不可能ですので、改正部分の内、特に中小企業に影響を及ぼす可能性が高い点を中心にして今回の改正の要点を説明したいと思います。

 

類似商号規制の廃止
 会社を設立する際に、これまでは、同一市町村内においては同一の営業のために同一の商号を登記することが禁止されました。しかし、今回の改正においては、類似商号を規制することは、会社の設立を遅らせる原因となるだけでなく実際上の規制の効果も低いことから、今回廃止されるに至りました。
 したがって、今後は類似商号の規制が無くなりますので、同一市町村内においても自社と同じ商号を用いる会社が出てくる可能性が生じてきましたので、このような会社に対しては、不正目的による商号使用の停止請求(会社法8条)や、不正競争防止法に基づく差し止め・損害賠償請求等で対応することとなります。

最低資本金の廃止
 これまで、株式会社の設立には最低資本金として1000万円、有限会社の設立には最低資本金として300万円が必要とされておりました。
 しかし、今回の改正により、会社財産の開示制度について会計帳簿の作成の適時性・正確性の要求や、会計参与制度の導入、会計監査人の設置の拡大等会社財産上の開示を徹底させ、また、自己株式の取得等による会社財産の払い戻しや、剰余金の配当規制等による不当な財産流出を防ぐことにより、最低資本金制度を廃止するに至りました。
 その結果、会社法施行後は、株式会社は1円から設置することが可能となりました。但し、設立の際に登録免許税を納付する必要があることや、定款の認証費用や印紙税がかかりますので、その点は注意する必要があります。
 なお、この最低資本金の廃止以外にも、設立に際しては、設立手続の簡略化、合理化のため、発起設立の場合の払込保管証明制度の廃止、検査役の調査を要しない現物出資・財産引き受けの拡大も図られております。

設立時の定款記載事項の変更等
 また、株式会社の設立時に作成される定款についても、1設立に際して発行する株式の総数を記載事項から外し、設立に際して出資される財産の価額を定款記載事項とする(会社法27条4号)とともに、2株式会社が発行できる株式の総数については、設立手続の完了時までに定款に定めればよいこととしました(会社法37条、98条)。
 また、これまでの発起人等の引受・払込担保責任も廃止され、発起人や株式引受人が期日までに出資の履行をしなくても、定款において定めた出資される財産の価額又はその最低額を満たしていれば設立手続は無効とならないとされた。
 このように、新会社法の下では、株式の数と資本との関係は切り離され、設立に際して一定の出資額が確保されれば、設立を有効とすることにより、会社設立における無用な設立無効を避け機動的な会社設立を図ることができるようになりました。
 さらに、設立無効の訴えについても、株主が原告となる場合には担保提供命令が定められるなど、無用な濫訴を防止する措置が設けられました。

 以下、次号に続きます。

2006.02/21

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修