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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

コンテナの設置に関する法的問題点について

コンテナの活用について
 最近、コンテナを使ってトランクルームとして事業を行うケースが多くなっております。コンテナを使ってトランクルームとして賃貸する場合の法的な問題点について、十分に留意していないケースも見受けられます。

 そこで、トランクルームとして賃貸事業を行う場合の法的な問題点について考えられる点を下記のとおりまとめてみました。

民事法規との関係
 コンテナの設置に関し、まず、法令の適用との関係で問題となるのが、民法及び不動産登記法の適用の有無です。
 この点、不動産登記事務取扱手続準則第136条第1項によれば、「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であつて、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と定められています。そして、土地に定着した建物に該当するときは、民法86条により不動産とされ、不動産登記法上の登記も可能となる。

 また、コンテナの設置を目的とした土地の賃貸借については、借地借家法の適用も認められることとなります。

 したがって、コンテナの設置方法が簡易的であり、敷地に強固に設置されておらず、簡便に移動が可能な状態であるため土地の定着物と判断されないときには、建物とはあたらず、これら民法等の民事法規の適用はありませんが、その設置方法が強固で土地の定着物とされるときには、上記の民事法規の適用があるため、コンテナの設置にあたっては、上記民事法規の適用を受けるかどうかについての選択する手段として設置方法・手段について検討しておく必要があります。

 なお、判例においては、コンテナについて建物として認めなかった判例として、下記の判例があり、同判例における判断が上記設置方法についての一つの目安になるものと考えられます。
神戸地裁尼崎支部平成16年10月6日判決
〈判旨〉
 民法上の「建物」ないし本件条例上の「建築物」とは、土地に定着した建造物であって、土地に継続的且つ相当の長期間は土地に固定され容易に土地から分離しないことが予定されているものというべきところ、本件コンテナは、コンクリート基礎部分に鉄板を挟んだその上に設置されている物であり、本件訴訟前にも被告は、本件コンテナを約センチメートル西方向に移動させていることからすると、取り壊し等をするまでもなく、移動、撤去が可能な構造となっている物である。

 そうすると、敷地境界線から0.5メートル以上離さなければならない「建物」や「建築物」には該当しない。

 

行政法規との関係
 次にコンテナの設置に関しては、行政法規の適用との関係についても留意する必要があります。
行政法規との関係では、特に建築基準法、消防法との関係で、違反抵触が無いか検討する必要があります。

 (1) 建築基準法との関係
 建築基準法第2条1号上の「建築物」とは、土地に定着する工作物の内屋根及び柱若しくは壁を有するものなどを意味します。
 そして、コンテナを設置する場合について、過去の国土交通省(旧建設省)の通達の中には、コンテナを専用装置による伴奏音楽に合わせ歌唱する用に供する個室(いわゆるカラオケルーム)に転用し、不特定多数の者の利用に供している例について、その形態及び使用の実態から建築基準法第2条第1号に規定する建築物に該当するという判断が示されています(旧建設省平成元年7月18日住指発第239号)。
 そして、上記の通達により、コンテナを屋内的な用途として利用するため(カラオケ店、倉庫、店舗等)に設置する場合には、所轄の行政庁により建築確認申請(建築基準法第6条)が必要であると判断される可能性が高いと考えられます。
 このことから、建築確認を受けずに既に設置されているコンテナについては、所轄の行政庁により、当該コンテナの除却、移転、改築、使用禁止、使用制限等の措置を命じられる(建築基準法第9条第1項)危険性があると考えられます。
 したがって、既に設置してある建築確認を経ていないコンテナについては、所轄の行政庁より改善措置等の行政指導を受ける可能性があり、そのため、予め改善措置等の対策を準備しておくことも必要であると考えらまれす。

 次に、コンテナを倉庫として使用する場合には、それが賃貸で貸している場合には、建築基準法第48条第1項、第2項、第3項により、第1種住居専用地域、第2種住居専用地域及び住居地域においては「倉庫業を営む倉庫」の建築が禁止されているが、「倉庫業を営む倉庫」には、倉庫業法上の倉庫に限らず、寄託契約に限らない賃貸契約方式の倉庫も含むと解さされているため、同地域内にコンテナを設置する場合には、建築基準法第48条にも反する可能性があると考えられます。
 行政上の実務例として、横浜市内の第1種低層住居専用地域内に設置されていたコンテナについて、平成16年8月27日使用禁止及び除却命令が出され、同年10月30日、同コンテナが横浜市により除却された事例があります。

 したがって、コンテナを設置する場合には、建築確認のみならず、その設置場所についても十分に留意する必要があり、既に、設置されているコンテナが倉庫の建築禁止区域であるならば、そのコンテナを事業の対象から予め除外しておくことを検討しておく必要があると考えられます。

 (2) 消防法との関係
 次に、コンテナが建築基準法上の建築物とされた場合には、消防法上も建築物となり、防火対象物となります(消防法第2条)。
 このため、コンテナについては所轄の消防署より、火災予防措置等の命令(消防法第3条)、資料提出命令等、消防職員の立入検査(消防法第4条)、防火対象物の改修等の命令(消防法第5条)、防火対象物の使用禁止等の命令(消防法第5条の2)、防火対象物における火災予防措置等の命令(消防法第5条の3)、建築許可等に対する同意(消防法第7条)等の制限を受ける可能性があると考えられます。

結論
 以上のとおり、コンテナを賃貸目的で設置する場合には、民事上建築物に該当しない場合でも、行政上建築物として取り扱われているのが通例であるため、既に設置されているコンテナについては、建築基準法等の行政法規に対する対応について十分に留意する必要があります。

2006.08/29

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修